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喫茶斑猫

斑猫という名のひみつの珈琲店があるという。
とてもとても信じられないほど美味しい珈琲を出すという。喫茶店マニア、珈琲マニア、ただのミーハーな喫茶店好き達はなんとかしてその店の珈琲を飲んでみたいと思うが辿り着くのも難しい。
その店はとある古本屋の奥にあるという。
普通の人には欲しい本が一冊もないような、でも見る人が見たら欲しい古本ばかりというような、静かで狭くて古くて昔の匂いがする古本屋だ。柱にかかった色褪せた振り子時計がかちこちといつかわからない時を刻んでいる。
もちろんそれらに似つかわしい気難し気なとても話しかけられないような昔の作家みたいな風貌の店主と猫がいる。錆柄の猫は目つきも悪く柄も悪くとても看板猫とは言えない。がその店にはとてもふさわしい看板猫ともいえる。
ともかくまずその古本屋をみつけ、その世にも話しかけにくい店主と猫に話しかけ、喫茶斑猫に行きたいのだと伝え、試験を受けなくてはいけない。
ここまで読んでほとんどの人はそんなの面倒だからそこまでして美味しい珈琲を飲まなくて良い、スタバに行くからとか言うだろう。
私もそこまでしなくても近所に優しいマスターのいる美味しい自家焙煎の喫茶店があるからチャレンジするつもりはない。
でもそれらを突破して喫茶斑猫に行くためのヒントを一つ書いておく。
斑猫というくらいだから虫についての問題に答えられないと入店を許されない。難しい漢字で書かれた虫の名前を5つはすらすら読めなくてはならない。
私は実は漢字が得意だからそこを突破したことがある。え、さっきそんな面倒なことはしないって言ったくせに!と誰か突っ込みましたか?そんないじわるな人はもう続きを読まなくて結構です!
とにかく漢字をすらすら読んだ人が私のほかにもう一人、二人で次の、次と言っても最後の質問に答えることになり、私はそこで不合格、彼女だけが地下にある喫茶店へと続く階段を下りて行った。
その質問は「自分を虫に例えると?」というものだったと特別に教えてあげよう。
私は3秒考えて「とんぼ!」と答えたが古本屋の店主は首を振り、サビ猫がシャーとうなった。
彼女は「ルーミスシジミ」と答え、店主は満足げに微笑し、猫もニャと少し可愛い声を出し、さっき説明したように地下へと案内されて進んで行った。
気落ちして家に帰った私は真っ先にルーミスシジミというものを調べてみた。シジミ蝶だからもちろん小さい。そしてきれいな青い羽をしていた。確かにさっきの彼女は小柄でよく似合うブルーのセーターを着ていた。いつも青い服を着ていそうな人だった。
まあとにかくそういうわけで自分を虫に例えたらなんであるかをよく考えておかなくてはいけない。
トンボ、蝉、蝶、などでは駄目だとはっきりしている。もっと具体性が必要なのだ。
私はずっと考えていたけれど分からないので虫にくわしい友人に相談してみた。
「私は虫に例えると何だと思う?」
「センチコガネ」
センチコガネ?聞いたことがなかったのでググってみる。
えっ、ちっちゃくてかわいい。今度はそれでチャレンジしよう。きっと合格してあの地下への階段を降りて喫茶斑猫に行くことができる。
でもセンチはcmではなくて「雪隠」からきているらしいとあとで気がついたがまあいいや、と思った。
さああなたも今のうちに自分を虫に例えると?の答えを決めておきましょう。
その前にこの漢字テストをどうぞ。
「斑猫、蟋蟀、螻蛄、水黽、飛蝗」


友人がみかけた斑猫(ハンミョウ)です!実物見てみたい~✨


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