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柴崎友香『あらゆることは今起こる』医学書院

この題名が呪文のように響いて、これは読まなくては!と思ったのだ。実は最近、自分はADHDの気があるのではと思っていた。読んだ結果、たしかに自分にその傾向があると思った。ただし軽度であるが。

ケアを開くシリーズの1冊である。以前に読んだ『中道態の世界』もこのシリーズだった。著者のADHDは重症で、医者にかかって薬をのんでいる。
その薬、コンサータをのんだとき、「小学校の修学旅行で夜更かしして翌日眠くて、それ以来1回も目が覚めた気がしなかったんですが、今36年ぶりに目が覚めています」という感じだったらしい。

自分自身に当てはまってドキリとしたのは次のような点。

・スクリュー式の蓋がうまく閉められない。(これが一番びっくりした。これってADHDのためだったのか。確かにうまく閉められず、半端な閉め方をしたりする。ただだらしないからだと思っていた。)
・好きなことに過集中する。(自分ひとりなら害はないが、わたしの場合、他の人を巻き込んでしまい、自分だけ過集中して他人にも同じ過集中を期待するのが問題。)
・突然の問題が起きると焦って変な選択をする。(柴崎さんは突然の電車乗り換えの例をあげている。わたしは食事の支度をしているときに突然のメニュー変更をして変な献立になったりする。でもこれってADHDとは関係ないかも。)
・書類が整理できない。失くす。(これはもう、しょっちゅう。本も必要な本が見つからずに探し回ること多し。)
・目の前のことに集中できない。(集中できないことが多いのは確か。SNSの影響も大きい。)
・慎重なのに失敗する。(小心者だし、慎重というのは本当なのだが、実行するときになるとなぜだかいい加減なことをしてしまう。)
・迷う。(外や建物中など、迷ったときにとんでもない方向に進んでしまう。みんな呆れる。)
・助けを求められず、全部自分でしようとする。(現在、ちょっと困っていることはこれかな。単に意地っ張りなのかと思っていたが、ADHDだったのか。)

あと、面白かったのは、「今から季節が暑くなるのか寒くなるのか、わからなくなってしまうことがある。」わたしもそう!でも、これって、ほんとうに他の人もそうじゃないの?

まぁ、そんな感じだ。よく「部屋が片付かない」という特徴があげられるが、わたしはほどほどに片付いている。それから思うに、わたしは子どもの頃はADHD的傾向はなかったと思う。これに気がついたのは大人になってからだ。変な失敗(人がしないような)をする。同じ指示を受けても、自分だけやることが違う(突飛なことをする)。本を読んでいても、子どものときほど集中できなくなっている。

ただ、わたしの場合はけっこうそういう失敗を面白がっているのだ。軽度のADHDを自分の特徴だと思って納得している。なので、今のところ特に心配していないが、この本を読んで、自分の様々な失敗の理由が分かったのはありがたかった。

最後に、ADHDとは違う話だが、印象的だったこと。ある文学賞で若手作家への誉め言葉として、先輩作家が「小説の肝をつかんでいる。どういうことかというと、言葉が自分の外にあるとわかっている」と言った。柴崎さんも同感している。これ、わたしはたぶんよくわからない。わかりたい。


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