刀ミュ「結びの響き、始まりの音」感想(ネタバレあり)


最初からクライマックス☆

冒頭は坂本龍馬と中岡慎太郎が暗殺された池田屋事件から始まります。
ふたりが斬られた後、巴と陸奥守が出てきます。

元の主が殺されたのに動揺しない陸奥守と逸話のない巴の会話。
陸奥守は、龍馬が殺された時手に握られており龍馬の死を見るのが初めてではないため動揺しません。

最初っから話おっも、と思いました。これがクライマックスじゃないの?大丈夫?審神者最後まで生き残れるかな?って思いましたね。冗談じゃなく。


任務に対する勘違い

歴史を守るのが刀剣男士の役割であるという言葉によってミスリードを誘われた感がありました。

歴史を守る=暗殺など登場人物の死の阻止

であると勝手に思っていた節があることに気が付きました。

今までの物語がそういう話だったのもありますが、敵の狙いが土方歳三であると判明した時暗殺させないように守ればいいものだと勝手に決めつけました。

しかし途中で敵の狙いが土方歳三を生かすことであると判明します。
和泉守兼定と堀川国広の元の主である土方さんを歴史通りに死なせることが任務となったわけです。

これに気が付いた時、正直ハッとしました。

この戦いはどれだけむごいことをさせるのだろうか。末席とはいえ八百万の神の中の一柱。しかも人に愛されることで生まれた付喪神に、自分を愛した人を殺せなどと命令しなければならないのか。

土方さんを殺さなければならないと理解した時の刀剣男士は動揺が大きかったように感じました。
特に、和泉守と堀川。この人たちは土方さんを殺せるのだろうか。

堀川は和泉守のためにと一人で土方さんの所に向かいます。


縛られた堀川

敵の罠にはまってしまった堀川は、縛られた状態で土方さんと対面します。土方さんは堀川から情報を聞き出そうと言葉を投げかけます。その時、堀川の口も同じように動いていたんですよね。そして、返事がとてもうれしそうな声でした。堀川は間違いなくこの人の刀の付喪神なのだ、この人の人生とともにあったのだと理解できました。

土方歳三が持っていた刀が本当に堀川国広なのかは定かではありません。贋作であったともいわれています。ですが、真贋は定かでなくとも間違いなく土方歳三の元に在った堀川国広という刀の付喪神なのです。そこに真贋は関係ないのでしょう。

そして、とっっっっってもシリアスな雰囲気だったはずなのに、なぜかにやけが止まらなくなったシーンでした。うん、なんかこう、二次創作大好き人間としてはいろんな妄想が捗ったというか、私の中のお腐れ様の血が騒いだというか、すっごくご褒美でした。
刀ミュ無料配信の時、会場のお姉さま方が一斉に双眼鏡をのぞき込んだというエピソードをTwitterの実況で知って「わかる・・・!」って思った筆者でした。

閑話休題
堀川の単独行動に気づいた一行は、堀川救出へと向かいます。長曽祢さんの一か八かの賭けに乗り、投降し土方さんと話をします。

土方さんは一人ひとりの顔をじっくりと見ていき、大和守の所で足を止め、どこかで会ったかと問いかけます。
この会話でも、むすはじが幕末天狼傳と同じ世界線であり話がつながっているということがわかります。

そして、土方さんが堀川に刀を向けたとき陸奥守がひっそりと拳銃に手を伸ばしいつでも撃てるようにしていたということを知り、陸奥守の底知れなさを感じました。

結局、仲間を助けに来た心意気を気に入った土方さんは、堀川を解放し刀剣男士と一緒に宴会を開きます。
ほのぼのとしていて心が温まるシーンでした。

榎本武揚と土方歳三

おそらくどんな人の頭にも残ったであろう榎本武揚。

印象強すぎてそれまでの話の内容が吹っ飛ぶところでした。榎本さんは土方さんに北(蝦夷地、現在の北海道)に向かうようお願いをします。

新しい国を作るため、新政府軍と戦いますがことごとく敗戦。ショックを受ける榎本さんと喝を入れる土方さん。
土方さんはいわば警察や護衛として様々な人を斬ってきたし、榎本さんと出会う前から最前線で将として戦争の指揮を執ってきました。

自分の上司や部下、仲間など近しい人たちが次々と死んでいく中、将としてみんなを率いなければならないというのはどんな思いなのでしょうね。将の動揺は部下の不安につながるため、必死にこらえていたのでしょうか。
それに対し榎本さんはたくさんの人が死んでいくという現状についていけてないように感じました。
経験の差なのか、土方さんの死の覚悟がそうさせているのかどっちなのでしょうね。

