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IT導入で効率化し、利用者さんとの本質的な関わりを大事にしたい

こんにちは!横浜AC(エリアコミュニケーター)の松澤です。
「これからの介護を考える」シリーズの第六弾です。

今回は、なごやかケアリンク株式会社 
取締役 大浜 見栄子さんにお話を伺いました。

大浜さんと初めてお会いしたのは横浜市の事業所でした。本部所属ではあるものの利用者さんやスタッフの皆さんととても親しくコミュニケーションを取られており驚きました。

介護事業所でのタブレット利用やITツールを活用した体力測定など先進的な取り組みをされていますが、あくまでも介護現場の目線に立った導入を実践されています。
どうすれば活用できるか、どうすれば利用者さんの為になるかを考え実践する、デイサービスへの愛に溢れる大浜さんへお話を伺いました。

■法人情報
法人名:なごやかケアリンク株式会社(運営本社)
http://www.nagoyaka-link.co.jp/
種別:デイサービス運営法人
住所:東京都千代田区神田猿楽町2-7-6 TK猿楽町ビル2階(本社)
体制:東京・神奈川の首都圏において50ヶ所以上の直営施設
「デイサービスセンターなごやか」を運営
■人物情報
役職:取締役
お名前:大浜 見栄子様
経歴:
・株式会社ソラスト ソラスト武蔵小杉入職 (2年)
・ソラスト保土ケ谷の立ち上げに関わる (9年)
・2019年4月、なごやかケアリンク株式会社がソラストのグループ会社になったタイミングで、なごやかケアリンクの取締役就任

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働きやすい現場のために、古いやり方にとらわれない

ーーこれまでのご経歴を教えていただけますか?

2008年3月にソラスト武蔵小杉の認知症デイサービスに入職をして、2011年4月に、ソラスト保土ヶ谷のデイサービスを立ち上げのために保土ヶ谷に異動し、約9年過ごしました。

一昨年(2019年)4月に、ソラストとなごやかケアリンクが合併した際に、なごやか代表の菅原から取締役への着任依頼がありました。デイサービスが好きで現場を離れたくなかったのですが、デイサービスをもっと良くしたい、菅原と近い距離で経営にも関わってみたいという気持ちになり、なごやかケアリンクの取締役に就任しました。

ーーソラストさんとなごやかケアリンクさんが合併する際、どんなことから始められたんですか?

ソラスト自体元々教育がしっかりしていたので、グループになったことでなごやかケアリンクの方にもそれを活かしていければいいなとは思っていました。

ただ、なごやかケアリンクは合併される側だったので、最初、本社が来て何か言われるんじゃないかと現場が不安になっているのを感じました。その壁をどうやって越えようか悩みましたね。

そこで、まずは社長と取締役で現場に行き、職員さんの悩みや相談を聞くミーティングを行ったんです。そこで会社の想いと現場の想いを話し合う機会が持てたので、少しずつ良くなっていったかなと思います。

ーー大浜さんは現場ご出身ですから、現場と心通わすのにその経験が役立ったこともあるのではないですか?

最初のころは、人が足りない時に現場に入ったりもしましたね。現場が人が足りなくて大変だという気持ちも分かるし、会社が経営の視点で新たな施策を現場に持ち込もうとしている狙いも分かるんです。なので、ただ本社から指示を出すだけでなく、現場に行ってそれを実現するためにオペレーションをどうしましょう、とあれこれ具体的にお話できたのはよかったなと思います。

これからも古いやり方にとらわれず、やらなくていいことは省いて、現場がどう働きやすく変えられるかを常に考えていきたいですね。ソラストはITの活用も進んでいるので、その良いところはなごやかケアリンクにも導入して改善していきたいと思っています。

ーーソラストさんではどのようにITを導入されているんですか?

職員の業務負担を軽減するためにiPadの介護記録システムを導入しています。全社でペーパーレスに取り組んでいて、日々の介護記録は全てiPadで入力しています。介護記録システムと請求業務システムを連携させていて、そのままパソコンで請求業務までできる仕組みです。私がいたソラストの保土ヶ谷の事業所で3~4年前に初めて導入し、今では通所の全事業所がそのシステムを使っています。iPadは各拠点1台です。

ーー実際に紙の使用量は減ったんですか?

