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つながってゆく過去からの夢(ショートストーリー)

なかなか挑戦できないでいる。

本当はやりたいことがある。

やりたいことは、まだできていないことだからやりたいこと。。


学校から社会から、やりなさいと言われたことばかりやっているうちに

やりたいことがわからなくなってしまった。


動画や他人の投稿で時間をつぶしているうちに

自分の軸が本当にわからなくなってしまった。


でも、思い返してみれば、いままでで一番満たされていると感じる時は、

おじいの畑を手伝っているときだった。


土まみれになって草を抜いたり、収穫をしたり、

休憩のときに空を見上げ、流れていく雲を2人でみているときだった。


隣に腰かけるおじいの手は乾燥していて、爪にはいつも泥が入っていた。

畑でたくさんの野菜を育ててきた人の手。

わざと有り余るほど作って、人に配ってきた手。


そうだ、ぼくはいつでもおじいに憧れていたんだ。

当たり前のように与えられてきてばかりだったけど、

「あげる」側にぼくもいつか立ちたいと思っていた。


もうそろそろこれからは、与える側になれそうだ。

ありあまるほどの時間や、酸いも甘いも呑み込んできた今だから。


与えてもらってきたものの中には、人から奪ってきたものもあったのかもしれない。

自分さえよければいいっていう思いで取ってきたものもあったかもしれない。


それを思うと恥ずかしくなるけど、そんな部分も自分。

その時の自分も認めて、許して、あたたかな気持ちでまるごと包んであげよう。


困っている人にも困っていない人にも野菜を配り歩くおじいの血が、自分にも流れていることをとても誇りに思う。


自分の中の枯れない優しさを思い出して、ぼくも与えたい。


風来坊のような旅から戻り、すがすがしい決意と共に、地に足をつける畑をはじめた。

まずは土作りから。


おじい、天界から、応援しててね。

したたる汗をぬぐい、吸い込まれそうに青い空を仰ぐと、背中をそっと押してくれるようにふわっと追い風が吹いた。



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