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おっさんだけど、仕事辞めてアジアでブラブラするよ\(^o^)/ Vol, 16 乱高下

ベトナム ダラット 3日目
2023 0612 Mon

奇跡、とまではさすがに言えないし言いたくない。でもラッキーとか、そんな軽いノリじゃない。
今日の出来事を一言で言ってしますと、…なんて言ったらいいんでしょうね?

今日はダラットを去る日でした。
美しく、活気があり、そしてなにより涼しい街。
実質2日くらいの滞在でしたが、わたしはダラットがいたく気に入りました。日本人にはドマイナーな街でしょうが、もっともっと人気が出て良いような気もします。
でもなんだかんだホーチミンのTHEベトナムって感じは訴求力のある魅力でしょうし、メコンデルタ地方ののんびりしたい癒し系のベトナムもよろしいですな。
あれですよ、皆さん、ベトナムって悪くないですよ。…めちゃくちゃに暑いけど。

このホテルの1階2階部分があの雑然とした市場だなんて、どうしたって想像つきませんよね? 
ダラットは山間部で地形が複雑。窪地の底の部分に市場を作り、その上にホテルを建てたんです。

早朝から市場に出向き、クソを漏らして狼狽。ホテルに帰って昼まで仮眠し、12時きっかりにチェックアウトして、カフェで時間をつぶして16時過ぎ。そこからドラマは始まりました。

ダラットを18時に発ちダナンに翌朝8時に到着する、14時間の長距離バス移動。ニャチャンからダラットに移動するバスに乗る前の待ち時間、つまり3日前のお昼過ぎにダラットからダナン行きのチケットを予約しました、もちろんFUTAバスです。
FUTAバスのステーションで直接わたしが交渉し、出発日ダラットのホテルから長距離バスステーションまでの送迎も依頼済みです。

その送迎シャトルバスが到着するのが16時半。ホテル前の道端に立ち尽くしながら、わたしは思いました。「…来るわけないよな」
半ば覚悟していました。3日前の約束通り、ピックアップに来るはずがない、いくらFUTAバスといえども…。まあでもそんなこともあろうかと、わたしは3日前の夜に着いた長距離バスステーションの場所をちゃんと記憶しており、ホテルから抜け道を駆使して約4km弱、早歩きで45分で到着することも確認済みでした。

やたら豪華でカッコいい建物だと思ったら、やっぱり軍関係。
なんでもそうですが、なんだかんだ言って見た目ってやっぱ大事ですよね。

お世話になったホテルのママさんに一応お断りしてから行こう、そう思い、ホテルの門を叩きました。ママさんに事情を話し、「もしドライバーが現れたら、歩いてステーションに向かったと伝えてください」とお願いすると、ママさんは「わたしに任せて」とスマートフォンを取り出し、電話をかけ始めてくれました。
「そこで待ってなさい。すぐに迎えがくるから」
そのお言葉に甘え、犬2匹と遊びながら待っていると…。

ここからは時間軸に沿って出来事を羅列していきます。
16時35分
ママさんに幾本か電話をかけていただき、ピックアップ再依頼終了。
                       →シャトルバス来ず。
17時00分
ママさんのスマホが鳴り、ホテル前の道で待機。ここで雨が降り出す。
                       →シャトルバス来ず。
17時15分
歩いて到着できる最終時間のため、再度ママさんに歩きで行くことを宣言。
ママさんの「そんなの無理。わたしに任せて」のお言葉に押し切られる。
雨脚も強くなる。
                       →シャトルバス来ず。
17時16分
ママさん再再度の電話依頼を開始。
                       →シャトルバス来ず。    17時30分頃
わたし抑えきれずに怒りの咆哮(ママさんごめん)。
                       →シャトルバス来ず。
17時40分
わたし絶望。今夜のバス移動をあきらめる。

よく外国人が「日本って時間通りに電車が来るんだぜ! まったくFuckだぜ」
とか言っていますが、やっぱりそれって異常なことなんでしょうかね?

