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【詩】サンダルの底の砂

海から帰ってきて片付けをしている私に
サンダルの底に付いてきた砂がいう

ねえ、楽しかったでしょう?
海は最高でしょう?

私はちょっと腹を立てて言い返す

海は暑すぎるわ
日に焼けたところは痛いし
夫の機嫌を伺うのに疲れたわ

砂はさらさらと笑う

それはちっとも海のことじゃないじゃない

いわれて私は考える
ほんとうだ
さっきの不満はどれも海のことじゃない
海のせいじゃない

ごめんね、そのとおりね

海は青くて
海の上の空も青くて
雲は白くて
むくむくした可愛い犬みたいで
砕ける波はレースみたいで
気持ちの良い声で歌いながら
足元を泡で包んでくれた

ほら、遠くまでつながっているよ
どこまでも行ける
きみの知らないところへ
どこへでも行ける

一つだけポケットに入れてきた
すべすべの青いガラスのかけらと
サンダルの底の砂を
手のひらにのせる

どこかへ行こう
海の歌が聴こえるうちに
どこかへ行こう
知らない場所へ

わたしは手のひらをぎゅっとにぎった



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