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『開幕前夜』第24話「越天楽今様」

 ……夢……を……みていた……、

とかく、

久方振りに、瞳を、開く。

「……っ? …………鼻……血……だ……」

心をわずか置いたのち、関せず。

眠るぞ。

鬼よ。天よ。血よ。

「“鬼 天血(き てんけつ)”」

………………
…………
……

……っ……

……運……ば……れた……?

……今に、……なに……が、ある?

………………
…………
……

「……兄様っ、お久し振りです。おはようございます」

合点。

「起(おきる)がやったのかい?」

末弟に、尋ねる。

「はい。命宿りし日々を、承けて下さいますか?」

不承不承だが……、

「ああ、承けようかな」

声音つとめるが、優しさにはいたらず。

いつの間にか、

「あなたが承けなければ、なにも転りはしないのです」

上の姉様、転(まわり)。

起きたての耳には、響きすぎる声音だ。

「ですから転姉様。小生は承けると……」

こちらもまた、

「そうしてもらわねば、こちらも結ばれぬ」

長女、結(むすび)姉様立つ。

「はい。わかっております。学び舎へと、向かえばよいのでしょう?」

三対一ではな。……やれやれ。

「食事と風呂を、よろしくお願いします」

なかなかうまくは行かぬ世を、

………………
…………
……

不承不承と、家を出る。

両眼は閉じ。

あらゆる場面を想定し、

……感じ……考え……感じ……

繰り返す。

“言の葉廻し”。

……は、よいか、

今日は車だ。

学び舎までの車に乗り込み。

物事になれてくると。

ややもすれば、

桜の音がする。

……そうか……、春、だ……。

小生は季節では、夏に、あたるかな。

春は起(おとうと)かな?

嗚呼、

だから、

こんなにも、

愛おしいのかな?

と降りる雨音の調べ。

おや?

日は照っているのに、

今日は“狐の嫁入り”か……、

天がいずれにせよ……、

………………
…………
……

「ひさかたの 光のどけき 春の日に……」

………………
…………
……

……どうか、桜を、

はやく散らせないで下さい。

小生は、

不承であり不笑(わら)、……えなかった。

これよりの学び舎で、

君と、出逢うまでは。

今思えば、

ここが始まりにして終わり。



 しあわせだからわらうんじゃない。
わらうからしあわせなのだ。
わらいはひとのくすり。


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