なぜ世の人たちがハロプロにハマらずにいられるのか訳がわからなくなってしまった

努力をする人が好きだ。そして、その努力の痕跡を見せずに毅然と振る舞う人も。

2021年、なぜかハロプロにハマった。1年間、飽きることなく毎日動画を観てひとりオールする日々を繰り返し、DVDを買い、FCに入り、ライブにも行った。

これまで散々まわりにハロヲタはいたし、「ハロプロはええぞ〜」と言われても、「ふぅん」と思うだけで沼るには至らなかった。その背景には、声優界のスーパースター・ゆかりんこと田村ゆかりさんの存在がある。

彼女は本業の声優としてのキャリアはもちろん、「ゆかり王国」という唯一無二の独自な世界観をライブで表現し、声優アーティストの第一人者として業界を牽引してきた。

デビュー20周年を迎えても軽やかにステージを駆け回り、一切ブレることなく「口からCD音源」を繰り出す姿は、まさに努力の化身だ。

そんなすごい人に中学生のころに出会ってしまったものだから、どんなアイドルを見ても全然響かなかったのである(絶望)。

「かわいいなぁ」「曲がいいなぁ」と思うことはあっても、熱狂的なファンになるまでには至らない。

特に、アイドル戦国時代には口パクを是とする風潮や、ダンスや歌が未完成でも顔やキャラクターが良ければ評価される傾向もあって、何だかピンと来なかった。

ステージに立つのなら生で歌ってほしいし、歌うのならうまいものを聴かせてほしいんじゃ!!!! 

私は大学生のころ、バンドサークルに所属していたので、こと歌に関しては人一倍厳しかったように思う。歌は練習すればちゃんとうまくなると知っているから。もちろんそこに踊るとなると難しいのもわかるけど、お金をもらうプロなのだからちゃんと練習してほしいと。(厳しいwww)

もしかしたら昨今のファンは可愛くて平均点が取れていたらそれでいいのかもしれない。でも、年齢を重ねながらも努力をしつづけ、口からCD音源の田村ゆかりさんを間近で見てきたこともあり、求めるものが相当高くなっていた。

そこで出会ったのが「ももち」こと嗣永桃子である。

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「ももち」と聞いて、当時バラエティを観ていた人たちが想像するのは、「ツインテールでピンクの服でぶりっ子しているちょっとウザいアイドル」だと思う。しかし、テレビではほとんどピックアップされなかったが、驚くべきことに、彼女には隠された能力があった。

歌もダンスもバチクソにうまかったのである。

それも、そんじょそこらのアイドル全員をスキルでぶん殴れるほどに。

当時はアイドル戦国時代でアイドル同士の運動会などがよく開催されていたが、純粋にアイドル力を競う「歌唱バトル」と「ダンスバトル」があれば、おそらく圧勝してたはず。

しかも、ももちのすごいところはそのスキルをテレビで一切披露することなく、「グループの認知度を上げたい」というピュアな理由だけで叩かれても石を投げられてもあのキャラクターを貫いたことである。

わたしは別にぶりっ子が好きなわけじゃないが、「努力に見合ったスキルに裏付けされた自信から来るぶりっ子」って最高だなと思いました。だってツッコミどころないじゃん。もうどうぞぶりっ子してくださいって感じ。スキルもなく可愛さだけで押し通してるのとは訳が違うんだから!!!!

当時は他のアイドルグループが紅白出場を果たしたり、広いステージでの公演を成功するたびに「アイドル界で天下を取った」なんて言われていた。

一方で、私はこの動画を観て、「えっ、なんでハロプロ、天下取れなかったん!?」と純粋に疑問に思ったしものすごく悔しくなったし、「どうせうまくないから」とアイドルを避けていた自分をぶん殴りたくなった。「見つけてあげられなくてごめんね」という気持ちでいっぱいになった。

ももちの凄さについてはいつかじっくり語るとして、しばらく動画を見漁って気づいてしまったことがある。動画をご覧いただけるとわかると思うのだが、ももちはもちろんのこと、サイドを固めているおふたりもバチクソにうまいことがわかる。

アイドルらしからぬ「圧倒的な歌唱力」と「圧倒的なダンススキル」、これがハロプロの「普通」なんか…!?

…という事実にガァン! と頭を殴られてしまったのだ。そこから私は、ももちが所属していた「Buono!」「Berryz工房」をウォッチするようになった。ミニマリストなのにブルーレイとDVDをいっぱい買った。

そうしてFCにも入り、すっかり新参者のハロヲタとしてデビューした私が思う、ハロプロの魅力は3つある。

①難解な歌もダンスも休憩なしで笑顔でこなす。ストイックな努力家の女戦士たち

いや、もう地球救ってくれますよねこれ。

顔面もスタイルも優勝しているにも関わらず、「そこで勝負していませんが???」とでも言うぐらい髪を振り乱してガンガン歌って踊る姿に息を飲んでしまう。そんで歌は一切ブレない。なんで!? 

