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がらんとした甲子園を見て思うこと

私は野球観戦が大好きだ。

その中でも、高校野球が大好きだ。

それは、2001年まで遡る。

その前にあの記念すべき2000年、私は小学3年生だった。
その頃、3軒ほど隣に男の子三人兄弟の家族が引っ越してきた。
1番上のお兄さんは見かけなかったけど、末っ子の弟くんが当時1年生で、家が近所の子が集団登校の集合場所まで連れていくという風習に則り、僭越ながら私が迎えに行っていた。

兄弟のいない私にはよく分からないが、末っ子の特性なのか本人の性格なのか、弟くんは非常に私になつき、「もう今日から一人で行ってね」という日が来ても、休みに子ども会で出かける時でも、必ず玄関の階段に腰かけて私を待ち伏せており、私が通り掛かるとちょこちょこ着いてきた。

そんな甘えた弟くんのお兄ちゃんを見かけない理由を、私は深く考えたことがなかったのだが、何のことは無い、某有名私立高校の野球部で寮生活を送っていたのだ。

ある日帰っていたらしい日に、いつものように弟くんを従えにきた近所のガキンチョ私に、しゃがんで目を合わせて挨拶をしてくれたのを覚えている。

私の知る限りなかなかそんなよその大人はいなかった、長話や説教でもないのに、わざわざしゃがむ人などなかなかいない。

そんな、私の中での「たまにいる優しいお兄ちゃん」の概念を覆したのが、2001年、小4になっていた私への母の一言だった、

「○○くんのお兄ちゃん、甲子園に出るんだって」

当時私は甲子園どころか、野球のこともろくに知らなかった。
夏休みに大好きな「天才てれびくん」が突然休止で野球中継をやることがあって(18時以降まで延長した日だったんだろうなぁ)、むしろ嫌いだった。

でも、親が楽しそうにテレビを見るから仕方なく付き合った。ルールが分からない、なにせ三振と四球とヒットの違いもよく知らないので、全員の行動が意味不明だった。

サッカーやバレーボールはわかりやすい。ゴールにボールが入ったら1点、相手コートにボールを落とせば1点、ただそのためにみんなが行動している。
反則が絡めば難しいけど、大筋は何をどう応援したらいいのか何となくわかる。

近所の男の子がテレビに映っているのを楽しむミーハー親に代わって、混乱する私にひとつひとつのルールを教えてくれたのは祖母だった。きけば、産まれる前に亡くなった祖父は大の野球好きだったらしく、家に南海ホークス時代の野村克也さんのサインがある。

と、祖父に仕込まれた野球の知識を祖母からさずけられたが、祖母もなんとなく1試合見れる知識しかもちあわせていなかった。あとは毎日高校野球を見ていたら覚えた。

野球の作戦は奥深い、ランナーの配置によって次の守備行動も変わるし、たとえばサードにランナーがいる時の攻撃も、単なるヒッティングからスクイズ、重盗、大きな外野フライ、足が早ければとにかくゴロを打つなど、色んな形がある。

その毎試合さっき覚えたのとは違う作戦、戦い方に私は夢中になった。チアリーダーと吹奏楽の応援も、一球にどよめく観衆も、真っ青な空に映えるバックスクリーンも、甲子園の全てがキラキラしていた。

その時地元を代表して出ていた学校の、5番サードがそのお兄ちゃんだった。

あれからもう19年、私は野球ファンだが、「5番サード」が1番カッコイイと思っている。次点は「1番センター」である。

そういえば、タイムリーを打った翌日は新聞に記事が出ていたりして、あれから私は新聞のテレビ欄のみ読む子どもから、スポーツ欄も読む子どもにランクアップした。

国語が得意だったのもお兄ちゃんのおかげかもしれない。

とにかく、家族近所みんなで応援したあの夏が楽しくて、甲子園が眩しくて、そのままプロ野球も見るようになった。

毎年甲子園中継が始まる前に夏休みの宿題を終わらせ、就職してからは準々決勝(一日四試合!)の日に夏休みをとる。

高校生になると、同世代の活躍にすごく力を貰うようになった。受験生の時も時々見ていた、みんなが諦めるような点差を逆転したり、延長を戦い抜く姿にめちゃくちゃ励まされた。

今は10歳も歳下の選手たちだけど、やっぱり私はどこか憧れのような気持ちで見てしまう。自分には出来ないことをやっているからか、やはりあの甲子園の舞台に上がるだけでキラキラしている。

今年の夏も、私は甲子園の試合を見ている。

今日は履正社高校で、私が応援していた元阪神タイガースの関本選手の息子さんも試合に出ている。

こういうのも高校野球の魅力だ。甲子園で応援していた選手が、その後プロ野球の舞台で活躍したり、プロ野球選手として知っている人の関係者だったり。自分の好きなプロ野球選手の母校と言うだけでも、なんとも贔屓してしまう。

ちなみに、私と同じ世代は、明豊今宮選手(現ホークス)、横浜筒香選手(現レイズ)、花巻東菊池選手(現マリナーズ)、智弁和歌山岡田選手(現ドラゴンズ)など。

みんな今やチームの中心、日本代表で、私もますます頑張らないといけない気がする。

と、勝手に仲間意識を持ってしまうくらい、高校野球中継で1試合手に汗握って応援すると、気持ちが入ってしまうのだ。

これはなかなか、プロの試合ではない。

高校最後、負けたら終わり、真夏の炎天下、自分も人生の岐路…色んなことが重なったゆえだ。

今年は大声援はない。

でもバットやボールが立てる音、選手たちの声、そして私か実は好きなあの男性アナウンサーの独特の実況。

今年も高校野球は楽しいし、私たちに力をくれる。

こんなに素敵な、一生楽しむであろう趣味をくれた、あの時近所だったお兄ちゃんには本当に感謝している。

そして未だに1番の、「心に残ったあの球児」←雑誌甲子園の星企画
なのである。

お出かけできない皆様、お子さんが暇しちゃった方、ぜひ甲子園中継を見てみませんか。


#高校野球 #甲子園 #野球好き