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でぃあぼろ

 昨日の夕暮れ、自転車通勤の帰り道、海を左手に眺めながら、うみたまごを過ぎて、田ノ浦ビーチに入ると、遊歩道に沿う芝生の上で、なにやら気になるパフォーマーが視界に飛び込んで来た。若者が一人で、糸でつながった棒を上下させながら、撓んだ糸の真ん中でコマのようなものを、くるくると自由自在に操っている。大道芸でよく見るやつじゃないか。
 速度を落とす、立ち止まって声を掛けるか逡巡するも、好奇心が背中を押す。まだ20代前半くらいのなかなかイケメン君だ。自転車から降りて声をかける。こんにちは、それはなんていうのと聞くと、中国コマともディアボロとも言います。上手いなぁ。まだ初めて3日目なんです。FB用に写メ撮っていいかい。どうぞ、じゃあちょっとコマを放り投げますねと若者。パチリ、もう一回、パチリ。しばらく練習風景を見て、山のように聞きたいことを飲み込んで、若者にエールを送り、その場を後にした。
 さて、帰りの道々、悶々とした頭で考えてみた。彼は何故、ディアボロを選んだのか。あれが今のトレンドなのか。ギターとかトランペットとか路上でやるのはYoutubeの世界だけなのか、スケボーとかリフティングとかは10代か、ジャグリングではなくてけん玉でもなくて、なぜディアボロになったのか。モテたいからという不純な動機は私のこと、モテたいばかりにギターを弾いて抱えて寝て、飽きて売り払ってしまった私とは違う。彼は何もしなくても十分にモテそうだ。そして、来る日も来る日も、雨の日、風の日は練習しないか、それでどこを目指すのだろうか。到達点はどこなんだろう。答えの見つからないパフォーマンスに呆然としながら帰り道を疾走する。今度、会うことがあっても、君はなぜディアボロを選んだのとは聞けんやろな。

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