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『開幕前夜』第26話「愛してる、私? さぁね」

 祭りの終わる夜の事。

貴方とふたり、線香花火の熱が、

私を燃やす。

冷めやらぬ指先。

そして……、

………………
…………
……

「……できた……」

おとぎ話、『みんなの庭園』が。

「倖子君、お疲れ様でした。有難う」

「うん」

………………
…………
……

「愛してる。愛してる?」

「もう、そうじゃない」

「うん。そうだね。愛してる」

………………
…………
……

 貴方と、接吻したら、

くるりと、まわる。

なんだってこんな面倒くさいひとに。

焼きが回り始めてるの……?

それでも、この刀は、

美しくみえる。

……恋の、刀だ……

ふたりの込めた祈りの名。

貴方に、捨てられたら、

この刃で、

私は、散りゆこう。

そうすれば、きっと私はもう、

生まれてくる事はないだろう。

貴方と縁が切れて、

せいせいする。

……でも、

…………でもね?

ちょっと、だよ?

ほんの少し、だよ?

さみしいから、

私は、わずか命を絶つ。

それでも想い出して、

返す刀で、

あなたを殺します。



 ぼくはきみのもの。
でもきみはそうじゃない。
それが、じんせい。

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