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おっさんだけど、仕事辞めて北海道でチャリ旅するよ\(^o^)/ Vol, 11

2024 0706 Sat
 
助手席に座っていた教官に向き直り、若き日のわたしはこう言い放ちました。
「おまんがワイによぉ、なにを教えんねよ!?」
自動車教習所とは、クルマを実際の路上で運転するうえで必要な技術とルールを教える、実践的な場所。すなわち、建前でしかないルールはともかくとして、教習所で教官と名乗る以上、少なくとも免許を取得していなかった当時のわたしよりは運転技術が優れていなくてはならない。これはまあ自明ですね。
そして、当時のわたしにとって、謙遜という言葉は辞書の中の言葉に過ぎず、根拠のない自信を盾にデカい口を叩きまくる…。要は生意気で嫌なクソガキだったんですね。

ベトナムはホーチミン。このおっさんとは本気で喧嘩しました。桜庭和志曰く、「本気で殴り合った相手とは、本気でわかり合える」。このおっさんとわかり合えるかどうかはアレですが、この喧嘩後からホーチミンの楽しみ方がわかってきたような気がします。


そんな在りし日のわたしが降参した人物がいます。その名はナカムラ。コピーライティングにおける、わたしの師匠です。
20代半ばでクルマ雑誌業界に編集者として就き…。編集業務自体はアレながらも、文章作成の面では一人前を気取っていました。
そして3年後、広告業界に転職。ここでわたしは打ちのめされました。はっきりと、当時のわたしみたいな生意気な素人にでもわかるカタチで、ディレクションや構成、そして文章作成における実力の違いをまざまざと見せつけられたのですね、ナカムラ氏に。しかし、向学心に燃えるわたしはこう思いました。
“ラッキー!”

いつでもどこでも子供は元気! 写真を撮るだけでこんなに喜んでくれるなんて、こっちまでサイコーに嬉しくなっちゃいますよ。

そりゃそうですよね。コピーライティングのすべてにおいて自分より上の存在が、隣の席で同じ仕事をしているのです。真摯に教えを乞うわたしを邪険に扱うような、そんな小さな男ではありませんよ、ナカムラ氏は。しかも、ナカムラ氏とわたしは気が合いました。同じバイク乗り同士だったのです。ナカムラ氏を泊りがけのツーリングに誘う際、わたしは万全の “旅のしおり” を作成し、ナカムラ氏に見せました。ニヤリと笑い、ナカムラ氏は一言、こう言いました。
「いいじゃん」

KSR GT仕様。こんなちっこいので走ってると、よく話しかけられました。もちろん100%おっさんにですが…。


物静かで、優秀さを鼻にかけることなく、後輩の質問には適切にアドバイス。そんなナイスガイのナカムラ氏は、わたしと同じく性格に偏りがある、そんな人物でもありました。
一例を挙げます。ナカムラ氏は、ジーパンのケツポケットに、常にナイフを隠し持っていました。理由は、
「昔ボクに屈辱を与えた奴がいるんだけど…。今度そいつに会ったら刺すためなんだよ」
ナカムラ氏曰く、昔のこと過ぎて、そいつの名前も顔もすでに忘れてしまったと言います。このエピソードの是非はともかく、ナカムラ氏とはそんな一面も持つ人物なのです。
わたしにとってナカムラ氏とは、先輩であり仲間であり友達であり、そしてコピーライティングにおいては雲の上の存在でした。

仲間って、いいですよね。最終的には人間関係かな…。この歳になって、ようやく想います。


ここで、コピーライティングという技術を少し紹介します。コピーには、奇抜なアイデアは無用ですし、自身の個性を発揮することもありません。コピーライティングとは、様々な方向から商品を最大限に活かす訴求方法を検討し、それをカタチにする技術です。文系的な職業ながら、合理的な考え方を旨とする理系的な側面も備えています。
そのナカムラ氏が、こともあろうにパチンコをするのです。しかも、金欠の際に…。
「いやいや…。パチンコでカネ稼げる訳ないでしょう」
後輩として弟子として友人として、わたしはナカムラ氏に幾度か諫言したことがあります。苦笑いしながら応える、ナカムラ氏の返事はこうでした。
「でも、今回だけは勝てるかもしれないから…」

人生万事塞翁が馬。その通りかもしれないし、そうであってほしいもんですよね。


ナカムラ氏と同じく性格に著しい偏りがあり、しかもナカムラ氏のようには才能に恵まれなかったわたし。そのわたしがいままで人としてギリ生き残ってこれたのは、ひとえに “酒とギャンブルをやらない” から。これに尽きます。
そのわたしが、北海道チャリ旅の途中で帰京し、ケイリンに行きました。

オレ様レベルの大食いが満足して、1000円でお釣りがくる。もちろん旨い! そんな夢のような定食屋さんが、まだ東京砂漠にあるんですよね、嬉しすぎることに。


東京で幾つかの用事を済ませ、時間が空いたわたしは、東京オーヴァル京王閣を目指してチャリを漕ぎました。東京オーヴァル京王閣とは、平たく言うと、東京は府中にある競輪場のことです。ちなみに、わたしギャンブルの類は一切やりません。
では、なぜ競輪場に行ったのか? このチャリ旅に出掛ける前、わたしは四日市の工場で、住み込みの派遣労働者として働いていました。その労働と労働環境は想像を超えて厳しく、工場を辞した際
「金輪際、四日市に戻ることはない」
そう心に決め、旅に出たのです。そんな四日市での唯一の心残り。それは、競輪場に行けなかったことなのです。
わたしの中で、あくまでわたしのイメージですよ、四日市というのはアレな街。東なら川崎、西なら尼崎、九州なら北九州。本来アレな街とわたしの相性は悪くないのです。ですが、今回はいろいろな悪条件や制約が重なり、四日市のアレな感じを味わうことなく離れることになってしまいました。その心残りの象徴が、四日市ケイリンだったわけですな。

少し地味目な公営ギャンブル、ケイリン。「競輪場へコイケエイコ!」ですな、知らんけど。


その心残りを解消すべく、京王閣に繰り出したわたし。感想は以下の通りです。
・時代は令和。やはりといえばやはり、いろんな意味で結構クリーン。
・ヤバそうなおっさんはほとんど居ない。
・併設の居酒屋の兄貴どもは、たぶんタフガイ。
・キツめのヤジなどほとんどなし。基本的には声援のみ。
・選手のペダリングが超スムース! ポジションも前傾がスゴい。
・脚が太いのは当然として、意外と腹が出ている選手もいる。
・THE 機能美! ピストバイクは文句なしに格好良い。
・自分もピストバイクを駆って、トレイン組んでオーヴァルを走ってみたい。
 
ふう良かった。変わらず、わたしはギャンブルに興味がないんですな。

依存症は病気。だから理解が必要。最近のこの手の考え方、全面的に賛成はしかねます。まず “普通” を都合よく定義し、そこから逸脱した人を病気扱いして “治療” しようとする。いろんな人がいることを前提としたうえで、「悪いものは悪い!」と言い切る強さと非情さも必要かと。


 

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