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5歳の娘に、英語に触れてほしくてしくじった話

わたしは20代の10年間、東京の小さな商社で海外調達の仕事をしていました。

その仕事に就いたのはご多分に漏れず、英語を使った仕事や海外への憧れからでした。就活していた当時は就職氷河期で、英米語科の同級生が憧れるような航空系、旅行系、ホテル系は契約社員ばかり。小さい会社でも正社員で英語をバリバリ使えそうなところ、ということで選んだのが貿易関連の仕事でした。

短大でそれなりに英語を勉強し、それなりのTOEICスコアを履歴書に書いていたとはいえ、留学経験がないことに強烈なコンプレックスを抱きながら入社したのですが、それ以上に高かったのはビジネス英語の壁でした。なにしろmatterとissueの使い分けもわからずにサプライヤーにメールをしたためてしまい、入社早々大恥をかきました。初めてサプライヤーの担当者に納期確認の電話をした時なんか、受話器を持つ手が震えました。

それでも先輩(米留学・勤務経験あり)がわたしのことをあきらめないでいてくれたので、わたしはそこから猛烈に勉強しました。苦手な会話を克服しようと英会話教室に通い、ネイティブにサンプルで書いたビジネスメールを添削してもらい、通訳養成スクールにも通いました。

幸いだったのはメインのサプライヤーがあるのがスペイン語圏で、お互いノンネイティブということで気が楽な面があったということです。10年でさまざまな局面を経験し、今でもふと懐かしく思い出すたくさんの出来事がありました。

・納期が迫ってくると、日本とは昼夜ほぼ逆のサプライヤーの工場に夜な夜な「製品できた?いつできんの?」と電話したこと(納期なんて気にしているのは、いつだって日本人だけだったなぁ)

・海外からお客さんが来るとだいたいアテンド担当になり、サプライヤーの担当者を、銀座やら鎌倉やらショッピングモールやらに連れて行って一緒に楽しんじゃっていたこと

・ある製品の中国での仕入れ先開拓を任され、中国の国内線でしか行けない謎の都市に出張して、契約をとりまとめたこと(機内で煙が充満していて、ここで死ぬのかなと思った)

・日本側の納期が迫っているけど、サプライヤーの方で何度も製造失敗して完成できない、やばいとなった時、夜中フラフラの頭でわたしが適当に言った仕様変更の提案が通り、納期前日に製品を日本に到着させることができたこと

小さい会社だったので、輸出入の手配も全部やったし、知識をつけなくてはと通関士の資格も取りました。納期が迫ると昼夜関係なくなるのでハードな仕事だったけど、右も左もわからない状態からは結構頑張ったほうかなぁと思います。


それから夫が地方の会社に転職することになり、その会社を退職しました。もちろん田舎に行くとわかってて退職したのですが、新天地はあまりに閉鎖的で、海外を相手にする仕事なんてほとんどなく、わたしは愕然として毎日、日記に殴り書きしていました。

翻訳や通訳をクラウドソーシングなどで請け負うほどの英語スキルは結局身に付かなかったので、英語の仕事は諦めざるを得ませんでした。長年お世話になっていたフィリピンのオンライン英語の先生とおしゃべりして気を紛らわせていました。

そうこうしているうちに今では英語とまったく関係ない日本語のライターとして細々と仕事をいただいているわけなのですが、娘が生まれたとき、娘には、実は世界は広くていろんな人がいるんだぞ。英語がわかるといろんな人と話せて結構楽しいぞ。ということを知ってもらいたいなと思いました。

英語の歌のDVDを見せてみたところ、楽しんで見ていたので、ちょうどコロナ禍で休園になったタイミングで5歳の娘にオンライン英会話を受けさせてみました。

最初は楽しんでフィリピン人の先生の言葉を繰り返していた娘でしたが、負けず嫌いの娘は、わからない言葉に遭遇すると貝のように黙ってテーブルの下に隠れてしまうのです。それでも楽しそうに先生と塗り絵などやっているときもあったので数ヶ月続けていたのですが、ある日

「えいごはママに言われてやってるからいやだ…」

と泣きながら言われてしまい、脳天を殴られたようなショックを受けたわたしは、ごめんよぉと娘に何度も謝りました。

そしてそれから深く反省しました。

あれほどやりたいことをやってほしい、好きなことを伸ばしてほしいと思ってたのに、結局自分の理想を押し付けてしまった…現に娘が自分でやりたいと言ってはじめた体操教室は3年も続いているのに。
というか自分だって5歳のころ英語に触れる機会なんてあったか?!英語が好きになったのなんて、高校で洋楽にハマってからじゃないか…
それにこれからの時代、英語だけがグローバルじゃないよね?わたしが今後行きたいと思ってるのだってアジアの国だし。でも英語わかるとどこの国に行くにも便利だし、ある程度身の守りになるけどね、でもそんなことは娘が大きくなってから自分で考えればいいことだろう…


わたしはその後、理想を押し付けないよう注意深く行動し、英語は移動の車内で歌のDVDを流す程度にとどめ、娘の食べ物の好き嫌いすらも「大人になってから好きになるかも」くらいに考えるように気をつけております。

それでも最近一緒に英語のDVDを見ている下の子が、なんとなくカーペンターズの「sing」とかを覚えてフニャフニャ歌っていたり、こども図鑑を見ている時めっちゃいい発音で「スーパーアンビュランス!」と言ったりするので、「下の子の方が見込みあるのでは!?」とまた暴走しそうになるのを辛うじて抑えている母なのでした。


子育て中、地方在住、コロナ禍で海の向こうは果てしなく遠く感じますが、早くまた海外行きたいなぁ。

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