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刃生賛歌の物語だったのか−「江 おん すていじ」の感想

※「江 おん すていじ」を観ての感想…というよりそれを踏まえて色々考えたことの雑記です。
※里見八犬伝にはまったく明るくないのでその辺りの話はしていません。色々足りないと思いますが許してください。
※何度も観ていないため不正確な部分があります。許して

特に一貫性のある記事ではないので、見出しから好きなところだけ読んでください。


はじめに

ミュージカル刀剣乱舞「江 おん すていじ」が開幕しました。…とか書いてる間に千秋楽が近づいてしまいました。
いつか江のものたちの「すていじ」が観たいとは思っていたけどこんなに早く実現するとは思っていませんでしたよ!!嬉しいですね!!
わたしは初日配信と12/28ソワレを観劇しました。
初日配信の時は「とにかく楽しかった」「なんかすごかった」という感想だったのですが、観劇し色々考えたので残しておきます。
とにかくキャラクター解釈がよかった。という話をメインにします。

一部メインの雑記

おれたちがみたかったやつじゃん

まず三部構成って何!?という驚きはさておき。
一部で「本丸の日常」が観られたの本当~~に嬉しかったんですよね。これ本当に観たかったやつ!!!!!!!
「江 おん すていじ」はエンタメに振り切ってとにかく楽しんでね!!っていう作品だなと思うんですが。
個人的に刀剣男士について考えていたことについてひとつの解答例をもらえた気がして、そのことがとても嬉しかったです。

というのも、刀剣男士は「歴史を守るのが使命」(ミュの場合)として生まれてくるわけですが、それを第一命題としたときに次点に来るものはなんだろう?とずっと考えていたのです。
あくまでもわたしの解釈ですが、刀剣男士はヒトの肉体と心を得た時点で、我々と同じように様々なことを感じたり、欲望(ここでは広い意味で)を抱いたり、悩んだりすることもあるわけです。でも、刀剣男士は我々と違って「歴史を守るのが使命」という大きな生きる意味があります。その上で、それらはどのくらい自由なんだろう?と。

刀剣男士のユメと篭手切江

そのことにひとつの解答例をくれたのが、今回の「江 おん すていじ」の篭手切江でした。
一部で篭手切江は山姥切国広が写した(なんで!?)南総里見八犬伝を見つけ、これをみんなですていじにしよう!と提案します。
江は歌って踊れる付喪神、篭手切江はすていじに向けて日夜れっすんに励む努力家な刀剣男士です。
ここで話が戻るのですが、刀剣男士は「歴史を守るのが使命」で、戦うことが本分です。作中でもそのことは強調されていました。
篭手切江にとって、「すていじ」はごく個人的な夢であって、「使命」とは無関係のところに存在しています。使命と並行してその夢を叶えたい!と努力する篭手切江の姿が本当に嬉しかったんですよね。
なんのために生きているか(刀剣男士として何を成し遂げるべきか)という問いに対して、おそらく刀剣男士は「歴史を守るため」だと答えると思うんですね。
篭手切江はそれに加えて「夢」がある。(彼にとってそれが使命と比べてどのような位置付けかは具体的にはわかりませんが)
刀剣男士が歴史を守るために生み出された存在で、彼らが生きていく上でそれを遂行することは当たり前のことなのですが、「それ以外のなにか」があるということに救われる気持ちになるな~と今作を観て思いました。
刀剣男士がどう思っているかは刀剣男士ではないのできっと完全にわかることはできないのですが、「使命」って時に重荷に感じることもあるのではないかと思っていて。そこで、そうじゃないごく個人的な「やりたいこと」がある刀剣男士もいるよって提示してくれる篭手切江の存在が本当にありがたいなと思います。
夢は使命ではなく、自由ですから。ミュ審神者もおそらく今回は全然口出していないところを見るに、嬉しかったんじゃないでしょうか。(勝手な想像)
そしてこの刀剣男士がもつ使命と、二部の八犬士がもつ使命がリンクして効いてくるわけです。天才なのかな

