エビと大人。

一人で電車に乗って街なかへ出て、郵便物を出してから眼鏡屋さんに行ってレンズ交換をお願いして、その間の暇つぶし兼朝ごはんでカフェに入ってカフェオレとエビとバジルのパスタを頼んだ。

お待たせいたしました。

大して待っていない。体感時間5分くらい。注文前にどこまでできているんだろうなんて考える。ありがとうございます、と言って机のど真ん中においてあったカフェオレのカップを端にずらす。カフェオレに代わって温かいパスタが主役。

子供の頃、匂いのする草が口に合わなかった。しょっちゅうお見かけするパセリはもちろん、ローズマリーやカモミール。バシルもその仲間。

子供の頃、冷凍されたシーフードも苦手だった。海の近くの生まれなので、シーフードはいつでも新鮮だった。だからなのか冷凍のイカやタコ、貝類も好きではなかったし、中でもエビが大敵だった。冷凍独特のちょっと生臭い殻の味がする。口に入れたときにもわっと広がる殻の匂いだけで何度戻しそうになったことか。

それなのに、いつの間にか好きになっていたバジルのパスタを食べたくて頼んでしまった。ちなみに冷凍シーフードは未だに口に合わない。大手チェーンのパスタのエビなんて、冷凍に決まっている。

まぁ仕方ないか、とエビを口に含むと、やっぱりあの匂いがした。久々に口内に広がるこの感覚。あぁ、小さい頃なら吐き出していたか無理矢理飲み込んでいただろうな、と思った。

でもここは都会のカフェ。そして私は成人式をとっくに終えた大人。まさかお皿の上に一度噛んだエビをべっと吐き出すわけにはいくまい。

冷凍エビの独特の匂い、味を味わいながら、少しだけ早めに飲み込んだ。

食べられるものが増えた。嫌いなものが減った。一人でカフェに来られるようになった。大人になるのはいいなぁと思ったけれど、口に合わないものをべっと吐き出せなくなるのはちょっと不便だなぁ、なんて思いながら席を立つ。

さて、今日は美容院とショッピングで自分のご機嫌をとる日。大人というのは自分の機嫌は自分で取るものなのです。

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