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小川洋子、平松洋子『洋子さんの本棚』集英社文庫

ここのところ手に取る本があまりピンと来ないことが多い。そんなとき、無理してでも読了するぞと思うべきなのか、残された時間は限りがあるのだから合わない本は途中でやめるべきなのか。自分の本棚には再読、再再読したいお気に入りの本がずらりと並んでいるではないか。

ということで、今回は何度読んだかわからないこの本。二人の洋子さんが読書について語る。二人は年も近く、出身も同じ岡山、上京して住んでいた場所まで近かったらしい。読書の好みもとても近いが、もちろん全く同じではなくズレもあり、おしゃべりしながらそのズレも楽しんでいる。ああ、こんな友だちが自分にもいたらなぁ。どんなに幸せだろう。二人が若いころに倉橋由美子『暗い旅』に大いに影響されたと話しているときには、「わたしもー!」とガールズ・トーク風に会話に飛び込みたい気持ちになった。

もともと人の読書記録を読むのが大好きなのだが、この本は特にお気に入りだ。読んでいると「これも読まなきゃ!」と思うものばかり。本を語るうちに呟かれる人生観やら男性観やら親子観も含蓄がある。お互いが言葉を吟味して語ろうとしている。アラーキーに撮影されたときの印象を語る平松洋子の、苦心して少しでも正確に語ろうとする姿勢など、いい。ただひとつだけ閉口したのは二人がそれぞれの子どものことを語るところだ。もう抑制なしで、愛情ダダ洩れ、手放しの語り方なのである...。(もちろんそう感じるのはわたしに子どもがいないせいだろうけど。)

二人が挙げる本は自分もぜひ読みたいと思うものばかりではなく、「ほんとにいいのかなぁ」とちょっとためらってしまうものもある。たとえば、宮本輝『錦繡』とか藤沢周平『海鳴り』だ。まぁ両作家ともまだ一度も読んだことがないので偏見なのだろう。今回読み直して、自分も読もうと思ったのは『トムは真夜中の庭で』(日本語では読んでいるので英語を注文)、あと壇一雄『美味放浪記』、内田百閒『冥土』。実は内田百閒はあんまり好きじゃないのだが、がんばって注文した。届くのが楽しみだ。

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