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『✕○!i』第28話「君と歩きたい」 

 みまもりの塔の魔王に、

ちいさな夢ができました。

君に出逢うまえには、

みることさえゆるされなかった夢が。

ずっとあきらめつづけた夢が。

 人々をまとめるにはルール。

ちつじょがひつようなんです。

 魔王はそのために、

きょうふのすべをおぼえていました。

まおうはそんな愛しかしめせませんでした。

塔で生きることをえらぶものには、

きょうふでのしはいを。

 魔王をおそれぬ勇気と、

自由をもつ人たちは、

あれち【このよのはて】へとおくりました。

 魔王は、魔王のイスが、

とてもきゅうくつでした。

 魔王と神様のはじまりのやくそく。

それは人々みんなにとぶちからを、

もってもらうことでした。

【このよのはて】にお花をとりもどすために。

【このよのはて】でくらす人たちには、

魔王のほんとうのすがたでそれをつたえて、

生きていくいしのある人には、

塔のみつぎものをくばってまわっていました。

それでも【このよのはて】にお花はさきません。

魔王もまた、むりょくでした。

夢や幸福すら、

しついのなか、

ふみつけにして。

おろかな塔のばんにんの魔王。

そのおやくめ、

【このよのはて】にお花がさく日。

 それが魔王の、

神様とのやくそくを、

まっとうする日となっているのです。

 そのおやくめのなかで、

ちいさな夢を、

ちいさな魔王は、

ほんとうにちいさくこぼしました。

「……君と……歩きたい」

 そして――、

………………
…………
……

 ちいさなおんなのこは、

魔王の手をとり、

こう告つげたのです。

「これよりはわたしめが、君のおそばにおります」

 魔王は、

ずっとかくし、たえつづけてきたしずくを、

君の手に、

おもわずおとしてしまいました。

 そうしたら、

ふしぎなきせきが……、



 しんあいなるあねきへ
いつも、ありがとう。
ぼくはあねきのしあわせをずっとねがってるよ。

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