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創作への恐れと憧れ
夢中になれることのひとつに、『絵を描く』があった。いまはペンを持っても、心が踊らない。
昔は創作をするのが好きだった。未知の世界を歩き、少しずつ景色が露わになっていく感覚に、夢中になった。創っている最中がなにより好きだった。少しずつ現実に足を下ろしていく、私の創作物。私は、私の作品が好きだった。
あのときの興奮を、いまは感じることができない。
頭の中で空想をこねくりまわすのは今でも好きだ。だが実行できない。実行ができないのは、完成させる体力がないからだ。家に帰ればもうヘトヘトだ。創作に割く時間だってない。仕事があるし、家事もあるし、観たいドラマだって溜まっている。明日は友人と呑みに行く。
それに、空想どおりの物を作れる力が、私にはない。実際にペンを持っても、思う通りに描くことができない。上手くいかない。なぜ? ああ、もうこんな時間になってしまった。それでこの出来。完成させるのは、無理だ。
そう理由を連ねて、言い訳をして、絵もお話も、もう何年も作れていない。
創作したいのにしていない自分が腹立たしく、情けなく思うのはなぜなのだろう。
美大生だった呪いのようなものかもしれない。
デザイナーとして働いていたからかもしれない。
もしかしたら、疲れているだけなのかも知れない。
実際にペンを持って描くのに費やす時間の何倍もを、私は世界中のクリエイターたちの作品を鑑賞することに使っている。
観るのは疲れないから不思議だ。新しい表現に、好きな作風に、心が踊る。私には考えもつかない発想に、美しさに、鳥肌が立つ。
なんて素晴らしい。
同じニンゲンが、こんな美しいものを創り出すことができるなんて。
観るだけで、感じるだけで満足。そう思いたい反面、私もなにかを創りたい、私だけのものを、と、くすぶっているのを感じる。
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