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真の悪魔は誰なのか? "The Devil Wears Prada" 『プラダを着た悪魔』

U-NEXTの期間限定ポイントを何としてでも消費するため、母が私に『何か見たいドラマとか映画ある?』と尋ねてきた。

正直に言うと、私はドラマや映画をそこまでよく見る方ではない。
たまに気が向いたら見る程度なので、母の質問に少し考える必要があった。

ふと本棚を見ると、だいぶ前に古本市場で買った "The Devil Wears Prada"の本が目に留まった。「『プラダを着た悪魔』ってある?」

探してみると、有効期限までの消費にふさわしいぐらいのポイントで販売されていた。『じゃあ、今流しておくね。』再生ボタンを押す母。
いや、私は今、依頼を受けた業務でパソコンの前にいるんだが?

まああと少しで完了するから良いけれども。そんなにじっくり見たかった訳でもなかったが、とりあえずテレビに体を向けて、映画を楽しみ始めた。

◯映画の紹介

有名な映画なので既にご存知の方も多いとは思うが、念のためご紹介。

主人公は、NYでジャーナリストを目指す女性アンディ。生活のために大手ファッション雑誌『ランウェイ』の編集長アシスタント職の面接を受ける。

採用されたは良いものの、ファッションに全く関心がない彼女は職場に馴染めないでいた。おまけに、業界の権力者である編集長のミランダは人使いが荒く、天候悪化でフライトがキャンセルとなっても「飛行機を飛ばせ。」という指令を出すほど。

周囲の力を借りつつ成長し、ミランダの無理難題を突破していくアンディだが、彼女自身も次第に変わっていき・・・というストーリーである。

ネタバレはしたくないので、続きが気になる方はぜひ見てほしい。


◯主人公が自分に似ている

さて、映画が終わった後。まず思ったことは「アンディって、私に似てる。」

2人とも、仕事へ没入しがちなのである。


業務時間外でも、いつのまにか仕事のことを考えてしまうのだ。

夕飯を食べながら「クライアントから返事来たかな。」と思い、
お風呂に入りながら「明日のタスクをまとめないとな。」と考え、
仕事関係の方から連絡が入れば、デート中でも「ちょっと返事させて。」とメール。
(恋人よ、すまぬ。)

アンディも、ミランダからの指令をこなしていくにつれ、プライベートでも彼女からの連絡にすぐさま反応するようになる。友人に冗談でポケベルを奪われて本気で怒るし、洗練された服装が似合うようダイエットも怠らない。

それだけ没入して仕事ができるのは、ある意味幸せなことかもしれない。


◯仕事 or / and 私生活

だが現在の「仕事」に対する意識の主流は、アンディの持つ意識とはだいぶ違う。

「仕事とプライベートは両立されるべき」という考えをお持ちの方は多いと思う。浸透しているかはさておいて、「プライベートでは仕事のことを考えずに休もう。」という風潮だ。


求人票には『嬉しい完全週休2日制』『プライベートも充実しやすい』の文字。SNSには『休みの日に仕事のことを考えたくない』の愚痴。

つまり、「仕事=大変なもの」「プライベート=癒し」という構図が出来上がっており、メリハリをつけて両方を充実させることが理想とされている。
いわゆる「仕事 and 私生活」のスタイルである。

こう考えると、私生活が仕事で埋め尽くされているアンディは「仕事 or 私生活」のスタイルである。「超社畜人間」と見なされ、周囲から「プライベートぐらいゆっくりしなよ。」と思われるのだろう。


◯真の悪魔は誰?

では、タイトルの問いかけに触れていこう。
この映画において、悪魔は誰なのか?

「無茶な要求をしてくるミランダ編集長でしょ!」と思う方はおそらく多いだろう。しかし私は、別に悪魔が存在していると思う。


アンディとミランダが属する場所。つまり業界や仕事こそが、悪魔なのではないだろうか。

ミランダ自身もファッション業界に自分の人生を注いでいる。アンディもミランダをサポートする中で、「業界の闇に染まっちまったな。」と他ジャーナリストから言われてしまう。

プライベートを投げ打ってでも、そのポジションまたは仕事に居続ける理由。それは悪魔に魅入られたからではないだろうか。

ただ、それは悪いことではないと思う。

多くの業界がある中で、やりがいは人によってさまざまだが、「この業界で、この仕事ができて幸せ。」と感じる方々も多いのは事実だ。この場合は、先ほど挙げた2種類のスタイルどちらにも当てはまらない。
「仕事≒私生活」が近いのかもしれない。


どんな悪魔に惹きつけられ、どんなスタイルで仕事をするのか。それは人それぞれであるし、どれを選んだとしてもそれが答えだ。

そう思いながら、ライターという名前の悪魔に魅入られている私は、依頼案件の最終確認のためにパソコンの前へと戻った。

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