雛人形界の未来
新年あけましておめでとうございます。皆様にとって健康で幸多き2022年となりますように。
年明けすぐに「未来の自分手紙を書ける」というサービスを
蔵前にある ”自由丁” さんにて利用させてもらいました。気になる方はHPを覗いてみてください。
余りにも書きたいことが多く手紙だけではまとめられなかったので少しずつnoteに記していきます。
今日はその書ききれなかったモノから一つ、雛人形屋の継承者として家業に対する思いをつらつら書かせてもらいます。
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昨年9月から家業に入り、各先輩方にご指導をいただきながら雛人形を学んでいる最中のワタシですが、雛人形という業態のこれからの行く末をどうにかしないといけないと早速模索しているところです。
年明けに明るい話もしたいところですが、雛人形界にとって本格的に厳しい時代に突入しています。日本の伝統を継承することを前提として、それらを売っていくことを生業としている以上は、この現状を打破するために、やはり何か一手を打ち出していかなければなりません。
―――― 何が問題なのか。
ワタシが把握しているいくつかの例をあげてみます。
①現代人の雛人形に対する興味の有無
②日本の出生率の低下 → 少子化問題
③値段設定について
現時点で書けそうなのはこの辺りでしょうか。この3つは間接的に繋がっていると思われます。
①現代人の雛人形に対する興味の有無
ワタシ自身が周りの声を直接耳にする機会は多くないですが、やはり感覚的に感じています。雛人形について語るタイミングは一般的に年間を通して限られているのでそういった情報も少ないです。
これについてはある程度でも良いから統計を取らなければいけなくて、しばらく私のTwitterアカウントのプロフィールに載せていまして、ぜひ統計を取りたいのでご協力をお願いしたいです。
ワタシのアカウント → ミノッティ.com
興味の有無、雛人形についての印象、もし買うとしたらどんな雛人形を飾りたいと思うか。など順を追ってアンケートを収集していきます。数は少ないかもしれませんが、その少しの意見が今後も重要な参考資料になるはずなのでしっかりまとめていきます。
これをする理由は、雛人形の未来をどう残していくかの参考にするためです。いち消費者の意見だけ聞いていればなんとかなるほど簡単な業界で無いことがわかったので、あくまで参考として。
そして、ウチの所有物で使っていないスペースを使ってのイベント開催も考えています。使えるものはどんどん使っていく、そしてやることが重要。
「高くて買えない」「そもそも興味がない」「無くて良いと思う」
「家におけない」「処分が大変」などなどあるでしょう。
問題は山積みで、企業側で解決策を打ち出すのが難しい議題が多めです。
ただ、多くの方に雛人形の良さや歴史を示していくことは出来ます。地道な作業になりますが必要不可欠です。人形屋の人間になった以上これは責務なので、これをいかに打ち出していくか、周知していくかが今後重要になるでしょう。
②について
ワタシと同世代の方で既にお子さんがいたり各家庭を持っている方も結構いらっしゃるので様々なお話を聞かせてもらう機会が多くなりました。そして現代社会において子供を産む、子育てをすることは本当に大変な事なんだなと感じています。
話だけ聞いていると、自分たちの願望だけで子供を作る決断は出来ないのだと。
子供のいない家庭であれば雛人形を飾るまでに至りません。
子供がいて飾りたいけど値段が高くて買えない家庭もあるでしょう。
出生率が低いということは雛人形を用意出来る家庭が比例して、もしくはそれ以上に減っているということです。
ということはやはり、雛人形に関わっている我々のような人間がこの歴史を絶やさないために伝達していくしか方法は無い。
そしてこの時代背景を読み取り、どう伝えていくか。どうすれば伝わるのかを模索し続けることが大切になります。
③値段設定について
”伝統”という面でも特異な品物なので単価が高いというのもネックです。年に一度のお節句ということで、そういう時だからこそ少し高いお金を出して子供や孫のために用意してあげるっていうのが基本的な購入までの流れになりますが、上でも書いた「雛人形を買う余裕が無い」家庭もたくさんあるはずなのでなかなか買っていただけないというのも現状です。
こういった箇条書きで表すことは簡単ですが、昔からキワモノと呼ばれていただけあってもっともっと複雑な事情があったりする業界なので中々理解されない部分も多々あります。
なぜこんなに値段が高いのか。
なぜこれを飾るのか。
「必要の季節の間際になって売り出される一時限りの品物」というのがキワモノ。雛人形もこれに該当し、手を出しても出さなくても良いという解釈をされやすいんじゃないかと感じます。
課題提起してみればわかる通り、我々がいくら雛人形について熱く周知しても現状打破が難しい世界であることも事実です。だけど、どうにか家に置いていただけるキッカケを与え続けなければならない。ですが
ワタシ自身、昨年から色んなお客さんのところに出向き、たくさんの商品を間近で。雛人形や兜を見て触る機会も増えてきて
それを繰り返していると不思議なもので愛着が湧いてきたんです。もちろん人形屋の息子という影響も少なからずあるでしょうが、昨年の初め頃は継ぐことすら考えなかったワタシがそうなってしまったわけです。
職人さん達が丹精込めて作った素敵なモノは本当にたくさんあります。
恥ずかしげもなく正直言いますが、自分の両親は凄いです。こんな狭い業界で、数年前から衰退が始まっていた中で、小さな会社を経営をしながらワタシや姉を育ててくれた事には尊敬していますし、感謝しています。ワタシが家業を継ぐ決意をした理由の一つが、この跡継ぎこそが、今まで全く親孝行をしてこなかった自分にとっての最後の機会かもしれないと感じたからです。絶対に潰してはならないし、本当に極限まで衰退しても何らかの形を残して来世に繋げていきたいという気持ちはありますし、それがワタシに出来る最大の親孝行なのかなと。
今日の1月12日時点で約40人ほど、Twitter上のアンケートで回答していただけていま
す、本当に感謝です。
どんな結果であれ、雛人形というフレーズを
見た人の頭にちょっとでも刻めればそれで良い。本当にみなさんのご協力には感謝しています。ありがとうございます。
最後に、ここまで書いてみると
「なんだやっぱり雛人形で儲かって良い思いしたいだけじゃん。」と
自分を客観しするとそう捉えられなくもないな。と感じます
これを生業として生活していく以上、それも嘘ではないです。
ただ、それは二の次で良いと思っているのも本当です。
全ての言動の本来の目的、というか願いは
「お節句という文化がいつまでも続きますように。」
これです。
雛人形の問屋という商売が自分の生活の糧になるかならないかは正直言って結果論で良いです。これから協力してくれるであろう従業員さえ困らせなければ良いのです。
綺麗ごとに聞こえても構わないですが、まずは
「雛人形も悪くないね」
「兜って意外ととかっこよくない?」
そのくらいに思ってくれれば今は十分だと思っています。
昨年のワタシと同じように感じ始めてくれる方もいると信じて。
今年はこのようにnoteを書く機会を増やしていきます。
ぼんやりとダラダラ生きないように。
ちゃんと自分が現代に生きた証を残せるように。
今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
ミノッテイ。
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