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『洗面器でヤギごはん 世界9万5000km 自転車ひとり旅Ⅲ』(石田ゆうすけ)

石田ゆうすけさんの7年半・9万5000kmにおよぶ世界を巡った旅の間に食べた物をつづった記録。
食べ物がメインなだけに自転車に関する記載はほぼない。
なので厳密にいえば自転車に関連する本とはいえないかもしれない。
おいしいものを食べに行くために自転車に乗る、自転車に乗ったご褒美においしいものを食べる、どちらが手段でどちらが目的なのかは人それぞれだと思うけど、「グルメライド」があるくらいだから、自転車に乗ることと食べることは切り離せない部分があると思う。
というわけで、「世界9万5000km 自転車ひとり旅」シリーズの中の1冊だし、私の中では自転車関連本に位置付けます。

石田さんの相手の懐にすとんと飛び込むような人懐っこさ、偏見や思い込みをなるべく排除して接する態度(人に対しても食べ物に対しても)、辞書を引き引き現地の言葉を話そうとする努力、その国の人と同じものを(たとえ合わなそうだと思ったとしても)食べる好奇心。
それを、余すところなく読者に伝える描写力によって、行ったことのない国の食べたことのないメニューでも、どんな食べ物なのか、どんな見た目でどんな匂いがしてどんな味がするのか、なんとなく想像できてしまう(もちろん、見たことも食べたこともない食べ物だから、想像したものとは全然違うかもしれないけど)。
味覚は人によって差が大きいものだけれど、でも、生きることに直結している感覚なだけに、ある意味、不変的なものなんだなぁとつくづく思った。
私には自転車での世界一周はムリだけれど、まるで自分が旅したように、食べたように感じられ、読み終えたときは、一緒に旅を終えたような気分になった。

これだけ食べ物に関する描写が上手な人が書いた旅の景色も読んでみたいに決まってる!
『行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅』と『いちばん危険なトイレといちばんの星空―世界9万5000km自転車ひとり旅〈2〉』を読むのがとても楽しみ。

読み終えてから改めてよくよく数えてみたら、石田さんが旅を始めたのは四半世紀も前のことだったんだけど、古さはまったく感じられない。
私は文庫版を読んだのだけど、文庫化するにあたって、20編加えたとのこと。
文庫版をお勧めします。

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先月読んだ『台湾自転車気儘旅 世界一屋台メシのうまい国へ』がすごく面白くて、石田ゆうすけさんの他の本をもっと読みたいなと思った。

が、「世界9万5000km 自転車ひとり旅」シリーズ、私が住む区の図書館には、『いちばん危険なトイレといちばんの星空』しか蔵書してなかった(泣)。
『台湾自転車気儘旅 世界一屋台メシのうまい国へ』は、中古で購入したのだけど、『台湾自転車気儘旅』を検索してたときに、『洗面器でヤギごはん 世界9万5000Km 自転車ひとり旅Ⅲ』も自宅近所の味の素食の文化ライブラリーに置いてあることがわかり、執筆順ではないけれど、『洗面器でヤギごはん』から読むことになった。

自転車とは全然関係ないけれど、「味の素食の文化ライブラリー」、食に関する本ならなんでも置いてあるくらいの勢いなので、ご興味があれば。

食の文化ライブラリー
味の素食の文化センターが運営する「食の文化ライブラリー」は、食分野に特化した食の専門図書館です。江戸の料理書、明治~昭和30年代の図書・雑誌などの古い資料から新刊本まで約40,000冊を所蔵しています。開館時間内ならどなたでも自由にご利用いただけます。
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公開日:2020年4月1日

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