減りましたね。紙で作業していたときは、用紙をコピーをして記入して、それをファイルするという作業がありましたが、それもやらなくて済むので、人件費の削減にもなっています

iPadの介護記録は、そのまま印刷できて、利用者さんとの連絡帳にもなるんですよ。今までだったら介護記録を書く人、連絡帳を書く人と分かれていたのが、一つのソフトで全部賄えるようになったのは大きいですね。連絡帳には写真も一緒に載せられるので、その日のレクの様子を写真に撮ってご家族にお渡しすることもあります。ご家庭と違う一面が見れたと、ご家族にも好評ですね。

ーーそのうち連絡帳もアプリになったりするかもしれませんね。

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IT導入時にはもちろん課題も。どんな風に乗り越えたか

ーー導入時にはどのような課題がありましたか?

職員の中には機器に弱い方が多くて、介護ソフトを教えるのは結構大変でしたね。

ーーどんな風に工夫されたんですか?

iPad自体を触ったことがない方が多かったので、ひとまず触ってもらうところから始めました。作業が複雑にならないよう、ソフトを開くと数字だけしか入力できないようにしておきました。誤操作がなければ慌てないですし。

介護記録ってその日の出来事を文章で書くんですが、例文をたくさん作り、その中から選んでタップする仕組みも作りました。ゼロから文字入力をしなくて済むので、操作が苦手な方でも比較的やり易かったのではないかと思いますね。慣れてしまえば介護ソフトにしてよかったと言ってくれた人も多かったです。

ーー私も前職が介護事業所だったので、システムの入れ替えや移行で大変な思いをしたことがあります。入れ替えにも費用がかかりますし。そこに踏み切れた決断がすごいなと思います。

現場は結構大変でしたね。私の知っている限り3回くらい入れ替わったので、その度に特にケアマネはすごい大変だったと思います。ケアプランを全部入力し直す作業をやっていたので。通所だと扱っている情報が利用者さんの基本情報だけなので、本社の方で入れ替えを手伝ってもらいましたけど。でも、システムの入れ替えはやっぱり大変ですね。

ーー今お話頂いたようなソラストさんでのIT導入の経験やノウハウは、なごやかケアリンクさんの方でも反映させているんですか?

はい。なごやかケアリンクの方ではまだ1事業所でテスト導入している段階なのですが、今後は全社で導入していきたいと話しています。

ソラストのときに、介護記録システムから請求業務システムにデータを飛ばすとお話ししたと思うのですが、なごやかケアリンクでもともと使っていた請求業務システムがその連携ができず、まず請求業務システムを変更をしてから、新しい介護記録システムを入れないといけなかったんです。CSV(データのやり取りで使うファイル)で以前のシステムからデータを吸い上げて、新しいシステムにCSVで貼り付けるという流れですね。

ーーそれは大変そうですね・・・。ソラストさんのとき、定着したなと思うまでどれくらいでしたか?

感覚では、3か月くらいですかね。3回くらいまでの請求は操作ミスなどあったなぁと思います。最初が一番大変で、どこまで耐えれるかというところはありますよね。ベンダーさんにも要望を出したりもしましたね。全てを聞いてくださるわけではないけれど、カスタマイズしてもらえたところもありました。

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ITを活用し介護の本質に目を向ける

ーー介護記録のソフト以外の取り組み例はありますか?

ソラストで導入しているのが、体力測定をビデオ撮影し、その映像をもとに評価をしてくれるソフトです。機能向上加算を取るために、要支援の方たちには3か月に一回体力測定をしていただくのですが、ビデオ測定をするだけで、簡単に前回の結果と今回の結果がグラフで比較ができようになりました。

それまで体力測定は、ストップウォッチなどで記録を取る人と介助をする人と2名必要だったのですが、今は1人でできるのでとても楽になりましたね。

また、結果シートをご家族やケアマネさんに渡すようにもしています。その人も写っている状態でその横に評価が出るので、機能が落ちてるところや良くなっているところが一目で分かり易くなっていますね。


ーー業務の効率化以外で何か他に取り組んでいるITの施策はありますか? 

