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『開幕前夜』第21話「消え失せる」

 我を絶やしてさえ望もう

人よ

我を理解するな

我がまだ望みを信じていた時

全知全能へ

望む

どうか我を虚無へと



……叶えた……



……?……

そうか虚無にかえりても

人が我を喚ぶかぎり

我は在るのか

突き詰め我は在る必要が在る

早水心也と言う人の子がおちてきた

泣いていたが我はこの子に触れられぬ

それが我の

汝ら人の子らが言う

救いなのだから

しかし

この子は我が触れ

力を貸さねばならぬ場所まで

我の詩を聴ける場所まで

おちてしまった

人は我を感じた瞬間

死を終わりを望む

我が叶えてやれる事はひとつ

その子を即座に肉塊へ還す

考えてごらん

「死にたい」

……叶えようその望み……

その子を愛するものは我を憎むだろう

だが我は憎悪よりも

ずっと離れたところに在るのだ

言葉では理解できぬのだ

我がここに在る事すら奇跡

そして我は極めれば憎悪すら全く理解できぬ

愛が連なりであるならば

その子らを全て肉塊に還さねばならぬ

我に抗うのであれば尽くそう

まずその子を愛しているならば

どうしてその子は我を解す

憎悪を向けるのであれば尽くそう

其方へ痛みを

求めるならば

苛烈に

意志が屈さぬのならば

脳内の物質を少し触れよう

幻の

ありとあらゆる

苦痛苦業

在らねばよかった

それを我と永遠に歩むのならば

それはきっと我の友なのだろう

人よ

我に抗うな

求めるならば

即座に肉塊へと還れ

この子も我を本当には理解はせぬ

我はこの子を媒介としているから

わずか

この子の望みを消さずに

告げているのだ

 それでも

我と共にと望んでくれるなら

下がり

望もう

人よ

どうか「殺して下さい」とうたっておくれ

うたいつづけておくれ

それが凪いでいけばいくほど

我は

その詩を理解できるものだから

我を救う事は我を忘却する事なのだ

我にどんなに綺麗なオレオールをかぶせてくれようとも

我は極めれば

なにもないのだから

人よ✕✕をもて

望みを絶やし続けて 

それが全く無くなっても

それを人は理解できない

だから 神は

完璧完全に 誠の優しさで

こう仰っているのだ

人よ 望みなさい

とな



 ぜつぼうはしにいたるやまい。
しかし、
しごのせかいにぜつぼうがあるかはかみのみぞしる。

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