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世の中すべての働く人に勧めたい本_『社長の「まわり」の仕事術』(上阪徹 著、インプレス)

この一年ほどで、これまでになくビジネス系の本や情報サイトを見るようになり、世の中の「社長」さんに興味がわいている。

そんなタイミングで手に取った、『社長の「まわり」の仕事術』(上阪徹 著、インプレス)は、働く人すべてに読んでほしい一冊である。自分は、「はじめに」のこの見出しにグッときてしまった。

世の中のほとんどの人は、「社長のまわり」の人だった

そうなんだ、働く人のうち、圧倒的多数を占めるのは「社長」以外なのだ。今は社長のあの人も、かつては一社員だったはず。そう考えると、誰が読んでもおもしろい、何かしら気づきを得られる本といえる。仕事術の本としても読めるし、今話題の会社の社内の雰囲気を知る本としても楽しめる。時間を置いて再読してみたら、また新たな発見があるかもしれない。

この本にグッときたポイントはほかにもあった。

ポイント1:人選(社選?)がツボ
紹介されているのは、今まさに、その取り組みや躍進ぶりが注目されている会社で、社長を支える人たちである。一社につき、複数人出てるのもいい(ディーエヌエーを除く)。さまざまな役割の異なる人の視点から、その会社と社長の姿、それを支える人たちの仕事ぶり、業務内容を知ることができる。

ポイント2 社長は「役割」という気づき
この本を読み終えて一番感じるのは、どの会社のどの人たちも、変に「社長だから」と気を遣いすぎていないことである。多忙な社長が意思決定をしやすいように配慮はするものの、「遠慮」はしていない。社長も社員も、その会社が見据えるゴールを共有し、理解している。その達成のためなら、時には社員が社長に意見することもある。
「社長に言われたことだから」と、すべてを真に受けすぎないようにしていたのも印象的だった。言われたことすべてを全力でやっていたら、支える人たちはパンクしてしまう。社長の様子や会社の業績を見ながら優先順位をつけたり、調整したり。社長まわりの人たちはじつは、社長を「手のひらで転がしている」のかもしれない。「社長」「社員」というのは身分の違いではなく、「役割の違い」にすぎないと気づいた。

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登場していた13人の社長「まわり」の方々、いずれもおもしろかったのだが、特に印象に残っているのは隈研吾建築都市設計事務所の方々のお話だった。

「世界の隈研吾」さんだから、2020年の東京オリンピックでメインスタジアムとなる新国立競技場の仕事をはじめ、国内外でビッグプロジェクトがいくつも同時進行している。
にもかかわらず、新たなプロジェクトがくると、まずはできるんじゃないかと考えてみる、と同事務所代表取締役の横尾実氏は言う。自分なりに都合よく解釈して、うまく進められるような形を考えればいい、物事をあんまり深刻に受け止めないことです、とも。
長年にわたり第一線で活躍し、着実に実績を積むためにはこうした考え方が必要なのだろう。確かに一つひとつを深刻にとらえると、楽な仕事なんて一つもないし、そう思うと足が止まってしまう。何ごともやってみないとわからない。もし想定していたことと実態が違ったならば、次に対策を考えればいいだけである。自分は個人事業主だが、この考え方は真似したい。
最後に横尾さんの言葉をひとつ抜き書きする。これは書籍におけるブックライターも同じだなと思う。「建築」を「書籍」に置き換えてみるとしっくりくる。

建築でも花形のプログラムというものがあります。たとえば、美術館ですね。でも、そうじゃない地味なプログラムの施設でも、面白さというのは、やっぱりあるんです。それは、どの建築にも共通している。そもそも建築って、頭で考えながら、図面にそれを落とし、最終的に形になっていくわけです。その形になる過程が一番面白いんですよ。(中略)これを楽しまないと建築に関わっている意味があまりないと思います。