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【椎葉ラボインタビュー】日本三大都市・名古屋に日本三大秘境・椎葉村の文化を!? 椎葉美耶子さん

椎葉村で新たなローカルビジネスに取り組むチャレンジャーを応援する『チャレンジ・応援!椎葉ラボ』では、椎葉村をフィールドに自分でプロジェクトを立ち上げて楽しみながら活動する村内外の方を『プロジェクトオーナー』としてサポートしています。

今回は、令和5年度からプロジェクトオーナーとして活動している椎葉美耶子さんを取材しました。


プロフィール

名前:椎葉 美耶子(しいば みやこ)
出身地:岐阜県 可児(かに)市
居住地:愛知県 名古屋市
プロジェクト:椎葉のグルメを通して村の魅力を知ろう!

椎葉美耶子さん(以下、美耶子さん)は、岐阜県の可児(かに)市出身。お父さんが椎葉村大河内地区の出身であり、お名前の通り椎葉村にルーツを持っています。椎葉のような山々した場所に住みたいというお父さんの気持ちがあったからか、可児市も山に囲まれている環境だったようです。山あいの新興住宅地に住んでいたため、様々な出身の人が集まった場所で異文化交流のような環境だったといいます。

地域活動を大切にするお父さんは、神戸の震災の際は炊き出しで焼きそばを作りに行ったり、地域の保護者の会や父の会にも積極的に参加。父の影響を受け地域マインドを埋め込まれた美耶子さんは、大学生になると名古屋の商店街で町づくりのボランティア活動をするようになりました。 

美耶子さん
そういうの(地域活動)はやるもんだっていうのを、父に埋め込まれました。
子どもの頃は何も考えていなかったけど、大人になって、資本主義社会の中で何をするにもお金がかかったり、誰かと助け合うにもギスギスしたり。どこに行っても自分が傷つけられなく活動できる場所はないのかなと思っていた時に、商店街の活動にハマって。なんかこのおじちゃんたちいいなと思って吸い込まれたところから20年くらい関わっています。後から気づいたことだけど、おじちゃんたちが利他の精神でやっているのが良かったのかなと。

学生と共に行う持続可能なまちづくり活動

新卒でシステム系の会社へ就職しつつ週2ペースのボランティア活動は継続し、2012年には『合同会社まちプロデュース』を設立。動画制作やHP制作に取り組む傍ら、地域活動を行ってきました。

長年関わってきた地域活動への関心は尽きることなく、2017年には名古屋市立大学の大学院へ社会人入学。社会学の観点から地域活動のことを学び直し、修士論文では自身のルーツである椎葉村を研究対象にしました
さらに2024年の4月からは名古屋大学の博士後期課程に進学予定で、文化人類学や民俗学といった学問を通して椎葉村への理解を深めていきたいそうです。

もっと早く来たかった!椎葉で感じた親近感

お父さんの出身地とはいえ、椎葉村にはほとんど行ったことがなかったという美耶子さん。椎葉村との関わりが増えたのは2018年頃からだそうです。自身の修士論文のテーマである椎葉村について知るため、そして当時の椎葉村役場が主催していた関係人口創出事業『Local LAB Shiiba』の参加者として、椎葉村との関係を深めていきました。

親戚以外の椎葉村民とも多く関わるようになった当時の心境を、次のようにふりかえります。

美耶子さん
「なんでこんな良いところが地元なのに、もっと早く連れてこなかったんだ!」
という怒りが父に湧きました(笑)怒りとしてはぶつけませんけど。一人っ子で核家族という自分の家庭を閉鎖的に感じてたので、よけいにそう思ったのかもしれません。

椎葉村のご近所付き合いや、家族付き合いの雰囲気が心地よく、いい人が多く温かい印象だったといいます。

美耶子さんが作成しYou Tubeで公開している動画では、当時の椎葉村滞在の楽しそうな様子をみることができます。

椎葉村での滞在を通して受けた影響について伺うと、

美耶子さん
自分が活動している名古屋では商店街の活動について他人から「よくやってるね」と言われてきたけれど、椎葉村ではみんな百姓的に色々なことをやっているのが当たり前。椎葉に来て自分が埋もれちゃいました。


とのこと。表現を変えると、それだけ椎葉村に親近感を抱いたということなのかもしれません。

美耶子さん
名古屋では、お金を介していると寂しいなと思う時があって。自分が心地よく活動できるところを探していったら、物々交換をしている時が楽しいと思った。これは都市だとある程度の関係性が築かれてないとできないことだけど、椎葉では当たり前に行われていますよね。
椎葉村の人たちは、経済から離れたコミュニケーションスタイルが根強く残っているように思います。

