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妄想レビュー返答

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こちらは、企画「妄想レビューから記事」の返答をまとめたマガジンになります。 企画概要はこちら。 https://note.com/mimuco/n/n94c8c354c9c4
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#月

【色鉛筆画】月を想う🌜(海風りんさんの#妄想レビュー返答の返答)

こんにちは🌜  ミムコさんの企画「妄想レビューから記事」に参加されている、海風りんさんの作品「満ち欠け」からインスピレーションを受けて、 彼女の優しい世界観をイメージした絵を書いてみました☺️ 🌟海風りんさんの詩「満ち欠け」は、こちらから🌜↓  皆さんは、どんなイメージだったでしょうか?  さて、久しぶりに手にした色鉛筆です!  心して…、いや、温かい目で見てください☺️ (淡いver.と濃いver.)  海風りんさんの詩には、猫は出てこないのですが、 主人公の恋人

月の缶詰1

はじまりじゃない朔空には闇だけが浮かんでいる。 裏には広々と田んぼが広がるだけの駅の周辺は何もなく、改札機と券売機、点滅する信号機、そして申し訳程度についた街灯だけが光源である。 田舎の朔の夜は音を吸収して、本当に静かで真っ暗だ。 ちなみにここがどのくらい田舎かというと、22時には閉まってしまうあまりコンビニエンスじゃない最寄りのコンビニまで自動車がないと辿り着けず、それでもコンビニができたと住民が浮かれるくらい。 日本には自宅の前に住民の名前がついたバス停ができる土地もある

月の缶詰2

日常の上弦「ちょっと太った?」 「美晴は本当に失礼がすぎる。僕は太ったんやないの、大きくなったんよ。月は日が経つに連れて満月に近づくの知らんの?空見てみ?」 月は知らぬ間に私の名前を呼び捨てにするようになっていたし、私は私で彼の形がこんなに大きくなるまで気が付かないほど、彼は私の生活に馴染んでいた。 「もうすぐ上弦やけんね。」 「上弦?」 「ざっくり言うと半月のことやね。この前までが三日月、今が上弦、次が満月、その次が下弦、もっかい三日月が終わったらまた新月。その頃には美

月の缶詰3

別れの予感の三日月「もうすぐ新月や。」 空を見上げて月が言った。 「だいぶ細くなったね。」 「スリムでさらにかっこよくなったやろ?」 「ノーコメント。」 「美晴はほんとに失礼やなあ。」 いつものように軽口を叩き合って笑っていたら、少し黙った月が急に真剣な声になってぽそりと言った。 「無事に月に選ばれて役目を終えたらな、好きなところに行けるらしいんよ。」 そしたら、美晴のところに帰って来てもいいやろうか。 彼は小さな声で私に聞いた。 「ちゃんと立派に月やってきたら、

「月の缶詰1」作:望月みや/朗読してみたよ

念願かなって、望月みやさんの「月の缶詰」朗読をスタートします。スタート、というのは1~3に分かれているからです。 「月の缶詰1」から順に公開させていただきます。2と3は絶賛編集作業中ですので、少々お待ちください。 望月さんの原作はこちら! 実はこのお話、生まれるきっかけとなったのがミムコさんのコチラの企画でした。 で、私が投稿した【妄想レビュー】がこちら。 望月さんの手で描かれる、ユーモラスながらもちょっと泣けちゃうハートフルストーリーは「新しいお月見」企画で「三日

「月の缶詰3」作:望月みや/朗読してみたよ

望月みやさんの「月の缶詰3」の朗読をアップいたします。 5年の一度の「世代交代」のチャンスに向け、満月へと成長した「缶詰の月」。新月が迫る中、月と美晴はそれぞれの思いを胸に、ついに‶その時”を迎えます。 望月みやさんの原作はこちらから。心にきゅんと響く素敵なお話を朗読させていただき、本当にありがとうございました! そして、1話目と2話目の朗読はこちらから。 この3作は一気に続けて聞けるように、まとめたものをポッドキャストにも置かせていただこうと思います。続けて聞くと3

