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瀬戸田インターンシップ3日目

こんにちは!

立教大学観光学部の志賀まみです。

このたびInsitu Japanの拠点がある広島県の瀬戸田にてインターンシップをすることになりました。

これは立教大学にて池尾健先生が担当している「ビジネスコミュニケーション」の授業をきっかけに全国からの学生に募集、選抜を経て実施されています。

なおこのインターンシッププログラムは池尾さんが代表を務める一般社団法人Intellectual Innovations(*下記リンクを参照)の支援により実施されています。

今回は、夏のインターン最終日、3日目の振り返りを書きたいと思います!

長畠農園さんでの農業体験

午前中、高根島の柑橘農家である長畠農園さんでレモンの新芽摘み作業をさせていただきました。

作業をしながら長畠さんとお話していて、みかんやレモンへのこだわりはもちろん、「瀬戸田がこうあるべきなんじゃないか」「もっとこうしたほうがいいんじゃないか」という地域全体に対するこだわりも強く持っていらっしゃるということが伝わってきました。

<みかん畑の風景を残す>

時系列が前後してしまいますが、長畠さんからお聞きしたみかん畑の現実について最初に書きたかったのでここに書きます。

作業を早めに切り上げて長畠さんが車で島内を案内してくださいました。山道をどんどん上って、眺めのとても良いポイントで小休止。
眼下に瀬戸内海と畑の風景が広がりました。
私の地元から海というと一番身近なところで銚子の海なのですが、これまで見てきた太平洋の景色とは異なり、大小異なる多くの島が海に浮かぶ様子が新鮮に映りました。

さて本題。
そこで長畠さんからお聞きしたのが、メディアのきらびやかに見える報道では伝えられない、みかん農家の厳しいリアルな部分。

みかん畑は農家の高齢化や後継者不足で作り手がどんどん減っており、「10年後に今あるみかん畑がどうなっているかわからない」という状況です。

長畠さんによると、現在の農家はほとんど70代で、荒地も次第に増加しているそう。
働き手は技能実習生に頼る部分が大きく、コロナによる最大の影響として「技能実習生が来れなくなったこと」をあげていらっしゃいました。

車で走っている際に「ここも以前は畑だったんだよ」と教えてくださった斜面の上部も、既に木が沢山生い茂っていて、畑だった面影は感じられませんでした。
島の道路に関しても、後継者不足で畑が減る→管理する人も減り道も手入れできない→道が通れなくなるというように、畑の減少が直接島のインフラ機能を低下させていく。農家の減少が畑そのものや畑関連する機能を低下させ、さらにそれが農家の減少を招く。瀬戸田だけでなく日本が全国的に直面している少子高齢化の縮図を見たような気がしました。

「僕の思いの一つとしてはこのみかんのある風景を島に残したい、ということ」

長畠さんが仰ったこの言葉が頭から離れません。
じゃあ自分が生産者になってみかんのある風景を残せるのかというとそう簡単に言えることではない。

今回やらせていただいた新芽摘みも、今回の時間とスピード、正確さでは全く話にならないくらい大変な作業。作業が終わった後、一瞬「楽しかったです」なんて感想が頭をよぎったけれど、そんなこと言えるほど甘い環境ではない。

ならば自分にできることでこの島の風景を残すことに繋がる何かってあるのだろうか。

「畑がこんなにまとまっているのは瀬戸内海の中では瀬戸田と高根くらい」という、貴重なこの風景を残すにはどうしたらよいのだろうか。

このみかん畑の現状を伝えていくこと?高根のみかんの存在を皆に知ってもらうこと?

