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きっかけ

大好きな友人が、結婚することになった。
驚いた。とても綺麗で可愛いけれど、中高生の頃は恋愛には興味がなさそうな子だった。
去年、初めて彼氏が出来たと、少し照れながら話してくれたときも勿論祝福したが、こんなにもすぐに、次の大きな祝福をすることになるとは思っていなかった。

彼との出逢いは、友人からの紹介と聞いていた。
が、実はマッチングアプリだという。
…さらに驚いた。
まさかこんなに身近に仲間が、しかも大成功例がいるとは。(もちろん、結婚=ゴール=成功、とは一概には言えないけれど、それでも、なんだか嬉しかった。)

何を隠そう、私と今の彼も、某マッチングアプリを通して知り合った。
「恋人がいない歴=年齢」を更新し続けるうちに気付いたら社会人になり、それでもあまりにも日常にときめきがなく、おそるおそる登録してから1ヶ月弱。
初めてやりとりがきちんと続いた、同い年の良い人そうな男の子。それが彼だ。

唯一やりとりが続いたのにも関わらず、なんだかんだで忙しくて返信できない日が続き、これは終わった…と思った。
結局私はいつも、自分でチャンスを逃す。また気の合う人を探そうかな…でもちょっと面倒だ…やっぱりすぐ飽きるな…笑
そんなことを思っていたとき、彼から突然メッセージが届いた。

「よかったら今度、ご飯とかどうですか?」

何年ぶりかのデートだと思った。
二人で食事に行くだけなんてデートとは言わないのかもしれないけれど、これをデートと呼ばない限りそういうことに全く縁がなかった私は、舞い上がった。
同時に、やっぱり少し怖かった。
良い人そうとは言え、見知らぬ人だ。
初めて会った日は、何かあったらすぐに走って逃げられるように、ヒールのない靴を履いていった気がする。

けれど、会って1時間もしないうちに、その不安は溶けてなくなっていた。
人見知りの自分はどこに行ったんだと思うくらい、ひたすらに話し続けていた。しかも、普段人に話さないようなことまで話していて、純粋に驚いた。
最初はお互い敬語だったのに、気付いたら、随分前から知っている友人のようにフランクに話していた。そのグラデーションが、あまりにも美しかった。
好きな食べ物、行きたい場所、気になっているアーティスト。「わかる!」を連発していた。思わず、今度一緒に行きたいね、と言いそうになって我慢することが何度かあった。…落ち着け、初対面だぞ。

その後、この日を含めて3回目のデートで、私たちは付き合うことになった。
最初はお互い探り合いながら接していた気もするが、付き合って3ヶ月も経つと、私は彼のことが好きで仕方なくなっていた。彼も、私のことをとても大切に想ってくれた。

そして、付き合って改めて思う。
私はこの人の性格がめちゃくちゃタイプだ。
さすが、某メンタリスト監修のアプリ。マッチングのレベルが違う(?)。(回し者ではない)
でも本当に、この人と普通の日常で出逢っていたとしても、私はきっとこの人を好きになると、素直に思う。
なんなら、日常の中で出逢いたかった。
遠くから、ああ好きだなあと思いながら、あなたの笑顔を眺めていたかった。

いま付き合っているから、こんなことが言えるんだと思う。思うけれど、どうしても考えてしまう。
私たちの世界線が、どこかで交わっていれば。

けれどもしかしたら、もっと前に出逢っていたらお互いまだ子どもで、素直になれず、上手くいかなかったかもしれない。
他の人に目が行っていたかもしれない。
私とあなたがこんなふうに隣に並ぶことができたのは、あのタイミングで、同じ媒体を通して、お互いが誰かを求めていたから。
そして、こんなにも、隣にいて落ち着く人に出逢えた。
それだけで、じゅうぶん奇跡的なことだ。

マッチングアプリって、まだどこか偏見の目で見られることがある気がする。
かく言う私もそうだった。だからこそそう思うのかもしれない。
だけど、誰かと誰かが出逢い、お互いに笑って過ごせること。
そんな奇跡のような幸せのきっかけなんて、本当はきっとなんでもいいんだと思う。

少し前までは、この出逢い方にどこか引目のようなものを感じていた気がする。
だけど、最近はもう、そんなことどうでもよくなってしまった。
シンプルに、いま私は幸せだと思うから。

私は、堂々と、あなたと幸せに生きたい。


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