月の缶詰 スピンオフ1

憧れと現実の上弦と満月の狭間 まだ月の声が少年と大人の間だった頃のこと。 「なあなあ。人は月を見る行事があるんやろ?」 半月をちょっと通り過ぎた月が興味津々に聞いてきた。 「お月見のこと?」 「チュウシュウのメイゲツってやつ。」 「あ、今の意味わからず言ったでしょ。カタカナに聞こえた。」 「気のせいやない?」 「真ん中の中に秋で中秋。有名な月で、名月ね。」 「・・・僕らからしたらいつも名月やもん。そんなん知らん。」 楽しそうだった声がいじけた。 それでもすぐに気を取

月の缶詰 スピンオフ2

思いもよらぬ下弦 「あの、すみません。」 「ん?」 近くで声が聞こえたような気がしたのに、周囲にはいつもと変わらぬ光景が広がるだけだ。 「気のせい・・・か?」 月は美晴に拾ってもらった夜のことを思い出した。 「美晴もあんときはきょろきょろしとったなあ。」 あまりに光源の少ない駅だから美晴は声の出どころが咄嗟には分からなかったらしく、だいぶキョロキョロしとったなあと懐かしさと笑いが込み上げてきた。 美晴からすれば、人間はまさか缶詰の中の石が喋るとは思ってもみないし、そ

月の缶詰 スピンオフ3

後悔の新月気がつくと空だった。 新月の日が来たのだ。 この朔の夜が明けるとき、三日月になった者が次代の月だ。 「結局、美晴に挨拶もせんかったなあ。泣かせてしまうな。」 そろそろだと分かっていたのにさよならを言えなかったのは、泣き顔を見たくなかったから。 最後の最後までいつも通りがいいという自身の我儘を通して、美晴が何度か別れを言おうとしたのに気がついても、まだ大丈夫と言わんばかりにその雰囲気をわざと崩した。 共に過ごしたこの短い間にも、美晴が寂しがりであることや自分に信頼

月の缶詰 スピンオフ4

お暇の朔空に帰ってきてから何度目かの新月。 この朔の夜は月とっては唯一の休暇。 僕は時間があると美晴の顔が思い浮かぶけん、よく美晴の観察をしとるんよ。 美晴はよく僕を眺めとるけど、僕の方も美晴を眺めとるとはたぶん美晴は思ってもないやろうなあ。 せっかく観察したし、忘れたらもったいないけん、この暇な夜に日記にしてまとめとこうかな。 三日月の朝 美晴は朝が弱い。 目覚ましのアラームは5分おきに5回鳴らす。 どうせ起きんのやったら、最後のやつだけにして気持ちよく寝たらいいのに。

月の缶詰 スピンオフ5

美しく晴れた夜 「そろそろかなあ。」 だいぶ細くなった月を見上げて呟く。 月とひと月を過ごしてから5年が経った。 あまりにあっという間の出来事だったことと5年間も普通の生活を送ったことで、あのひと月が夢だったのか現実だったのかは曖昧になりつつある。 この5年で変化したことは大してないけれど、あの頃よりは大人になったし、仕事もほんの少しできるようになったと思う。 今の生活に不満はないけれど、ふとした瞬間、ドレッサーの上に目をやってしまうこと自分を自覚している。 またねと言えな

月の缶詰 〜図書館帰りの女の子〜

「かわいい子やったなあ。」 心の声が漏れたのかと思ってちょっと恥じらっていたら、手元から石、自称「月」の声がする。 「そう思わんかった?」 慌てて周囲を見回して誰もいないことを確かめ、肩を落とす。 自分の心の声が漏れ出ていたら恥ずかしいけれども、こちらの声の方がまずい。 他の誰かに聞かれたら困ってしまう。 「お隣さん、昨日はカレーだったみたい。」が話題となるような田舎だ。 喋る石の存在はもちろん、石と話す女もどちらも噂にするに