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『開幕前夜』第9話「いのちの記憶」

 此方(こなた)の部屋。

唯一の鏡。唯一の理解者と居る。

心身ともに裸で、

抱き合っている。

性的なものではない。

彼方(かなた)につくってもらっている。

此方の記憶を。

 此方には、

大きすぎる想念。

大きすぎる屋敷。

大きすぎる部屋。

大きすぎる力“字伏(あざふせ)”。

 此方は弱いのだろうか?

彼方につくってもらっている時。

此方はいつも泣いてしまう。

彼方居なくならないで。

こわい此方。

よわい此方。

大嫌いだ此方自身。

 此方が解放すると、

彼方も解放させてしまう。

なぜならそうしてもらわなければ、

此方は生きていく事すら危ういから。

………………
…………
……

 此方は聞く。

「終わった?」

此方、笑む……しかない。

「いつも有難う」

痛む。

と接吻。

唯一のご褒美。

生きる意味。

まだ肌寒き春の事。

希望の学び舎よ。

どうか此方を普通の女の子にして下さい。

彼方を自由にする為に。

それでも此方は、



 あなたじしんをあたえれば、
あたえたいじょうのものをうけとることになるだろう。
そういうふうに、

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