土方さんと榎本さんの対比はもう一つありました。
それは、知識の有無です。

星が覚えられない土方さんと、星や語学がばっちりわかる榎本さん。この戊辰戦争を勝ち残った榎本さんが豊富な知識を持っているという表現が、これからは武ではなく知が求められているという比喩だったのかなと思います。

星についても、流れ星を見たか見てないか、珍しいと思っているか思っていないか、天狼星を見つけられるか見つけられないかでそれぞれを表現していました。

というか、榎本さんの流暢すぎる外国語には大変驚きました。一瞬目が点になりました。中の人が語学堪能な方だったらしいですね。
出ていた時間は多くなかったはずなのにとてつもない印象を残していった榎本さんでした。


和泉守兼定と土方歳三

刀の終わりの時代の最先端。刀剣乱舞の中で最年少(2205年の時およそ350歳のはず)のかっこよくて強ーい刀は、自分の愛する元の主を殺せるかということに対して悩み続けていました。
実際に土方さんと対面し、交流する中で何を思い続けたのでしょうか。

悩んでも答えは出ず、たびたび土方さんと言葉を交わします。
土方さんに直接聞いてしまうところに若い刀らしさを感じました。とっても素直ですよね。そして真摯。
土方さんも、和泉守の問いに対し答えます。

やらなければいけないのなら、近藤さんであろうが殺して見せる

というのが土方さんの答えでした。
自分のすべきこと、役割は何なのか。土方さんはそれの答えを持っていたからこそあそこまで強くいられたのでしょうか。
それとも、近藤さんも沖田君も死に失うものが無くなったから強かったのでしょうか。

和泉守は、土方さんと刀を交わし、殺そうと刃を下ろします。一方、刀を向けられ戦った土方さんは切られる前、とてもいい顔をしているように感じました。

野生の感が強そうな人ですから、きっと目の前にいるのが自分の刀だということに気が付いたのでしょう。そして、北までついてきた理由も、自分に問いかけた質問の意味も、ここまでの行動のほぼすべての意味を正しく理解したのでしょう。
それでもいい顔をしていたということは、自分の愛刀に殺されるのなら本望だと思ったということなのでしょうか。

結局和泉守は、殺すことができず土方さんはその場から立ち去ります。

え、これどうすんの?と思った次の瞬間、陸奥守が拳銃に手を伸ばし、その時やっと私は土方歳三という人間の史実での死に方を思い出します。

土方歳三の死因は、刀ではなく拳銃である。

皮肉なことに、和泉守が殺せなかったのは歴史的に正しかったのです。そして、唯一陸奥守だけが土方歳三を殺せる条件を満たしていたのです。

死ぬ直前の土方さんは笑っていました。どういう意味の笑顔だったのでしょうね。


陸奥守吉行について

最初に見たときの印象としては「三日月と同じくらいよくわからない」でした。
元の主(坂本龍馬)に対しての想いはとても強いのに歴史を守るという役割から一切意思が揺るがないというところに少しの恐怖と疑問を持ちました。今回一緒に出陣した刀のほとんどが新選組刀で、元の主への想いが強い刀たちだったのもあるでしょう。普通ならあの時こうだったらと考えるし、今なら体があるから元の主を救えると思うと行動するものだと思います。しかし、陸奥守はそれが一切ない。

元の主の影響が強い刀剣男士としては少し異質な気がします。
おそらく、陸奥守が元の主を生かそう・歴史を変えようと考えないのは、坂本龍馬という人物が未来を見据える人だったからなのではと思います。

命の危険があろうと、日本という国のために奔走した人物です。これから先を見据え、自分の為ではなく国のために生きた人。
そして、おそらく自分の生き方に後悔はなかったのでしょう。最期に握られていたという陸奥守吉行はもしかしたら死に際の坂本龍馬の心が伝わっていたのではないかと思います。そうだとしても何も言わなさそうですけど。

坂本龍馬は池田屋事件で死んでこそ坂本龍馬である。あれが坂本龍馬という人物の人生の終着点だと理解し、受け入れたのでしょうか。
だとしたら、やっぱりほかの刀剣男士とは少し違う強さを持っている気がします。


陸奥守を異質だと感じたもう一つの理由は、心情を表す歌がないということでしょう。
基本全員に心情をうたう歌があるはずなのに、陸奥守の歌はよさこいのみ。
彼が何を想い、何を考えていたのかがよさこいの歌のみで表現されていました。彼自身の言葉は何一つないのです。