皆戦うことが本分ですから、助っ人集めが難航するのも頷けます。篭手切江や江のみんなが決して本分そっちのけですていじの実現に取り組んでいるわけではないというところをしっかり描いていたところもとてもよかった。
それぞれが受けてくれそうと思うひとにおそらく声かけていたのが今までの関係性を感じてオタクは喜びました。それぞれが何用で断ったのか知りたいですね。本当に。

村雲江に託されたテーマ

今回本当に良かったのが村雲江!大好きです。
村雲江って、わたし個人の解釈だと「レッテルを貼られること」に苦しんでいるのかなと思っていて。
その人の本質ではなく評価(人につけられたレッテル)に振り回されている節があるのかな…と。それこそお腹が痛くなるくらいに。
だからこそ「勧善懲悪」の物語は「好きじゃない」と言うのが村雲江だったんだろうなと思います。因果は逆かもしれませんが。
二部の中で玉梓に対して「彼女は魔女と呼ばれたから魔女になったんだ」という趣旨のことを言いますが、今回はまさにこれがテーマだったのかなと思いました。村雲江もそう評価されたから自分はこうなんだというところから、この物語を通して解放の一歩を踏み出せるのか…もしれない。今後が楽しみになりました。

「どうして、俺なんかを」
「どうして?仲間だからだ」

江 おん すていじ より


これは里見八犬伝の中での台詞ですが、どうしても村雲江と五月雨江に重なってしまうところがあり、ニコイチのオタクは焼かれました。
また、村雲江って周りのことをよく見ていて本当に優しい子なんだなというのを存分に描いていただいてありがとうございます…。
一部で光世がみんなのところに来て”誘われ待ち”するところで、村雲江だけ光世の真意に気づくのとか大変よかったです。ちゃんと見てるんですよね。
コソ練相手に光世を選ぶところもよかった…。天下五剣だから、とか、江のめんばー以外だから、とかではなく、「ダンスがうまいから」なのがよかった。光世もそう言われたから素直(?)に教えてくれる動作に入れたんだと思います。もともと面倒見のよいひとなのできっと最終的には教えてくれていたとは思いますが。
これを影で見ていた五月雨江、嬉しかっただろうなあ…。
三部終わりの映像で、村雲江が「すていじ、できてよかったよ」と言って終わるのもよかったです。できてよかったのがよかった…。

苦しくも美しいのが生きること

わたしはミュ本丸の「歌とともに生まれ、歌とともに生きる刀剣男士」が大好きなので、一部で存分に観られて嬉しかったです。
彼らのそばにはいつも歌があるんだなあということが日常に垣間見えてよかったです。あのストンプのシーンとかすごくよかった…。

松井江と桑名江のくだりほんとによかったですよね。
関係性がよい…一緒に生まれた、兄弟のような、双子のような存在なのかなあと思います、お互いが。

「それを承知で生まれてきたんだから。」
「…そうだね。」

江 おん すていじ より

このやりとりで歌合のオタクは焼かれました。
刀剣男士がヒトの肉体を得て生きることが「呼び声に答えること」であることだということに歌合を見た時は震えたものですが…。
彼らが「何故我を呼んだ」と苦しみながらも呼び声に応えてくれたことがその後の作品全部に効いてるので毎回苦しいです勝手に。
生まれ、生きることは苦しみを抱えることです。この話は歌合でされたことで、刀の身であった時とは受ける苦しみはまったく別種のものだと思います。その上で、彼らは戦うために生き、力を貸してくれる。
静かの海のパライソ、東京心覚の任務で彼らはたくさんの苦しみを知ったし、自身でも味わったことだと思うのですが、それでも「それを承知で生まれてきたんだから」生きているというのが、こう…泣いちゃうんですよね。なんて強くて健気で美しいのか
桑名江の命に対する理解が静かで穏やかなのがとても好きなのですが、きっと普段からその考えを聞いているであろう松井江もわかっているんだろうなというのがよかったです。
彼らを呼んだ業を背負っている人間はもっと頑張って生きようと励まされます。いつも。
生きている以上、身体や心が受ける苦しみは常につきまとうものですが、もちろん生きるということはそれだけではありません。

