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240808

 これまでの人生経験から、自分には芯のようなものは実際には何もなく、ただ横並びに並んだ相手に必死にナメられないように、自分を糊塗して生きてきたのではないかという気がずっとしている。自分は劣等コンプレックスに苦しめられ、名声や承認を得るためだけに生きてきただけではないかと。  思えば、中学・高校生の頃から地続きでそうだった。当時から、安部公房や大江健三郎の文体をパクった小説を書いては、そうした偉大な作家と自分とを同一化して(いわゆる「模倣」である)、自分が何か大人物になったか

    • 240801

       院生になり、1年と4ヶ月が経った。いま考えていることについて、とりあえず書く。  大学院生に身分が変わってから、第一に、自分の思考様式に大きな変化がもたらされた。端的には、批評的な考え方から研究的な考え方への変化であると言える。  そもそも批評と研究とでは、いくつかの研究分野では部分的に似ているところはあれ、それぞれの志向性がまったく違っている。研究の場合は、(まあ指導教員の受け売りだが)関連文献を網羅的に点検し、その全体図から欠けたピースを探す作業に近い。ところが、批

      • 生=運転=性愛=社会=返済=生…──モデスト・マウス初期詞論

         本記事の目的は、モデスト・マウス初期の歌詞の構造、および、その歌詞の周囲を経巡っているような極をとらえることである。そして、そのような構造、あるいは極が、まるで私たちとは無縁ではないことをも、明らかになるはずである。  ここで言う「初期」とは、初のメジャーリリースとなった《The Moon & Antarctica》(2000)以前の時期、つまり、1996年3月26日発売のシングル《Broke》に始まり、1998年5月5日発売のシングル《Never Ending Math

        • ナンバーガール◎感傷の渦、現前する青春

          (本稿は、大阪大学感傷マゾ研究会発行『青春ヘラ』第2号掲載の同名の論稿に加筆・修正を加えたものです) 0 福岡県博多市で結成されたロックバンド=ナンバーガールは一九九九年にメジャーデビューし、そのわずか三年後の二〇〇二年に解散した(以下バンドに関する基本情報は省略)。活動期間が短いながらもそのエポックメイキングな音楽性は現在にいたるまで脈々と多くのバンドに受け継がれており、間違いなく国内のシーンを塗り替えたバンドの一つである。金切り声のようなギターの鳴り、がなり立てるメガネ