生産者を増やすというような直接的なことは自分にはできないかもしれないけれど、何かしらの形で自分が長畠さんの思いやストーリーをつないでいきたい、、と思いました。

瀬戸田3日目

↑ 長畠さんが作業後に連れて行ってくださったおすすめのビューポイント

<ものすんごくおいしいみかん>

そして、このみかんが本当に美味しかったです。長畠さんと一緒に作業をして農家が直面するリアルやみかんに対するこだわりを聞いたからこそ、作り手の思いが一緒になって、さらにとりたてだから美味しさが増し増しになっていました。本当に美味しかった。帰ってきてから毎日みかんを食べているけれど(現在9/28)、このときに食べたみかんのみずみずしさ、おいしさに勝るものはありません。

作る人の思いや背景にあるものを知って、それも一緒になってこそ「味わう」ということで、そうやって味わったら普通に食べるよりもっとおいしく感じます。

この美味しさを知ってほしい。生産者ではないから、知ったようにグイグイと言えない部分はあるのですが、みかん農家さんの思いを知ってほしい。
こんなに美味しい瀬戸田のみかんが、流通上は「瀬戸内産」「広島県産」という表示にまとめられてしまっている。だけど、こだわりが強すぎて互いに衝突が生まれてしまうほど、一つの地域の中でも、それぞれの農家さんでみかんの作り方に対するこだわりが異なり、それぞれ強い思いをもっている。十人十色のみかんやレモン。

昨日の坂本さんとのお話と重複してはしまいますが、それほど伝えたいこと。流通上は「瀬戸田」「高根島」として存在しないものを知ってほしい。そんな思いが出てきました。

<入り口としての役割>

長畠さんが仰っていたことの一つに、観光事業者が外に開きすぎているという指摘がありました。

「瀬戸田のことを広めたい」「瀬戸田のことを知ってほしい」という思いが強いゆえに、一つ一つの事業者が島の外へと開かれすぎる。

”瀬戸田”という地域自体に魅力がないと人は来ない。

長畠さんが仰っていたことは本当にその通りだと思いました。

例えば地域の中には観光客の集まる一つの拠点のような場所がある。それはホテルでもカフェでも。
その場所は地域の中でどのような役割を果たしうるのか。

例えば飲食店で言うと

このお店のこの料理が美味しい!

あ!この食材はここの農家さんがつくっているのか

じゃあ、明日この農家さんが作ってるもの買いに行ってみようかな

というように、
事業者の役割は、お客さんに触れやすい立場の役割として、根っこの生産者と先っぽのお客さんをうまく繋ぐことだと思います。

「域内循環率」という言葉があるけれど、飲食店で言うと、お店で地域の特産物を使っていたとしても、お客さんに対してそれをどのように伝えるか、知ってもらうかという工夫が重要で、

そこは観光客の目的地であると同時に、地域の入り口として機能する必要がある。
観光客の足がそこで止まり、帰っていくのではなく、起点となって観光客の行動が広がっていき、地域にお金が落とされ域内の生産者や事業者に利益が回っていく流れをつくる必要がある。

そうすることで「域内循環」が本当に達成されるのではないかと思いました。

「瀬戸田に来たい!」と思うきっかけの一つにSoilがあるように、ここのみかんジュースを飲みに、ここの食事を食べになど瀬戸田に対するいろんなフックを、入り口を地域の中につくることが必要。

いろんな入り口から外の人がはいってきて、瀬戸田の中に広がっていく。そうして”瀬戸田”という地域全体で魅力が向上していくのだと思いました。

<外に開きすぎないこと>

と、ここで「瀬戸田を広めたい」という気持ちのあまり、観光客にとっての価値に偏りすぎることに注意が必要ではないかと思います。

観光においては、外からお金を落としてくれる存在である観光客向けに開かれるものが多くなってしまいがちです。しかし、地域を受け継ぎ、そこで生活するのは地元の人。地域の人ありきの観光客であるということを忘れてはいけません。かといって観光客を軽視してよいというわけでもない。

どちらかに偏らずに地域の人にとっての価値、観光客にとっての価値を両立すること、いいとこどりをすること、は難しいことだと思います。
地域の人との対話を重ねて、互いの理解を深めたうえで事業を進めていかなければいけない。
その過程はすごくタフだけど、時間をかけるべき重要なもの。