「息が切れるのも 汗をかくのも 涙が込み上げるのも 心が動くのも なんて美しい」

江 おん すていじ より

五月雨江のこのセリフ聞いた時泣いちゃいました。
今作で本当に心動かされたところですが、五月雨江の世界の捉え方のなんと美しいことか…
まさに、「美しいと思う心が美しい」の文脈ですし、ミュージカル刀剣乱舞のこういう回収の仕方が大好きなんですよね…。
村雲江と五月雨江が一緒にいる意味って、きっとこういうことなんじゃないかなって思っちゃいました。はあ~~~ニコイチのオタクは焼かれました。何回焼かれているのか
あらゆることを美しいと言えるひとが隣にいたら、きっと世界は輝いているじゃないですか。はあ…

わたしは「生きること」賛歌の物語が大好きなので、大好きです江 おん すていじが…。

豊前江の影

正直なところ、わたしは豊前江のことがよくわからないです。わかりたい。今回すこーしだけわかった気が…する!
篭手切江と影の話をしている時に「見えるじゃねーか 影」って言ってたと思うんですけど、彼の特異性がなんとなくわかったような
刀剣男士の中には記憶がなかったりするひとがいますが、豊前江はそのように「欠けている」のではなく、そもそも「ない」んだなと…
豊前江は現存不明の刀剣で、存在証明が不確かな部分があると思うんです。しかも、「江とおばけは見たことがない」ときた。おそらく豊前江はそれを体現するために「速さ」を求めているんだろうなあ…と。存在証明の不確かさという虚(うろ)を受け入れて自分の一部として生きているんだろうと思います。
それってものすごくおそろしいことではないかと思うんですが。なぜなら存在証明をしているのが「自分自身」だけなので、自分が自分のことを信じられなくなったら・・・・・どうなんですか豊前江さん・・・。
影の反対に光があるから、その方向に走っていけばいいって簡単に言えるところが…彼の強さなんだと思います。もうそれが彼の生き様だと思う。
影の反対は光、光の反対は影。見る方向によって違うということが、二部の善とは?悪とは?の話に繋がっていくのも参りました!

二部

記憶が曖昧なので、所感のみ語らせていただきます。なんか…すごかったね…。
始まる前は、なぜ題材が里見八犬伝なんだろう?と思っていたのですが
「痣と玉があるから八犬士」だと、「誰かが決めたんだ、生き方を」のところで天を仰いでしまいました。
「歴史を守る使命」のために生きる刀剣男士とリンクする概念じゃん。またそういうことする!!!!
この「刀剣男士そのもの」の話と、今回の「善とか悪とか誰が決めるの?」って話をこ~んなにうまく汲み取った脚本を見せていただけるなんて。篭手切江脚本天才なのでは?

以下印象に残ったところ

「あの人を魔女と呼ぶ人がいたから、あの人は魔女になったんだ」
これもまた刀剣男士と繋がるところがありますね。刀剣男士にとって名はとても重要な意味をもちます。そう呼ぶ人がいたから、そう名付けられたから。何度も刀剣男士が語り直してきたことです。よね。
玉梓は魔女だったのか。魔女になってしまったのか。もう「そう」なってしまった後にそこについて言及しても因果は逆転しないのですが(それが呪いにつながるのですが…)
あさけのは彼女を魔女と呼ばないのだ…

「呪いの種を撒いたのはお前だ」
呪いってこういうことなんですよ!!!!元をたどればたしかに根源はある。でも呪いはウロボロスなので根源を突き止めたところで消えるわけではないんですよね。呪いの責任の所在って難しいです
呪いの種は撒かれたらおわりなのか、それとも、育てるひとがいて初めて呪いになるのか…

