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おっさんだけど、仕事辞めて北海道でチャリ旅するよ\(^o^)/ Vol. 1 出発

2024, 0601, Sat
 
宮本輝の小説『蛍川』のラストシーンに登場する蛍の乱舞。一度だけ、わたしも同じような光景を見たことがあります。
 
あれは…。あれはわたしが幾つの頃だったのでしょうか?
徒歩では無理な場所ですから、そしてわたしはその場に独りだったのですから、バイクかクルマを運転してきたはずです。とすれば18歳以上。実家のある兵庫県は姫路からカッ飛んで1時間くらいの場所のはずだし、夜だったから、クルマで行った可能性が高い。上京したのが初めて就職した年の夏ですから、22歳以下ってことにもなります。
あそこは…。あそこはどこだったのでしょうか?
姫路から北に走ること1時間くらい、ちょうど兵庫県の真ん中あたりだったと記憶していますが、実際の場所となると見当がつきません。本州は、いえ日本はほとんどそうですが、海と海との真ん中あたりは山だらけです。あんなところでしかも夜、クルマで飛ばす以外でわたしが立ち寄る理由はありません。とすると、乗りつけたクルマくらい覚えてそうなものですが、これも記憶がない。ミニカのターボか、S13シルビアか、はたまた姉ちゃんが乗っていたカローラFXか。
わたしが覚えているのは、田舎ならどこにでもあるような片側が護岸された小さな里川。幅5mくらいの穏やかな流れのまわりを、おびただしい数の蛍が乱舞していた光景です。緑がかった光線は闇夜に緩やかなカーブを描き、それが幾重にも重なり合って、1つの大きな発光体と化していました。
たしかにわたしはそれを見たはずです。でも、あれから数十年も時を経たいま、1匹の巨大な生き物のようにうねるあの蛍の渦を本当に目の当たりにしたのかどうか、いまいち自分でも確証が持てないのです。

蛍=清流。そういうイメージがあります。一時期は少なくなったのですが、保護活動の甲斐もあって、近年では蛍の生息数は復活しつつあるそうです。日本は清流がたくさんありますから!

 
さて、わたしはいま、“天下分け目の戦い”で有名な関ケ原から程近い、岐阜県は垂井町の山奥で、この文章を書いています。時刻は午後10時を回りました。ロンTにインナーダウンを重ね、そしてマウンテンパーカーのフードまですっぽり被っていますが、そろそろ寒さに負けてテントに入ろうとしています。季節は春が過ぎ、梅雨入り前の束の間の晴れが続いています。昼間は半袖半ズボンで汗をかきかきチャリを漕いでいたのですが、やはり山間部の夜は冷えます。

田んぼって、水平じゃないと良くないらしいですね。そのココロは、水量によって撒く農薬が違うからなんだとか。この水量に保ってからこの農薬を散布して、とかそういうことなんですね。


玄米2合に納豆、それにメスティンの蓋でベーコンとえのきたけの醤油炒めなんか作ったりして、大満足の夕食を終えたわたし。元々がなにを喰っても旨く感じる貧乏舌なのに加え、チャリを漕ぎまくって腹がペコペコに空いているから、よっぽどの出来損ないができない限りサイコーの夕食は約束されています。安物の焼酎で作った限りなく水に近い水割りを一息に飲み干し、ホトホトとめぐりくる酔いの感覚を楽しんでいると、視界の隅を朧な光の点が横切りました。瞬間のことでしたが、わたしにはピンとくるものがありました。
…蛍?
そして、自分が居る東屋から15mほど離れた空間をぼんやりと眺めました。そのあたりのこれまた15mほど下方には、細い沢が流れています、
はたして…。白く光る点が緩やかに弧を描きながら飛んでいます。1つ、また1つ…。いえ、1匹、また1匹と…。

クルマなりバイクなり、普段エンジン付きの乗り物で走っていると気づきませんが、日本はマジで坂道だらけ。おまけに田舎は基本的に山岳地帯。そんでもって、わたしは田舎道が好きなんですよね。チャリで坂道を上るのは嫌いなんですが…。


相変わらず旅の計画はたてていません。目的地は北海道とだけ。日数も未定です。飽きるかトラブルが起これば、旅はそこで終了です。意義も目的もあったものではありません。
ただ、そんないい加減な旅の始まりとしては、まあまあぼちぼち、なんならそこそこ上々のような気もします。

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