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歯科医療現場での手袋使用の歴史

わたしもなんだかんだで30年歯科医療界前線で働いてるので、今日は日本の歯科医療現場での手袋の話を。

わたしが歯科医をはじめた1990年代はじめは、実は歯科医はあまり手袋をしていなかった。
大学の口腔外科などでは、とくに手術現場などでの「清潔不潔領域」の区別を含め、徹底的な手洗いや手袋の正しい着用法まで、がっつりとしぼられたものだが、実際に一般開業医の現場に出てみると、そんな時間も設備もなかった。

実際、わたしが歯医者になりたてのころは、ほとんどの先輩歯科医たちは日常の診療では手袋をしていなかった。
※地域差などもあるかもしれないが。

その一つの理由は、おそらく日本的な考え方に基づくもの。

要するに、患者さんに接するときに手袋をはめているのは、まるで汚いものに接するようで、失礼である。

いやいや、信じられないでしょう?今の考え方からすると!!でもそうだった。

歯科現場では細かい作業が求められたし、使う器具も小さいし、当時のゴム手袋はすべりやすかったりして、作業がしにくい、というのももちろん大きな理由。それから、使い捨てであるからコスト面も馬鹿にならない。

だが、わたしが仕事を始めたころはエイズという名前でHIVウィルスが騒がれだしたことだし、わたしとしては手袋をしたかった。
それで、二年目から勤務しだした比較的大きい病院で、手袋を普通の診療時からしたい(そこでは、外科処置のときのみ手袋していた)と申し出た。その要求はうけいれられたので、それ以来率先して手袋をするようにした。
他のスタッフもだんだんと手袋を日常診療からつけるようになった。

歯科治療は細かい作業だから、指先感覚が大事なので、そこに手袋という皮一枚はさむのを嫌って使用したがらないドクターも当時はいたと思うが、今では必須アイテムである。コロナの流行を境に、一般にも流通している。

脱線するが、コロナ流行時は一般の方たちがマスクを買いあさり、ほんとうに医療従事者はマスク確保に苦労した。イタリアのニュースを見ていると、みんな自己防衛でゴム手袋までしていた。日本でもみんな手袋にまで手を出したらさらに医療業界で手袋も手に入らなくなる!と危惧したが、日本ではそこまで一般の方はゴム手袋にまで手を出さなかったからよかった。まあ、あのころはなんでも品薄で本当に大変だったけれど。

ところで、きのうかおととい、テレビで北海道のガソリンスタンドの従業員のお兄さんが、「お客さまに温かい気持ちで接したいので手袋はしません」と話していた。ちなみに北海道は、雪がすごいです、という内容での報道中の一場面。
いやいや、そんなに寒いところで、手袋はしてくださいよ!お兄さん、体が資本よ!とわたしは思ったが。

日本にはやはり、心をこめたおもてなしに手袋一枚が影響を及ぼす・・・のかもしれない。

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