「イクメン」
ぼくはイクメンではない。
15年前ぼくが育児休暇を取ったとき、首都圏で育児休暇を取得した男性は通算で89人だったそうだ。ぼくが90人目だったというわけだ。
当時、いろんな人に言われた。
「イクメンですね〜」
そう言われるたびに、強い強い違和感があった。
ウィキペディアによると、イクメンとは、日本語で子育てに積極的に関与する男性を指す俗語、ということのようだ。
ならば、より明確に言える。
ぼくはイクメンではない。
ぼくが育児休暇を取ったのは、とても単純な理由だ。
すなわち、
・子どもが11月生まれ
・保育園にゼロ歳の空きがない
・育児休暇は(当時)1年までしか取れないから、パートナーは子が1歳になると復職する
ただこれだけの理由だ。
だから、育児休暇の最中を振り返っても「楽しかったなー」とはならない。
ただただ「ちゃんとオレを生かせよ」と圧をかけてくる子どもに応え続けていた、というのが正直なところだ。
当時、男性の育児休暇自体が珍しかったので、講演をお願いされることがあった。
そのたびに激しく困った。(現に一つは断った)
「どうしてイクメンになれたかを話してください」と依頼されても、その答えは持っていないから。
このことを今考えていると、少し整理がついた。
やっぱり、人はイクメンにならなくてもいい。
なぜなら、子どもはどんな大人にでも無邪気に「オレを生かせよ」をつきつけてくるから。
疲弊しながらもこの圧に屈し続ける子育ても、たぶんたくさんやられていると思う。それを「積極的に子育てに関与する」とは、いえない。
ただ、ぼくのようにこうやって子育てをしてきた結果、大変だった思い出ばかりが残ってしまってほとんどまともな記憶がない、というのはやっぱりいいことではないと思う。
だから、これから子どもを育てる人たちには伝えたい。
なんでもいいから、小さな瞬間瞬間を、ちゃんと覚えていよう。
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