ソラスクールという従業員向けのトレーニングをeラーニングで行っています。今までは研修するときは集合研修でやっていたのですが、ソラスクールだと移動の時間も削減できます。ご家庭の都合で集合研修に行けない方でも好きな時間に参加できるので、誰でも参加しやすくなっているのは大きなメリットですね。

また、過去の勉強学習状況の記録が残るのでマネジメントもやりやすいです。なので受講していない方がいると受講して下さいと連絡が行くことはありますね。受講した後に簡単なテストもあるのでそこで振り返ることも出来ます。

入社時の会社説明も全部ソラスクールで行っています。介護、訪問、施設について全部見れるようになっているので、入社した人にとってもそれを見れば会社がどういう取り組みをしているか全体像が見えるので、そこも良いと思いますね。

どれだけITが進んでも、介護は人にしかできないこともある

ーーITの導入の狙いは、ペーパーレスや生産性の向上だと思います。効率化できた分をソラストさん、なごやかケアリンクさんではどうしていきたいと思っていらっしゃるんですか?

やっぱり私たちの仕事は介護なので、利用者さんがいての仕事です。ITを使うことによって余った時間は、利用者さんともっと関わって、より密なサービスが提供できると思うんです。細かく爪を切ったり、髭を剃ったり、たまにはゆっくりしゃべる時間を作ったり。本質にきちんとフォーカスが当たるようにうまくITを導入していきたいですね。

同時に従業員の満足度も上げていきたいです。今までは記録をファイルする作業を時間外にやっている方も沢山いましたが、今では効率化も含めて、良くなっていってると実感していますし、今後も更に改善していきたいと思っています。

ーーコロナの影響も経て、ITへの意識はさらに変わりましたか?

コロナ禍で見えた可能性としては、コロナで休んでた時に1週間に1回は電話をして状況確認をしていたんですけど、タブレットでできることはありそうだなと思いましたね。

利用者さんにご自宅からパソコンなどで入ってもらって、こちらはデイから画面越しに利用者さんの顔を見ながら一緒に会話やちょっとした運動ができますし。ITを使うことで効率化のためだけではなく、本質的に利用者さんと関わることができるようにもなりますよね。

ーーなかなかIT導入が難しいと考えている事業所さんもいると思うので、そんな方たちに向けて一言頂きたいです。

ITの導入やペーパーレスが介護業界では難しいと思われているのはとても分かるんですが、その壁を最初に頑張って乗り越えてしまえば、すごく効率的に業務が出来るようになります

やはりコストもどうしてもかかるので、だったら今まで通りでいいでしょと思ってしまう方多いと思うんですけど、紙で書いている時間を年間で見ると、導入してしまった方が後々いいとは思いますね。

あと、全部自社でやるのは大変だし無理なので、システムベンダーさんがどこまでサポートしてくれるかを事前に確認しておくのも大切だなと、私たちの経験からも思います。

介護は人じゃないとできないところとそうじゃないところがありますよね。機械ができるところは機械に任せて、人しかできないことに人が集中し、利用者さんとの本質的な関わりの時間を増やしていきたいですね。

編集後記
IT、ICT化がまだまだ未成熟な介護業界ですが、IT、ICT化を進める為には、介護現場が使いやすい製品や環境を整えることが重要だと、今回のお話を伺って感じました。
今後人手不足が深刻化する介護業界においてはマンパワー以外の力が必要になりますが、開発する側・利用する側の垣根を越えて業界全体が足並みを揃えて取り組んでいくことが課題解決につながると思います。
私自身も介護現場出身であり、アナログな業務があることも理解していますし、新しい技術の導入の難しさも体感しました。当時、好事例を知る環境や余力がありませんでしたが、今回のような良い事例がどんどん発信されキャッチしやすい環境になれば良いなと感じます。

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地域ケアプラットフォーム推進本部
関東エリア担当 松澤賢治(まつざわけんじ)
車椅子のシーティングが好きな福祉用具専門相談員。
趣味は登山やキャンプなどのアウトドア。

松澤さん 編集後記写真2


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