石井千湖『積ん読の本』主婦と生活社
こういう本には抵抗できなくて買ってしまう。とにかく本がたくさん写っているとそれだけでうっとり眺めてしまうのだ。ETVで定期的にやっている読書家宅を訪問する番組も大好き。自分と好みが近い人の本棚をよだれを垂らして見ている。
と言うわりには、実は自分では本はできるだけ増やしたくない。大いなる矛盾である。わたしは本に限らず物がたくさん家にある状態が嫌いなのだ。物は捨てられるだけ捨てたい。本の場合はさすがにじゃんじゃん捨てるわけにはいかない。特に仕事関係は捨ててはいけない。でも自分が楽しみのために読む本は厳選して手元に置いておきたいと思う。特に最近は、自分に〈刺さる〉ところがあった本しか残しておきたくない。たった1行でも刺さったら残す。1冊ずつ、それを問う。
さて、これは楽しい本だった。いろんな人がいるものだ。古本屋で現実の女性の手書きの日記を買った人。一日中本を読み、歩いているときも読むが不思議と電柱にぶつからない人。本屋で本を試し読みするときは冒頭ではなく途中を読む人。ダイニングやトイレなど家のあちこちに本を入れた籠を置き、並行して読む人。本の余白の書き込みがすごい人。コロナを機に本を置く別宅を手に入れてそこから出たくない人。じゃんじゃん自炊して横断検索をする人。そして、最後の管啓次郎の「本は読めないもの」はやっぱり締めの名言なのである。
わたしの場合、積読はせいぜい10冊程度なのだけど、「あの10冊、いつ読もうかな」と考えるだけで嬉しい。リビングのサイドテーブルに積んでおいて、ときどきパラパラと見る。今ならイザベラ・バードの本とか、イギリスの詩集とか、料理本とか、この『積ん読の本』などが積まれている。最近では昔読んだ本を再読したいと強く思うようになったし、そうなると本棚全体が積読みたいなものなのかもしれない。「本は読めないもの」というのがちょっとわかる気がしてくるなぁ。
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