リレー特急で雪国へ/冬の会津旅行記①
「浅草から会津まで走る特急がある」
旅のきっかけは、鉄道好きの友人が教えてくれた話だ。
「どんなマイナー路線だよ…」
と思わず思ってしまった。(失礼)
浅草と言えば、雷門や浅草寺など、
「都内の観光地」というイメージ、
会津は「白虎隊、東北の内陸の街」程度の認識しかなかった。
その二つを結ぶ路線が存在し、
しかも有料特急まで走っているという。
どんな列車で、どんな場所を走るのか、なんだか気になってしまった。
善は急げと東武鉄道webサイトから特急券を予約。
会津への旅を始めることに。
AM6:30 浅草
2022年も年の瀬、ある日の早朝。
なんとか早起きをして、東武浅草駅にたどり着くと
ちょうど特急リバティ会津が到着していた。
真冬の早朝に浅草まで来るのは少数派なのだろう。
乗り込む乗客は少なく、車両はほぼ空席。
年末の旅行や帰省だろうか、カップルや家族連れがちらほら。(昔好きだった女の子が東北出身だったのを思い出し、勝手に心を痛める)
本当はもう一本後の特急に乗りたかったのだが、そちらはほぼ満席だった。
マイナー路線と思っていたが、全然そんなことはない様だ。
特急が出発するまでの時間で、旅の行程を改めて思い返してみる。
まず、東京から会津まで電車で行くルートは2通り。
一つはJRルート。
新幹線で郡山まで行き、磐越西線に乗り換え
東側から会津盆地に入る方法。(地図上では赤線)
もう一つが今回使用する東武ルートだ。
浅草を出発、日光近くを経由し山間部を抜け、
盆地の南から会津に至る。(地図上の青線)
「よくこんなところに鉄道を通したな…」
事前に国土地理院の標高図などを確認し、
思わずつぶやく。
正直な話、遠回りもいいところだ。
JRなら約3時間で到着するのに対し、
東武は約4時間かかる。
そのうえ特急一本で行けるわけではなく、
乗り換えも必要だ。
それでもこのルートを選択したのは、
鬼怒川温泉なども経由する、この山間の路線に対し直観的にワクワクしたからだ。
車窓を寝静まった浅草の町が静かに流れていく。
あっという間に都市部から農村地帯へ。
関東平野って本当に広いんだなあ、などと思う。
AM8:40 鬼怒川温泉
日光市を通り過ぎ、鬼怒川沿いに山間に入っていくと、景色が一変。
積雪が目立つようになる。
いよいよ東北に足を踏み入れ始めたらしい。
北に向かうにつれ、景色から色彩が少なくなる。
まるで水墨画の世界だ。
山の間を縫うように進んでいく。
線路の両脇に山裾が迫っていて、息苦しい。
かつてこの辺りは会津西街道と呼ばれ
会津藩の参勤交代の際に使用されたルート。
車内アナウンスでそんな案内が流れてくる。
「まるで災害だな」
何もかも、雪に埋もれようとしている。
そんな風に見える。
会津藩の人たちは江戸に行く度に、この山間部を越えていったのか。
そう思うとため息が出る。
AM9:40 会津田島
南会津の町、会津田島に到着。
ここから先は会津鉄道に乗り換えだ。
東北に来た。
足裏で雪を踏みしめて、ようやく実感する。
ここまで積雪していると、空気まで白く染まっているように思えてくる。
そう何度も来られる場所ではないだろう。
もしかしたらもう一生来ないかもしれない。
ただの乗り換え駅だと思っていたが、なんだか名残惜しくなってくる。
用を足すついでに少し散策。
"ぼくのなつやすみ"に出てきそうな町
というのが会津田島の印象。
素朴な空気が流れていて、懐かしさを感じる。
雪のせいか、それとも動くものがあまりないからか、
時が止まったように静か。
夏になれば蝉の声が響いて、また違った顔を見せてくれそうだ。
AM10:35 芦ノ牧温泉
ホームに戻り、会津鉄道に乗り換え。
赤べこの赤が雪国の景色によく映える。
乗客の大半は先ほどまで特急に乗っていた人だ。
電車は阿賀川沿いを北上していく。
芦ノ牧温泉に到着すると、乗客が大勢降りて行った。
年末の温泉旅行と言ったところか。
会津若松まであと少し。
AM10:40 七日町
会津若松駅の一駅手前の
七日町(なぬかまち)にて下車。
浅草を出発してから4時間以上、
ようやくたどり着いた。
昔、とある哲学者が言っていた気がする。
まさにその通りだ。
ここまでの道中、すでに多くのモノを見てきた気がする。
しかし旅はまだ始まったばかり。
一体、これから何を見ることになるんだろうか。
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