長畠さんが、岡さんや小林さんと話して互いの理解を確認しあって、その過程があるから今回の長畠農園さんでの作業体験が実現した、というお話からそんな風に思いました。

と、私は実際に経験していないので言葉で言えますが、実際は地域の中で内輪の事情があって、
この人と関わったら関係を作りやすい、逆にこの人とこの人は仲が悪いから、この人と最初に繋がりをつくるのはやめたほうがいい、というような、
地域に入らないとわからない事情を知って、対応しながら進めていく必要がある。

地域に入っていく、馴染んでいく過程には住民と観光客にとってのハブ的な立ち位置、両者の視点を持ちうる立場だからこそのそんな大変さがあるということを知りました。

瀬戸田の高校生2人へのインタビュー

午後、昼食をSoilでいただいてから耕三寺と向上寺を回った後、Soilに戻り瀬戸田在住の高校3年生・ゆうきちゃんとまりかちゃんにお話を伺いました。

2人のピチピチの若いパワーをもらって、とても元気になった時間でした。

<2人の”瀬戸田愛”もまた瀬戸田の雰囲気をつくっている>

まず、二人と話していて感じたのは「瀬戸田が大好き」ということ。

瀬戸田の魅力や友達のことお祭りのことなどを話す二人の様子からは瀬戸田が大好きなんだなあと伝わってきました。

ゆうきちゃんとまりかちゃん、二人はまさに瀬戸田の観光大使だと思います。

「もっと瀬戸田について自分たちに聞いてほしい」

それほど瀬戸田に魅力があって、それを知ってほしいという思いがあるということ。

こういう瀬戸田の人の思いを知ったらもっと瀬戸田のことが好きになる。もっと瀬戸田のことを知りたくなる。
地域の人が大好きという思いが詰まった場所は、その思いがあるというだけでとても魅力的に感じます。

もともと瀬戸田に根付いてきた、商店街の人と「ただいま~」「おかえり~」と交わすような関係性、そのような人の温かさが、二人の瀬戸田愛を生み出していると同時に、二人の瀬戸田愛もまた瀬戸田の温かい雰囲気、落ち着く雰囲気自体を作り出しているのだと思いました。

二人にとって、ただいまと安心して帰ってこれる場所。
3日間を瀬戸田で過ごしてみて、私たちのような外の人にとっても瀬戸田はそのような場所であると感じました。

<二人が考える瀬戸田の課題>

二人に「瀬戸田の課題はどんなところだと思う?」と聞いたところ、

「瀬戸田以外の人が瀬戸田を盛り上げている。瀬戸田の人が魅力をもっと発信できたらいいよね」

と答えてくれました。

地元に対してそういう当事者意識があることがすごい。。

確かにSoilやAzumi、商店街の汐待亭、などなど
商店街は特に、島の外の人が始めて瀬戸田を盛り上げているという例が多いなと二人の話を聞いて改めて感じました。

ゆうきちゃんとまりかちゃんが言っていた、「ここ最近2年くらいですごく変わった。商店街もシャッターが開き始めてコンビニができて、スーパーができて」という瀬戸田の潮流。
島の外から来た人がだんだんと瀬戸田に新しい風を吹かせている。

ただ、亀井堂のお母さんからお聞きした話の中で、地域の人は外からやってくる人に対してとても寛容だけど、一方で「外の人が何かやってくれる」という傍観者的な側面ももっていることも知りました。

外から来た人だからこそ気づく瀬戸田の魅力と、中の人だからこそわかる島の事情や魅力がある。外の人が中の人を巻き込んで一緒になって瀬戸田を発信していく仕組みが重要であると感じました。

<高校3年生にとって>

二人はそれぞれ三原と尾道に通っていて、今後進路はどうする?という質問に対して広島や岡山の大学を志望すると答えてくれました。
ゆうきちゃんはお店を営んでいるご両親の影響で進路を選択していて、まりかちゃんは将来お姉さんとカフェをやりたいという夢をもっていました。

