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『冬の本』夏葉社

久しぶりのnoteだ~♪

急いで読まないといけない仕事の本を数冊抱えていて、その合間に少しずつ読んでいたこの本。冬の本をテーマにした見開き2ページの短いエッセイを集めたもの。ちょうど急に寒くなり始めたころに読み始め、なんとなく冬の匂い(って、ありますよね?)をページに感じながら読み終えた。どのエッセイもとても短いので、余計なものをそぎ落とした散文詩のようでもあった。

伊藤比呂美さんのは子どもの頃に読んだ『赤毛のアン』。アンがマシューに「それから、ちょっと地下室へ行って、冬リンゴをすこし出してきていいこと?」と言う。地下室に冬リンゴ(とはどんなリンゴだ?)があるという、カナダの素敵な日常に子どものわたしも憧れたこと、よく覚えている。

平松洋子さんは倉橋由美子の『暗い旅』。おお、わたしも読みましたとも。あの頃の文学女子の憧れの本でした。主人公が列車で東京から京都に行く話なのだけど、あれが冬だったとは覚えていなかった。いまの新幹線は速すぎる。列車でゆっくりと京都に近づく旅が苦くて蠱惑的な本だった。

武田花さんのナザレの馬小屋に関する疑問。

橋口幸子さんの学生能と写真の悲しい話。

小林エリカさんが引く短歌。「いつか死ぬ必ず春が来るように」。

北村知之さんの犬が死ぬ話が少し出る「小さな町にて」。最後の方はこんな感じで終わる。「本棚に並んだ一冊一冊が、長屋の住人のようにつながりをもっていく。そのたくさんの本のあつまりが、またあたらしい一冊をえらばせる。読書というおこないは、自分にしか手にすることのない、小さな町のような本を編んでいくことだとおもう。」

夏葉社(なつはしゃ)は以前に読んだ『長い読書』の島田潤一郎さんがやっている小さな出版社だ。最近この出版社に興味を持つようになり、お勧めの本らしい関口良雄の『昔日の客』をきのう入手したばかり。わたしの町がまた少し広がるかな。


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