そもそもクルマで10分少々の道のりなのに、そして90分前から何度も連絡しているのに一向に来ないってどういうことだ? 400,000ドン以上の金かけてチケット予約して必死こいて現場でピックアップ依頼して、その結果がこれかい! 今夜もう一晩泊まるにも金かかるし、それよりなにより15日以内にベトナム出国してラオスに行かなきゃヤベーんだよ、ビザ的に! パスポート的に! 
いろいろなことが脳裏を交錯する中、もう一人のわたしは静かにこうつぶやいていました。
「怒るなよ。…怒るなよ」

ピックアップを直接依頼したステーションスタッフはナイスガイだったし、彼は確かにそれを係の人に伝えてくれたはずです。ママさんも自ら何度も何度も電話してくれたし、電話を受けたFUTAバスの係もちゃんとしてくれたはず。ボタンの掛け違えというか、なんらかが1つだけ欠けてしまって、その結果がこれなのです。だれも悪くない。わたしが15日中にベトナムを出国すればすべてチャラになる…。

そのとき、わたしのスマホが鳴りました。ママさんの息子さんが、Booking.com経由で連絡してきたのです。
「Don’t worry. The shuttle bus will arrive soon.」
17時43分のことです。
「ありがとう。しかし時間がないのです」わたしは送り返しました。
無理やな、もうあきらめろ。猛りそうになる自分に言い聞かせました。

息子さんとのやりとりから2分後。ママさんのスマホが鳴りました。
雨の中、一緒に道路まで出てきてくれるママさん。期待しすぎないように自分を抑えながらわたしも続きます。
そして待つこと約1分。
なんと! なんとシャトルバスが現れました、エンジン音も勇ましく! ママさんの手を取って礼を言うわたし。ママさんも肩の荷が下りたのでしょう、笑顔で「早く乗りなさい」と背中を押してくれました。
急ぎシャトルバスに乗り込んで荷物を下ろし、そして思いました。
「ああ、やっぱり無理やな…」

シャトルバスは満員でした。つまり、これは他の便のシャトルバスが無理やりにわたしを迎えに来たことを意味しています。そう、たぶん19時出発くらいの便です。
妙にせっかちなところのあるベトナム人は18時、なんだったら18時前にステーションを出発するかもしれません。それに加えてさっきから降り続くこの雨。ちょうど夕方のラッシュ時だし、道路も混むでしょう。いくら車道で5km強とはいえ、18時前に到着は厳しいだろう…。
そんなわたしの気持ちを知ってか知らずか、ステーションバスは走り出しました。クラクションをかき鳴らし、猛然とアクセルを踏み込みながら! 車列の先を読みながら右に左に車線変更を繰り返し、割り込む気配を見せるバイクに浴びせる容赦のないクラクション。迫るコーナーに鼻先を突っ込み、相手の逃げ場を残しながらのクリーンなオーバーテイク。

そして、あっという間にステーションに到着しました、時刻にして17時53分!
わたしはドライバーに向かいこう言いました。「Is this ticket’s bus here?」
「No problem, it’s over there.」
たぶん、そんなようなことをドライバーは言いました。
彼は知っていたのです。わたしがめちゃくちゃ急いでいることを。バスがすぐに出発してしまうことを。そのうえで、そして最終局面で、シャトルバスのドライバーは大仕事をやってのけたのです。
「Thank you! Thank you!」無我夢中で叫びました。
「You are SUPER COOOL DRIVER!!!」
5分ほど前に初めて会った彼。いま初めて正面からの顔を見た彼と、わたしはがっちりと固い握手を交わしました。彼も、よくわからんおっさんに大興奮で褒められてとてもうれしそうでした。

別に洋風だからカッコいいとかそんな感性は持ち合わせていませんが、
ダラットの涼しい気候にこういう建物は似合いますな。

いま、冷静に思い返します。あれって結局なんだったんだろうって。
FUTAバスに限らず、伝言ミスってのは全然有り得る話ですし、わたしが泊まっていたホテルは物凄くわかりづらい場所にあった。もしかしたらママさんはFUTAバスのダラット営業所ではなく本社のHOTLINEに電話したかもしれないし(それは全然ミスではない)、シャトルバスのドライバーはホテルの電話番号を控え忘れたのかもしれない。
いずれにしても、本格的にヤバくなった時にママさんは息子さんに電話してくれ、そして息子さんはすべてを悟ったうえで善後策をとってくれた。そして、シャトルバスのドライバーは自身のプライドをかけ、わたしを時間内に送り届けてくれた。
これ、日本じゃなに一つドラマなど生まれる余地のない話です。そもそも16時半にシャトルバスが来なかった時点でもうちょっとアレな感じになっちゃいますからね、残念ながら…。

日本ならクレームものの失態を犯しながら、そんなことお構いなしに顧客の感情を思いっきり振り回し、そして最後には涙ながらに感激させて固い握手を交わさせる…。
いやはや、ベトナムって国もなかなかに奥が深いですな…。

今回本当にお世話になったママさん。
物静かな方で、わたしが犬と遊んでいると喜んでくださいました。

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