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写真展「border」徹底ガイドvol.3 / border エーゲ海を渡るボート

borderのステートメントを読み終えて顔を上げると、そこには額装された大きな写真が1枚展示されている。

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#1 Lesvos island,Greece /2015

霧に霞む山々の稜線が微かに見える広大な海。その真ん中に、何か黒いものが浮かんでいる。タイトルは「Lesvos island, Greece/2015」。

あるいはニュースに詳しい人であれば、レスボス島と聞いてピンとくるかもしれない。エーゲ海の東端、ギリシアというよりはトルコの海岸線に近いこの島は、ヨーロッパを目指すシリア難民が大勢やってきたことで知られている。

写真に中央に見えるものは、戦火を逃れ、命を危機にさらしながら逃げ惑ってきたシリアやアフガニスタンの難民たちを乗せたボートなのだ。
奥に見えているのはトルコ、写真を撮っている場所はギリシア。その「border」を越えることは、ヨーロッパに入ること。国を追われてきた人々にとって、生命と財産の全てを賭けた旅。コンディションが良ければ美しいエーゲ海だが、旅の途中で死亡するケースも少なくない。

一方彼らが目指すレスボス島はバカンスの島であり、難民たちが上陸する海岸のすぐそばには美しいリゾートが広がっている。

地図上に引かれた一本の線は、人間の運命をどう変えるのか。

この言葉を表現する一枚として、この写真を最初に提示することとした。






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