咲き初め ―花あかりの夢より―
小さな緑地の隅に桜の木が1本立っている。
商業施設の一部として整備されたこの場所は繁華街とその最寄り駅の間にあり、この場所を通り抜けることでそれぞれへの距離を大幅に短縮できる。
そのため足早に通り過ぎてしまう人が多いが、買い物客の休憩場所としてか、都心には多くない緑を楽しめるようにという配慮か、決して広くはない敷地にいくつかベンチも設置されており、その一つはこの緑地の目玉として植えられた桜の木の下に置かれていた。
仕事帰りの佳織が置き去りにされた1冊の本を見つけたのもそ