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本能的に旅人 あとがき

つながりハレルヤ

 

電波のように見えない何かでつながっている世界。

台湾で受けた整体のおじいさんが言っていたツボとツボをつなぐ経路のように私たちはネットワークで結ばれている。

実際にSNSでもつながっているから、みんなを近くに感じられている。

 

魚屋でバイトをしていたうたくんは、日本食レストランを開くための修行をはじめた。
料理の話をするとき彼の目はいつも、まるで光のかけらのようで、いずれは海外にもお店を出したいとの夢を持ってがんばっている。

ジャンベのケンちゃんは、地元の福岡でバンドを組んで路上ライブをして「いつかCD出す」と意気込んでいる。

ベビーシッターとして船に乗っていたみかんちゃんは保育士の資格を活かして、地元に戻ってからは乳児院で働いているようだ。「子どもは世界の宝」とSNSにアップしていた言葉が、みかんちゃんの考えや生き方を全部表している。

画家のたまこちゃんは、自分で描いたイラストをプリントした器やマグカップを販売するためのサイトを作った。家の食器棚に彼女の作品がひとつずつ並んでいくのが楽しみ。

美容師のしのちゃんは自分の美容院を持つために腕を磨きたいと、夜遅くまでお客さん相手に頑張っている。

サアヤとはよくビデオ通話をしているから、ほとんど離れている感じがしない。彼女は看護師になるための学校に行きたくて勉強をがんばっている。

世界には手の指や足がない人たちが沢山いた。それも表にでてこられるだけの元気がある人しか私たちは見ていない。

サアヤは「怪我や病気で大変な思いをしている人の助けになりたい」と、この船旅で進路を決めたのだ。

人生には色々な事がありすぎるが、私もみんなの応援があるからとても心強い。自信をなくしかけたときは大切な人たちの存在に勇気がわいてくる。

仲間たちもそれぞれがんばっているという事実は、夢に向かう私を後押ししてくれる。誇れるみんながいるから、人生という旅も乗り切っていけそうだ。

とはいえ現実を受け入れることは簡単ではない。私はちいさな自分を守るのに必死だった。

自分そのものであることにOKを出そう。足りていないものは何ひとつない。それは自信のつけ方を伝授してくれたマダガスカルのレゲエお兄さんの教えでもある。

よそ見をして自分以外のものになろうとしている場合ではないし、ありのままを信頼しているから、必要な行動をするときも無理してまではがんばらないでいられる。

 

今日という日はいつだって、これからの人生がはじまる日。新しい風に吹かれることを恐れず、さいごまで自分に妥協なんてしませんように。

決意にも似た思いで胸に両手を置き、命が入った体を感じると、まるで時計が一秒一秒を刻むように、血がトクンヨクンと脈打っている。

心臓の音がひと時も欠かさず自分の一番近くで鳴って、何があろうとも生きることに味方して手伝ってくれている。

 

長いため息をはくように心の奥にいる本当の自分と同じ呼吸をすると、地球を一周して色々な人や場所と繋がった後に、ようやく私自身と繋がることができた気がした。

世界でいちばん会いたかった「私」という最高のパートナーにはもうすでに出会えていたというのに、あまりに近すぎて自分も周りも見えなくなっていた。

今まで「仮」だと思っていた生活は、実は本番そのものの愛すべき日々だった。

何気ない日々にこそ夢中で心を入れ込めたら、輝く粒がきらきらと漂っていて目の前は宝物で溢れかえっていたのだ。

 

今この瞬間、ただここにある満ちた時を抱きしめたい。

そして地球号でばったり出会い、縁あって近くにいる人たちを、惜しみなく思いきり愛していたい。

この旅が終わるまで、できる限り深く、永く。

 

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