ぎゃーーーーっと叫んだ
7月23日(火)
朝、目が覚める。小鳥の歌声にうっとり。むくりと起き上がる。
ウーちゃんの様子を見る。元気そうだ。顔色もいい。ほっとする。冷凍アカムシをあげる。ぱくぱく食べた。よかった。
玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。
カカオにご飯をあげる。
仕事をする。
卓上カレンダーケースの枠になる模様を描く。プリントアウトして修正をする。繰り返す。できた。あとは入稿用のデータにすればOKだ。
ぷりんさんからメッセージが来た。
夏バテをしたらしい。役場には明日行くことになった。バングラディッシュの方が暑そうに思うのだが、日本の方が格段に蒸し暑いらしい。
ピンポーン、ピンポンピンポンピンポン。と、チャイムが鳴った。
この鳴らし方はYさんだ。玄関に行くとニラを持ったYさんが立っていた。先日のきゅうりもやはりYさんだった。
Yさんが帰り、またチャイムが鳴った。
宅配便のKさんだった。
お買い物に行く。
ごはんさんが体調を崩したので食べるものを持っていく。
昨日、ごはんさんと にりんさんと、近所の暴れん坊ノラちゃん ”七三” の話になった。かなり弱っていてもうあと数日かもしれない。と、話した。にりんさんのお庭に来ていたらしい。
その七三が今日は ごはんさんの車の下にいた。
「ボロボロの雑巾みたいだね。」と、話す。
その姿は、もうすべてが手遅れだと語っていた。
ウーちゃんとルーちゃんの水槽をゴシゴシ洗って、水を じゃぶじゃぶ換える。
注文分の絵本を梱包する。てくてく歩いてポストに出しに行く。そして、お散歩する。空や緑や虫たちがとてもきれい。黒い大きな蝶々に うっとりする。
汗びっしょりになった。
家に帰った途端、雨がザーッと降りはじめた。
シャワーから出るとまた
ピンポーン、ピンポンピンポンピンポン。と、チャイムが鳴った。濡れた髪にタオルを巻いて出ると、Yさんが きゅうりを 2本持って立っていた。ちぎりたてだそうだ。チクチクしていて花もついている。
Yさんが帰ったあと、またチャイムが鳴った。
宅配便のKさんだ。朝のリピートだ。
カカオにチュールをあげる。目を細めて食べていたカカオが急に びくっ として、ものすごく驚いた顔で私の後ろを見ている。目がまんまるだ。
振り返ると、すぐ後ろに小さなハイエナが立っていた。
ぎゃーーーー!!と、叫んだ。
よく見るとハイエナではなくて、ふら〜っとしている七三だった。
もうこれ以上汚れることができないくらい汚れている。
こんなに汚れて弱っている猫を見たことがない。
急いでドアを閉めてカカオと会わせないようにする。
七三がカーテンをつけた押入れに入ってしまった。押入れの中のプラスチックケースの上に乗っている。ここには大したものは入れていない。でも。
七三は押入れの中で死のうとしている。それは困る。かなり困る。なので説得することにした。
「あのね、ノラちゃんは人から見えないところに行って そっと死ぬんだよ。」と、私。
七三は黙って じーっとしている。困った。
臭い。すごく臭い。灯りを点けてメガネをかけて しげしげと見る。
疥癬にかかっているかと思っていたけれど、そうではないようだ。汚れすぎて毛が固まり皮膚が見えているだけのようだ。痩せて背骨がゴツゴツしているのも見える。顔は ぐしゃぐしゃで目も塞がっている。耳の先からしっぽの先まで、ぜんぶ ぐしゃぐしゃだ。
七三は ものすごい暴れん坊で強くて、カカオも他の猫たちも七三にやられっぱなしだった。カカオは半年くらい足を引きずっていたこともある。
七三は Yさんに食べる物をもらっていた。
なぜ 最期が わが家の押し入れなんだ。
説得を続ける。
七三は黙って寝そべった。
どうしよう。
小ぶりの段ボール箱に、もう着ない やわらかい生地の着物を ふわっと敷く。ゴム手袋をはめて七三を引っ張る。意外と強い力で踏ん張っている。
「七三っ!」と、私。
「にゃー!」と、抵抗する七三。
なんとか引っ張り出して ベッド仕立てにした段ボール箱に入れる。七三は安心したように着物に身を沈めた。折り返した部分を枕にして顔を埋めている。気にいっているようだ。
さて、どこに置いておこう。
開けっ放しにしている猫用の出入り口の近く、廊下のすみっこに運ぶ。半分フタをする。
どっと疲れた。
明日の朝、箱の中で死んでいるかもしれない。見るのがコワイなぁ。と、思う。
修一郎が起きてきた。
食事の仕上げをする。
七三が段ボール箱に入って廊下の隅にいることを話す。びっくりしていた。
仕事の見直しをする。
カカオが外に出たがったので窓から出す。
夜、庭に出る。
雲のグラデーションの中を小さな星たちが煌めいていた。可愛いな。じっと夜空を眺める。夜のぜんぶに「おやすみ」を言う。
そして、みんなの体調が早く健やかになりますように。と、願う。
今日も星がきれいだった。
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