名古屋でのまちづくり活動を通して関わるようになった企業から子どもの居場所づくりのイベント運営を依頼された際、美耶子さんはお父さんと自分の子どもを連れて、けん玉やこまなど「ザ・昭和」の遊びをする会を開きました。その様子を見た企業の方から、「(美耶子さんのところは)脈々とこういう風なんだね」と驚かれたといいます。

生きる知恵が詰まった乾物で、椎葉のエッセンスを伝える

人のあたたかさを感じづらい都会の名古屋で、椎葉村の文化や雰囲気を再現することに意義を感じ始めた美耶子さん。遊びの次はグルメからそういうものを知ってもらうきっかけにと、今回の椎葉ラボでのプロジェクトが始まりました。


美耶子さん

椎葉村の助け合いみたいな部分を、もっと必要としてる人が都会にはいるんじゃないかと。「こんな生き方、あるんだ」ってなると思うんですよ。でもそればジブリの映画を観るだけじゃ分からなくて、時間の使い方から身体の使い方から、近くで体現してる人がいないと真似しようもないというか。
そのための一つとして、椎葉の豊かな乾物、保存食を通してそういうことを伝えたいなと。切り口はなんでもよくて、今回はプロジェクトとして扱いやすい乾物をメインに使ってみたという感じです。

椎葉の乾物を使ってプロジェクトを進めることにした美耶子さん。初年度ということもあり、3つの方向性から試行錯誤を重ねていきました。

取り組み1 椎葉村の物産販売会

1つ目の取り組みとして、子どもの居場所づくりのイベントでも関わった企業のオフィス内のロビーにて椎葉村の物産販売会を実施。事前に社員の方が社内で周知してくれたこともあり、昼休みだけの短時間の開催にも関わらず数万円が売れていきました。
社員の方からは、特に干し椎茸や干しタケノコといった乾物が好評だったそう。椎葉村ならではのスローフードを名古屋の人々に楽しんでもらうきっかけをつくることができました。

「みんなわからないものを見るような様子だったけど、それはつまり椎葉の文化を新しいものとして伝えることができた、ということかな」と美耶子さんは振り返ります。

お父さんと一緒に物産販売をする美耶子さん


取り組み2 お茶の試飲会

2つ目の取り組みは、椎葉村の山で採れたお茶を使ったお茶会。クロモジや釜炒り茶など、椎葉ならではの飲み物が参加者の交流を促進しました。特にクロモジが好評で、
「木の枝をそのまま煮出すというのがワイルドで楽しい」
「部屋中が良い香りになる。アロマにも良さそう」
「クロモジの枝をマドラーにすれば、飲食店も使いやすそう」
といった意見があったそうです。

クロモジの枝を煮出してお茶を淹れる

取り組み3 原木椎茸を使ったキーマカレーの販売

そして3つ目の取り組みは、椎葉村の原木椎茸を使用したキーマカレーの販売。美耶子さんが長年関わっている桜山商店街の『桜山カレーまつり』にて、地元居酒屋『ひねもすのたり』とのコラボメニューで原木椎茸キーマカレーを提供しました。この取り組みをきっかけに、他の飲食店にもメニューの提案をして原木椎茸の利用促進を図っていきたいそうです。

画像提供:ひねもすのたり

◯名古屋市瑞穂区の居酒屋『ひねもすのたり』 Instagramはこちら

以上3つの取り組みを通して、名古屋に椎葉村の文化を導入することにチャレンジした美耶子さん。
今後はメディアの活用や商品ラインナップの充実を図りながら、特に手応えのあった物産販売を中心に「ポップアップのアンテナショップ」という形で続けていきたいと、椎葉ラボをきっかけに美耶子さんの夢と挑戦はまだまだ続いていきそうです。

名古屋の人に「新しい五感」を届けることで椎葉村の魅力を深く知ってもらい、物産販売の売り上げアップにも繋げていくことが今後の展望です。

まとめ

三大都市・名古屋と日本三大秘境・椎葉村。真逆ともいえる両者でのコミュニティのあり方の違いに「これはなんなんだろう」という純粋な疑問を持ち、実践を通して模索してきた美耶子さん。

まさに「ラボ」的な探究心で、まわりを巻き込みながら自身のルーツを深掘りしていく美耶子さんのプロジェクトに、ひょっとすると椎葉村の将来へのヒントが隠されているかもしれません。


取材:内村光希
文:鈴木花

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