2019年のロッキンのステージは「とにかくパフォーマンスを見てほしい」という強い思いから持ち時間50分のなかで、MCを削り、14曲(49分59秒)をノンストップで披露するという体力おばけっぷり。

40℃以上の炎天下で全力でパフォーマンスをするため、メンバーたちは暖房のなかで練習していたという。一朝一夕では成り立たない、青春をすべてアイドルに捧げ、高みを目指して日々練習を積み重ねているハロプロメンバーだからこそ成し遂げられること。

こんなん、惚れてまうやろ。私はこの動画で完全にモーニング娘。に落ちた(ドボン)。

ビジュアルが強すぎるあまり「怖い」と恐れられていたBerryz工房も、一切妥協がないのに力が抜けた余裕すぎるパフォーマンスがめちゃくちゃかっこいいです。しかもこんな高いヒールでさ。

ここまで来ると握手したくないもん。拝ませていただいているイメージです。セーラームーンと握手したいとか思いませんからね。

②男に媚びない「っよっよ」の楽曲たち

あと、ハロプロの楽曲を聞いて驚いたことがある。それは、従来のアイドルが歌ってきた歌詞とは一線を画していること。アイドルソングといえば「あなたとふたりで放課後ルンルン」みたいなイメージだけど、ハロプロの楽曲はそんなヤワな感じではない。

たとえばこちら、Juice=Juiceの「『ひとりで生きられそう』ってそれってねぇ、褒めているの?」(※タイトルです)の歌詞に注目。

少しヤワな子ばかり 幸せを手にしてく
お決まりの幕切れよ アンフェアな世の中ね

「ひとりで生きられそう」って
それってねえ、褒めているの?
強がり隠す弱さ 誰か見抜いてよ

「ひとりで生きられそう」と言われてしまう主人公。か弱い女性ばかりがヒロインとして愛される現状に「強いってダメなことなの?」と苦々しい思いを抱きますが、最後はこれ。

「ひとりで生きられちゃうの」
それは素敵なはずでしょう?
胸張る私になって 誰か愛したい

最高か。

「愛されたい」じゃなくて「愛したい」。さまざまな葛藤を抱えながらも凛とした強さを持つ女性が描かれていることが多い気がする。

「ジェラシージェラシー」という楽曲では、女子なら思わず「わかる…」と首がもげるほど頷きたくなるような同性への嫉妬が描かれている。

Jealousy
綺麗になりたい
もてはやされたい
私の努力よ
私讃えて
Jealousy Jealousy

この歌詞の世界観を表現するような強い眼力とキレキレのパフォーマンスにも痺れる。「女子の味方」だし、「心に乙女を飼っている男子の味方」でもある。日々いろんなことがあるけれど、「元気出しなよ」なんて適当な綺麗事を言わず、ストレートで生々しい言葉で私たちの心に寄り添い、チアアップしてくれるのだ。

③「襷(たすき)をつないできた」歴史がエモすぎる

ところでハロプロ、特にモーニング娘といえば「昔からいるよね〜」と言われるとおり、歴史の長いグループでもある。結成は1997年。24年ものあいだ加入と脱退(卒業)を繰り返し、今に至る。

わたしは悩んだ。「今から全楽曲追うのがめんどくさすぎる」と。

だからこそ、モーニング娘。にハマるのが怖かった。でも、ハマってから、動画を漁ったり、ライブに行ったりして、少しずつ覚えていけばいいんだなと気づいたのである。

それと同時に「長い歴史を持つグループ」の魅力にも気づくことになった。それは、メンバー全員が「アイドルではなく、“モーニング娘。”になりたくて入ってきている」ということ。

中澤裕子、高橋愛、道重さゆみ…と歴代のメンバーたちが大切に守りつづけてくれた大好きなモーニング娘。を絶対に絶やしてなるものか! という並々ならぬ熱量を感じるのだ。

20年以上前の楽曲たちは、今もこうしてモーニング娘。たちに歌われつづけている。

モーニング娘。には日の目を見なかった時期がある。一時期メンバーは5人にまで減り、シングルの売り上げは全盛期の160万枚に比べ3万枚にまで落ち込み、メディア露出が減りゆくなかでひたすら技術を研磨した。

その期間の楽曲たちを今のモーニング娘。が歌う。まるで、「ステージに先輩たちを連れてきた」ように。

こんなん、応援しないわけがない。

メディア露出が少ないなかで、決して光を失わずに技術を磨きつづけ、今日もなおストイックにパフォーマンスをしつづける彼女たちを見つけた瞬間、「あぁ、出会ってしまった」と思った。

まだ日本には、こんな女の子たちがいるんだと。

それと同時に、すごく悔しくなった。実力主義の社会ではないことは重々にわかっているけれど、こんなにも素晴らしい女の子たちが世間に見つかっていないこと。正当に評価されていないこと。メディア露出が少ないこと。

そのなかでライターである私は、私にできることがしたいと思い、こうして筆を取ってみた。こんな気持ちにさせてくれるのも、ハロプロならではなのかもしれない。

もし少しでも興味があったら、一度でもライブ映像を見てもらえたら嬉しい。私はハロプロに出会えて、毎日がとても楽しいから、そんな楽しさをお裾分けできたらこれ以上の幸せはない。

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