陸奥守の元の主は新政府側、新選組刀は幕府軍側なので、もしかしたらその辺のことも関係しているのかもしれませんね。


巴形薙刀が編成された理由とは

逸話無き巴形の集まりである巴形薙刀。彼が編成された理由はあったのでしょうか。彼でなければいけなかった理由は何でしょうか。

大きな違いは、逸話の有無でしょう。
集合体の巴と日本人なら誰もが知っているであろう人の逸話を持つ彼ら。
巴の存在は和泉守や陸奥守よりも、時間遡行軍(特に今回出てきた犬・猫・蝸牛)に近いものなのかもしれません。

巴が時間遡行軍について逸話無き刀たちの成れの果てであるという説を提示します。この仮説が正しいのだとすれば、刀剣乱舞の集合体の刀たちは今後何かの拍子に敵側に寝返る可能性が出てくるのでしょうか。

それとも、敵側の刀たちに干渉できるようになったりするのでしょうか。時間遡行軍の正体がゲーム内ではっきりと提示されていないのでもしかしたら刀ミュ本丸の時間遡行軍に限ってということになるかもしれませんが、逸話無き刀たちが鍵になってくるかもしれません。

今現在集合体として存在している刀剣男士は巴形薙刀、静形薙刀、同田貫正国、小烏丸の4振りです。刀ミュにもかかわってくるかもしれないので要注意ですね。

そして、巴形という薙刀の集合体である彼と、元の主の影響が強く出ている新選組幕末刀。特に土方組の逸話との向き合い方が巴に与えたものとは何だったのでしょう。

逸話とは、人々が愛した証拠。しかし逸話によって縛られているという見方もすることができるのではないのでしょうか。
執着するから、欲が出るから刀剣男士としての役割から逸脱した行動をとってしまう。

逸話がない巴は陸奥守と新選組刀の逸話との向き合い方の違い、元の主に対する考え方の違いに何を思ったのでしょう。

刀ミュからの世界観の考察について

・時間遡行軍の正体

巴形薙刀の「俺と同じ物語無き者たち」というセリフから、刀剣男士と似て非なる存在であるという可能性が出てきました。

数千、数万とあったであろう日本刀の中で刀剣男士として顕現できるほどの逸話を持った刀は本当に一握りでしょう。
その一握りからあぶれた者たちが、時間遡行軍なのではないかと考えることもできます。

・最新の戦場が函館の理由

ゲームの1-1、つまり一番最近の戦場が維新の記憶・函館である理由は刀の時代の終わりだからでしょうか。

むすはじはゲームで言う1-1が舞台です。ミュの難易度は1面ではない感じがしますけど。
そして、ここで描かれていたのは人が刀ではなく銃で殺されるという結末の物語でした。

刀剣男士は刀の付喪神。武器はもちろん刀です。
しかし、明治以降は拳銃がメイン武器となっていき刀は戦いであまり使われなくなります。だから、刀剣男士では対応できないのではないか、最新の戦場が函館なのではないかと思います。

しかし、陸奥守のみ明治以降でも人を正しく殺すことができるのです。
もし今後、明治以降の戦場が開拓されることがあったなら刀剣男士は、審神者はどう対応するのでしょう。

土方さんのように殺すことで歴史を守らなければいけなくなったときその人の死因が銃殺であったなら、陸奥守が編成されていることが歴史を守る必須条件になってしまうのではないかと思いました。

タイトルについて

結び=武士の時代と幕府の終わり
始まり=明治時代、新しい国の在り方

と考えることができます。では、響きと音は何を表しているか。

それはおそらく銃声でしょう。

土方歳三が死んだあの一発の銃声が、武士の時代の終焉の音という意味でしょう。そしてそれと同時に、新政府軍の新しい時代の始まりの合図となった。

土方歳三が死んだ一発の銃声は時代を結ぶ響きであり、新しい時代の始まりを示す音でもあった

という意味に捉えることができると思いました。


全体を通して

刀ミュの中でたぶん一番泣きました。元の主との関わり方、考え方などそれぞれ違っていて面白かったです。
時代というのは激動の中で終わることが多いのでしょう。土方歳三そして新選組、新政府側のものたちもそれぞれが、それぞれの正義を信じて戦い、そして散っていった。

日本という国の中で、日本人同士が戦ったのはこの時代が最後のはず。この戦いがあったからこそ今の日本はあるわけです。
過去の上に今があり、今の上に未来がある。それを忘れてはいけないと思いました。

特に推していなかった刀剣男士の新たな魅力に気が付けるのもミュの良いところです。

双騎出陣と幕末天狼傳が無事開幕できますように。

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