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『開幕前夜』第7話「時をかける少女」

 一人称は、映画鑑賞を終えて館内を出た様に、視える。

時は1983年7月の中頃。

 一人称は、

三人称の探索を一旦打ち切って静養にまわった様に、視える。

それは功を奏した様に、視える。

良質の作品との邂逅。

スクリーンで再び。

一人称の原点と原典。

この街にはどうやらもう用はなく、視える。

三人称の情報なし。

美術の鑑賞。

一人称の本来あるべき御許へ帰るべきと、

判断した一人称。

三人称の往来多き交差点。

左腕に柘榴石。

右腕に紫水晶。

香るラベンダー・アングスティフォリア。

一人称は意に介さず唱えた様に、視える。

「“式極可変(しぎめかへん)”脳内構成物質、“乙”から“時間跳躍”、“イマジン”開始」

 一人称はその場から消えた様に、視える。

三人称は、誰も気にも留めずに。

………………
…………
……

帰還。

時刻確認。

時をさかのぼり4月5日14:06分。

“跳躍”先も悪くない精度に、視える。

一人称は町のビジネスホテルに泊まり。

明日からの入寮の準備。

ホテルロビーに流れる「Someday My Prince Will Come」、

 一人称はもう、

その様な夢見る頃合でないかもしれないと……、

少し苦笑して、視える。

笑うのは久方振りに、視える。

それでもいつかを、

信じている。

二人称と一人称が、手を結ぶ日を。

………………
…………
……

 一人称は東方、

今まさに季節は春。

世界は不思議に満ち満ちて。

偉大なるキャロル氏へ、礼。

そう、一人称の固有、

「✕✕✕✕✕」。



 ときはだれもまってはくれない。
びょうどうにいきて、
びょうどうにしぬ。

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