あのfreeeも生み出した、アウトプットの質を高める時間術_『「3か月」の使い方で人生は変わる』(佐々木大輔 著、日本実業出版社)
青いツバメのマークと伸びやかなロゴに、以前から好印象をいだいていた。お金の計算が苦手でも、確定申告初心者でも、このソフトがあればかんたんに確定申告ができるとも聞いていた。だから、会社をやめると決めたとき、すぐに申し込んだ。
クラウド会計ソフト、freee創業者の佐々木大輔さんが本を出した。
『「3か月」の使い方で人生は変わる』は、著者がグーグルで学んだ「3か月ルール」の考え方を紹介する本だ。「3か月」を意識することで時間の使い方を見直し、時間のかかる、クリエイティブな仕事に時間を割こう──。それが著者のメッセージである。
通読して、「3か月ルール」の考え方はまさにfreeeのコンセプトと同じだと感じた。freeeは、経理のような面倒で大変、しかし端折ることはできない重要なバックオフィス作業を効率化し、「ワクワクする創造的な活動」に時間を使ってほしいとの思いから開発されたソフトだ。これはまさに、著者のいう「3か月ルール」の考え方ではないか。
実際、freeeのおかげで、私のフリーランス1年目は順調である。売上や経費の登録をしながら「この時間をライティングや構成案を考えるのに使いたい……」と思ったことはまったくない。仕事を始める前の朝の15分、急なスケジュール変更でぽっかりと空いてしまった時間帯などを利用してさっと終えられるため、事務作業に時間を奪われないのだ。
本書では、3か月ルールの考え方、実行にあたってのスケジューリングのコツが紹介されている。気がついたら長い時間が経っている物事「時間泥棒」についても触れられているから、ふだんの自分の行動をチェックしてみてもいい。3か月あれば1テーマにじっくり取り組むことができるし、成功体験をつくることもできる、と著者は言う。
最後に著者は、あとは「とにかくやってみよ」とアウトプットの重要性を説く。3か月がうまく回るように事前準備はするものの、細部にとらわれず、物事が1周するまでやってみる。
「完璧なアウトプットかどうかより、アウトプットから何を学ぶか、どうブラッシュアップしていくかを重視している」
という著者の言葉に共感する。ブックライティングも同じだ。「助詞は『が』がいいか、『は』がいいか?」なんてことを気にし出すと、本一冊なんてとても書けない。まずは構成案を固めたらひと通り書ききり、それから推敲していく。3か月ルールは時間節約の術ではない。アウトプットとブラッシュアップのサイクルをスピーディーに回すことで仕事やクリエイティブの質を高めていく方法だと感じた。
自分のやるべきことや限界を最初で決めこんでしまわない「理想ドリブン」をはじめ、「決めた計画には遅れない」「プランは『行動レベル』まで落とし込む」「イレギュラーに振り回されない」など、見出しを眺めているだけでも気づきの多い一冊だった。