自分の進みたいという方向に向かって勉強している中で、瀬戸田に勉強スペースがあったらいいなということも話してくれました。
確かに、勉強するスペースとしてはカフェのような場所は割とあるかもしれませんが、様々なもの、特に音に対してすごく敏感になる受験生にとっては、時間を気にせず全集中で勉強できる場所はなかなかないということに気づきました。

空き家が目立つ商店街にそのような勉強スペースがあったら、勉強目的ではなく地域の人やサイクリストの人だったりといろんな人が集まる場所になるのではとふと思いました。

二人は高校3年生という節目を迎え、来年、瀬戸田を離れるそうです。
ですが「1週間に1回は帰ってくると思う」と話していたのが印象的で、二人にとって帰ってこれる場所、安心できる場所がここにはあって、帰ってくれば「おかえり」と迎えてくれる島の人がいる。
勝手に二人が島に帰ってきた様子を思い浮かべて、感慨深く思いました。

将来、地元を離れて生活するとしても、二人は瀬戸田のことを想って、反対にまた瀬戸田のゆうきちゃんとまりかちゃんの周りの人は二人のことを想ってという関係性がずっと続きそうで、そのような島の人との関係性が本当に素敵だなと思いました。

今回、受験勉強やダンスがあって忙しい中でインタビューに答えてくれたゆうきちゃん、まりかちゃん、本当にありがとう。
瀬戸田の高校生とお話する機会をいただき、とてもとても楽しかったです!

私は遠くからだけれど、2人のこれからを応援しています。

最終日の振り返り

3日目。2日間のうちには知らなかった、地域の内情を少し知ることができたように思います。特に、高畠さんとのお話では1、2日目とは少し違った目線から瀬戸田地域の動きをみることができたように思います。

教育旅行に関して、高校生という実際の学生の貴重なお話を聞くことができました。「瀬戸田についてもっと聞いてほしい」という二人の思いを活かすことができるような教育旅行を考えたいと思いました。

2日目に、

私はまだこれらの「課題」とするところを単体でしか見れていないので、この一つ一つの関係性を言語化したり、図式化して目に見える形に落とし込んでいきたいと思います。と同時に、どのような場面で形でそれを強みに変えられそうなのか、瀬戸田の魅力と繋げながら考えていきたいと思います。

と振り返りに書きましたが、3日目ではこの課題とするところや、魅力と感じたところに、上記に書いたように新たな視点が加わって、ただそれを課題として魅力として受け取るのではなく、「誰にとっての」課題や魅力なのかということを考える必要があるということを新たに学びました。昨日までは平面的に考えていた課題や魅力でしたが、それにはいろんな人の視点がそれぞれあるために、より立体的に捉えていく必要があると感じました。

この3日間を通して、瀬戸田に関わる様々な立場の方からお話を伺うことができました。瀬戸田ではいろんな人が主体となって、地域という面を作っていっているということを実感した3日間でした。

しおまち企画の小林さん、DMOの内藤さん、亀井堂のお母さん、Azumi Setodaの窪田さん、瀬戸田支所長の坂本さん、長畠農園の長畠さん、地元の高校生ゆうきちゃんとまりかちゃん。

本当に様々な立場の方から瀬戸田の現状に対する考え・意見を知ることができました。お話を聞かせていただき、ありがとうございました。

これから、小さくてもこの瀬戸田という地域の一歩になりたいから、瀬戸田のいち「関係案内人」として、そうなるために、現時点でこの3日間で感じた課題や魅力を上記のように整理し、教育旅行を考える上でどんな形で自分のできることやりたいことを活かしていけるのか、ということを考えていきたいと思います。

最後に、3日間、お忙しい中でアテンドしてくださった小林さん、本当にありがとうございました。

今後とも、宜しくお願い申し上げます。

志賀まみ

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