「お互い様だろ」
あの時、玉梓は、赤子を殺さなかったのか、殺せなかったのか。それは彼女にしかわかりませんが、そう言われた時にその彼女しか知らない感情を思い出したんだろうなと思うとなんかもう、たまらないです
多分、毛野だけは、この時少し通じ合ったんだと思います。このふたりの関係性すさまじいものがある。とてもわたしの手には負えないです。

「誰しもが呪いから解放されることは決してないのかもしれない」
「でも、断ち切ってあげたいって。そう思うよ。」

呪いからの解放ってなんなんだろうって考えた時に、きっと赦すこと・赦されることなのかなって思ったんですが、これを完全に成し遂げるのはとても難しいことなんだろうなと思います。
玉梓がどうしたら呪いから解放されるのか、八犬士がどうしたら呪いから解放されるのか、彼らが悪と戦いながら自分で向き合わないといけないんでしょうね。大変だよ…よくもまあ…こんなに刀剣男士が、江が演じるのにぴったりの題材を…
それでも断ち切ってあげたいって言った時、毛野の感情に村雲江の感情が乗っているようにしか思えなくて、グッときてしまいました。泣いた。

始まる前は、それぞれが八犬士になるのかとおもったら全然違ったし、始まって玉梓を倒す話しかと思ったら全然違いました。どんだけ引き出しあるんだろう。
勧善懲悪を結末にせず、いわゆる俺たちの戦いはこれからだ!という結末にしたのが、今回のテーマと合っていて大変よかったです。やっぱり天才なのかもしれん。

三部

毎度のことながらあまり記憶がないので箇条書きでメモしておきます。
ライブパートの記憶ってどうして保持できないんでしょうか。

・江がおそろいの衣装着てるのが嬉しすぎる
・江ソングにするっと混ざる光世と水心子良すぎた
・水心子と光世のデュエットが爆誕する日が来るとは思ってなかった。この曲めっちゃ好き。バチイケじゃん音源くれ〜〜〜
・篭手切江と松井江のデュエットの時の衣装好きすぎてどうにかなるかと思った。こんなに白いフリフリ似合うひといる!?いた
・MCは安心の東京心覚の系譜を感じました。全部見たかった…
・村雲江と五月雨江のデュエットはまああるだろうなと思ってた。思ってたのにいやこんなん聞いてない!!!!!になった。間奏の無音のところでダンスするのまじでなんだったんだろう。幻覚だった気がしてかなり自信なくなってきました。わたしに都合がよすぎる
・豊前江のソロは、なんかもう、いやそれはダメでしょ。をすべて集めてみました!って感じで、初めて見た時笑いが止まらなくなりました。人間の許容量を超えた。strangerじゃないんですよほんとに
・桑名江のソロ待ってました!!あまりにもかわいいので涙出ました。なんかもう世界の全てが愛おしかった
・いつもの太鼓の曲、もうYAMAHAしか覚えてないです。太鼓、和太鼓じゃなくてもよかったんだ…って衝撃がすごかった。これを予想できたひとはいないと思う。どこから出てきたんだろう、ほんとに…曲はめちゃめちゃよかったです、もちろん!

最後の刀剣乱舞前の映像最高〜でしたね!!
みんなバラバラの湯のみなの、普段使っているのをそのまま持ち寄った感じで、生活感を感じて最高になりました。ああやって普段から飲み会してるんだろうな
最後鯉でオチつけたのもよかったです。
めでたしめでたし!!!!って気持ちになってほんとうにいい気分で帰れました。ハンドベルもびっくりした。

おわりに

まとまりのない記事になりましたがここまで読んでいただきありがとうございました。
ミュージカル刀剣乱舞からもらっているものがたくさんあるのですが、いつも言葉にするのが難しい。もらいすぎてるからだと思います。
やっと書けてよかった。
千秋楽まで無事走り抜けられるよう祈っています。


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