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今年1番面白かった本(4/14時点)

湖南と湖西の境目はどこだろうか。

大津市の場合は北湖に面する旧堅田町以北は明確に湖西に含まれ、瀬田川以西でも琵琶湖線沿線はほぼ湖南と呼ばれる他、湖西線の沿線は湖西と湖南との境界があいまいになっている。

湖南 - Wikipedia

どうやらWikipediaでも曖昧らしい。だが、僕の生まれ育った場所が湖南と呼べることは分かった。つまり僕と成瀬はシンクロ率80%くらいと言っても過言ではない。これは嬉しい。


『成瀬は天下を取りに行く』はすごい本だ。ものすごく滋賀だし、ものすごく大津市って感じの本だ。こんなにも地域色が強いのに本屋大賞を取ったのだから、滋賀に来たことがない人からしても面白いと感じる作品だったのだ。そこがすごい。

これまで県外の人が「膳所」という漢字を読めるかどうかは膳所高校の知名度に左右されていた気がする。県内で1番賢い高校ゆえに全国高等学校クイズ選手権なんかにも出ているので、そこで読み方を覚える事もあるだろう。

だがこれからは「ゼゼカラ」の時代である。なんせ「ゼゼカラ」来た2人が「ゼゼカラ」世界に行くと作中で分かりやすく連呼してくれている。これなら読者が膳所を忘れることもないだろう。膳所は全国的な認知度を手にしたのだ。


『成瀬は天下を取りに行く』はすごい本だ。読んでいる最中は「うわ〜おもれ〜!!」となるし、読み終わると「うわ〜おもろかった〜!!」て感じの本だ。そしてなぜここまで面白かったのか、読了から1日経った今分かった気がする。むちゃくちゃ読みやすかったのだ。

もちろん滋賀ネタがモリモリだった事、成瀬がすごく魅力的だった事、その他もろもろのおかげでふふっと笑える場面が幾度となくあった。読みながら声が漏れるなんて滅多に無いので自分でも驚いた。

ただ何よりも、固い文章が得意ではない僕にとってこの本はものすごく優しかった。読んでいてまるで突っかからない。あれなんだっけとかなんやこれとならないのでさーーーっと読めてしまう。読むのが遅い僕が3時間で読めたのだ。人によっては1時間も有り得る。

賢い人ほど簡単な言葉を使うと聞いた事があるが、この作家はまさしくそれだと思った。ただ単に難解な言い回しをやめて聞き馴染みのある単語を並べれば良いというものではない。多分、言葉の組み合わせが凄まじく上手いのだ。これがデビュー作らしいので、これからどんな路線の本を出していくのかすごく興味がある。

まあ僕が滋賀出身だからここまで楽しめた節はある。絶対にある。だって県外の人にとっては西武大津店、ビアンカ、うみのこ、におの浜、膳所高校、これら全てが小説上の名前でしか無いからだ。それに比べてこちらは友達の妹の日記を読ませてもらったくらいの感覚だ。逆に滋賀以外で生まれ育った世界線でこの本を読んでみたいまである。何も短い小説を1つ読み終わったくらいでここまで熱くなる事は無かったかもしれない。初めての経験をさせてくれたので感謝したい。


もともと僕は滋賀が好きだし、県外生まれの友達にどれだけ馬鹿にされても気にならない。まあそれがガチの蔑みではなくいじりの場合、という条件付きではある。自分の生まれ育った場所に対して何かしら関心を向けてくれるのは嬉しい事だ。だから僕も誰かの生まれ育った場所の話を聞くのが好きだしよくそうしている。

滋賀はなんとも住みやすい。京都がこんなにも身近にあり、人口も丁度よく、京都がこんなにも身近にある。そしてなにより琵琶湖がある。日本には河口湖とか霞ヶ浦湖なんかもあるが、県の中心にこの規模の湖があるというのは多分この滋賀県だけだ。本籍地は京都、大阪生まれ滋賀育ち兵庫在住の関西四股男が言うのもなんだが、滋賀は本当に居心地が良い。そんな気持ちを改めて思い起こさせてくれたこの本にはそういう意味でも感謝したい。


今回はいつもの「です/ます」調をやめて「だ/である」調にしてみた。これも当然、成瀬の影響である。書いてみて分かったのは「だ/である調(常体)はなんか恥ずかしい」という事だ。読み手としてなら何も感じないのだが、書き手になった途端どこか偉そうに感じる。

前の記事はその大部分を一昨日書いていたので多少ズルな気もするが、1日に二本も投稿するのはすごく久しぶりだ。それくらい一昨日も今日もケーキ屋のバイトが暇だったのだ。日本人もっとケーキ買えよ!!!

続編の『成瀬は信じた道を行く』も楽しみだ。


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