おまけ号、全編無料だよ!「HTLってなんだ!?」#049
読者の方からご質問いただいたので、お答えしておきたいと思います。
いや本当にすみません。僕が下記のようにHTLという言葉を使ったせいです。
というわけで、今回は僕のうっかりをフォローする解説記事なので、最後まで無料です。
日本聴覚医学会の用語集では、HTL(hearing threshold level)という言葉は、次のように定義されています。
この日本語って少し難しいですよね。そもそも聴覚閾値の定義って何なんだ?ということですが、聴覚閾値の定義は下記のように書かれています。
中川さんのコラムのとおりですが、聴覚閾値の定義の中に「音圧レベル」という言葉が出てきます。音圧レベルの英語は「 Sound Pressure Level」ですから、聴覚閾値と言ったら単位はdBSPLということで間違いないようです。
さらに聴覚閾値の備考欄を読みすすめると、色々書いてありますが、ポイントは「測定条件を明記」というところ。どうやら聴覚閾値という言葉の方が、厳密で具体的なようです。
これらを踏まえて、聴覚閾値レベル(HTL)という言葉を読み替えると、次のようになります。()内は大塚の加筆部分です。
HTLという言葉は、文章的な定義がされていても、数値的な定義が多様で、ヘッドホンで純音測定したときのHTL、インサートイヤホンで純音測定したときのHTLと、音場で測定したときのHTLは、どれもHTLだけど、HTLとだけ言われただけじゃ何を指しているか分からない。
という問題を孕んでいるようです。
余談ですが、昔々、僕が認定補聴器技能者を取った頃、僕の世代ではHTLに最小可聴閾値という訳語が当てられていたと思います。多分。もしかしたら覚え間違えただけかも知れませんけど。
その時はdBSPLやdBHLなどの単位には言及していなかったと思うので、その時の文脈に応じて、ヘッドホンによるPTAだろうと、補聴器装用の音場だろうと、非装用の音場だろうと使える便利な言葉だと思ってしまいました。
今、改めて考えると便利な言葉というのは、裏を返せば定義が曖昧な言葉でもあります。便利そうな言葉は、専門家にとってはいい加減な言葉だったりするのだな、と今回のことは勉強になりました。
僕たち補聴器技能者が補聴器店の中で聴力を測定する時は、常にdBSPLで測定するのが一番確実で理想的なのだろうな、と思います。
今回は言葉の定義のお話しでしたが、これと似たようなことは音場校正の時にも出てくることがあります。校正基準が違えば、測定結果が表しているものはまったく変わってきます。語音明瞭度を測定する時の校正や、音場測定でスピーカーを一つにするか、二つ必要なのではないか等の議論があるのですが、そちらはまたの機会に。
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イチからはじめる補聴器フィッティング
耳鼻咽喉科医師で補聴器専門書の監訳者でもある「聴覚評論家」中川雅文と、補聴器専門店チェーンを営む経営者で認定補聴器技能者でもある「補聴器専…
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