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男みたいな女の話

90年代初期生まれの私は、小さい頃から「男の子みたい」「女の子らしい」と、それこそ街で通りすがりののマダムに言われてしまう時代が幼少期だった。

今ならTwitterが炎上するのかもしれないけど、当時は母も苦笑いで「あ、女の子なんですー」と帽子を取ってくれたりしていた。(キャップしか被らないファッションセンスをしていた。)

性の多様性なんて言葉があって、現代は「男性になりたい女性」「女性になりたい男性」「同性が好きな人」「異性が好きな人」「なりたい訳じゃないけど異性のような格好をするジェンダーレス」みたいに、
色んな生き方やオシャレや恋愛が受け入れられていて、それは少し羨ましい。

そんな世の中でも、やはり「女性なのに珍しい仕事ですね」「女性なのに理系なんですね」と言われる。それも、社会的地位は高く、ハラスメントやコンプライアンスを人に指導するような立場の人から言われることもある。

その理由は多分、こうだ。

私はいくら男らしい、男前と言われたって、花嫁にもなりたいし、髪は伸ばしているし、ハイヒールも好きな女である。心も女だ。恋愛対象は男だ。

つまり、世間から見た私は「普通の女性」なのだ。「男性になりたい女性」や「男性の格好をしてみたい女性」や「女性を好きな女性」じゃないため、性別を話題にあげることに対しての気遣いは不要と思われている。

私は生まれてこの方ずーっと「普通の女性」のつもりで、初恋の相手は男子だし、フリフリは苦手にしてもお気に入りの洋服は父のロンドン土産のジャンパースカートだった。エナメルの靴に憧れてピアノの発表会にかこつけて買ってもらったこともある。

でも私がやる遊びといえば、近所の男の子とザリガニをつったり、ベランダに迷い込んだカブトムシを飼ったり、親にもう1匹買ってもらって産まれた幼虫を観察したり、ダンゴムシを集めていたり、趣味が野球観戦だったり、帽子はキャップを沢山持っていたり、リカちゃん人形を放り出して恐竜フィギュアとパズルで遊んだり、友達と裏山に秘密基地を作ったり、野山を駆け回った時代のせいで膝小僧に未だに傷跡がいくつかあったり、研究室対抗ソフトボールに駆り出されたり、昔とったなんやらで未経験の男子よりうまかったため活躍を求められたり、ゴルフの打ちっぱなしでストレス解消したり、

そういうのは全て身も心も女で夢はウエディングと色打掛着ること、ついでに服装はスカート多めの私の行動であり趣味嗜好なんだけど、
なぜか「男の子みたいね」と言われ続け、料理を作ろうなら「意外」などと、なぜか男らしく?(料理のうまい男性も多いですが)あることまで求められている気がする人生だ。その割に男社会な業界に就職すると、珍しいだの○○女子だの、こちらも褒められてるんだか貶されてるんだか広告塔にされてるんだか分からない扱いを受ける。

別に私は不快に思わない、そういえば男の子の方が趣味が合うのかなあ程度なんだけど、この先、自分の子供や繊細な女の子や、逆の立場の男の子がこうやって言われていくのは何となく悲しい。

それに、そろそろ性別にらしいをつけて褒めてるのか貶してるのか分からないコメントをするのは、発言者の方がモラルを問われる時代になりそうだ。

何度目かになるが、私は決して怒っていない。
統計上女性がその職業に着くこと、その趣味を持つことは珍しいと言える。そして、珍しいことは、人の興味関心を引くこともよくわかる。
それに珍しいは褒め言葉ともけなす言葉とも、言えないと思う。
だから、そんなこと言ったらダメですよー、などとは言えないと思う。

ただ、現在の統計とか男女比率は置いておいて、性別を理由に何かを選んでいるような、それが多数派と言われ無難な社会に未来はあるのだろうか。

私のように職業についてから言われるような場合はまだいい、そしてそれへ自分がたまたま女子校にいたからだ、全員が女子の味方で、その自立と活躍を願っている少し特殊な環境にいたからだ。

理系に行きたいと言っただけ、この学部に行きたいと言っただけ、この会社を受ける、この職業につくと言っただけで「女の子なのに」と言われてしまう社会を私は恐れているし、それは本人を傷つけるだけじゃなく、その業界に、男女のべつは置いておいても、志を持った人を1人、非常にしょうもない理由で獲得しそびれたということになっていく。

1人やふたりならいいけど。

毎年毎年、それはそれは大勢の優秀な女子学生が何となく女性らしいと言われる職種に流れているとしたら、どれほどの損失だろう。

人が気軽に言う言葉は簡単に人を傷つける。傷つけなくても立ち止まらせ、考えさせる。その言葉にいちいち責任を取れとは言わないけど、どうか、人の人生に関わる仕事や進路や、そういったものの話においては、相手が「普通の」人に見えようがなんだろうが、性別や年齢やその他本人がどうしようもないことを理由にとやかく言うのはやめて欲しい。

最後に、女性には無理の最たる(表向きの)理由は体力だろう、心配ない、私は毎年熱を出し過保護に育てられたが、今や災害時の30時間連続勤務でもケロッとしている。仮眠はデスク、徹夜明けで運転、豪雨の中夜中の外で立ちっぱなし、何でも来いである。
ここまでしろとは言わないが、工夫と自己管理である程度は男性と同じように働ける、それに、女性が潰れるほどキツイ仕事は、はっきり言って男性にもキツイ。事実、同じことをして私より先にしんどくなった男性は、大学のフィールドワークから現職に至るまで、何人も見てきた。

優秀な志ある女性を、不用意な一言でその業界から遠ざけることのないように、○○女子だのかつぎあげる前に、大人がそれぞれ言動を見直す必要があると思います。

女性なのに男業界で優秀なわけないだろうと思ったそこのあなたは、私が優秀だと思うかつ男社会で男を差し置いて(あえて言っています)活躍している女性を連れて説明に伺いますよ笑 目が笑ってないよ。

もちろんこれは逆バージョンにも言える話だ。男女を始め、のんびりとせっかちなど、多様な特性で一緒に仕事をして、苦手な部分は補い合って、そういう業界が、若者から見ても魅力的で選ばれるところだと思う。

珍獣扱いはどうか、私の代で終わりますように。


#アラサーOL #性別 #女らしさ #男らしさ