いつのまにか、本物の「永遠の17歳」になっていた話

「田村ゆかり、17歳でした!」

わたしの大好きな人、声優・アーティストの田村ゆかりさん。

彼女は昔から「永遠の17歳」を謳っており、ライブでのメンバー紹介のラストにいつもこう告げる。

声優界では、一定の年齢を超えると「永遠の17歳」を名乗れるというルールが一部に存在する。

声優界のおねえちゃんこと井上喜久子さんの「17歳教」に入信する…という設定があるのだ。

…と言っても、もちろん厳格なものではない。半分ネタである。

わたしが「永遠の17歳」の概念を知ったのは中学2年生のときだった。

当時田村ゆかりさんを本気で17歳だと思っていたわたしは、年齢にとらわれずに可愛らしいフリルのワンピースを纏い、ツインテールを揺らす彼女に強烈な憧れを抱き、「わたしもこうなりたい!」と14歳にして「永遠の17歳」を謳うようになった。

あれから時が流れて、本当の17歳になり、大学生になり、社会人になっても、いつでも胸に「永遠の17歳」のポリシーを抱きながら生きてきた。

まわりは半分冗談だと思っていたはずだが、いつしかみんな慣れて、受けいれてくれるようになった。

贈られてくる誕生日のメッセージカードには「17歳おめでとう」と書かれている。友人はもちろん、母からも、おばあちゃんからも。

時には謎の偏見の目に晒されることもあったが、わたしは誰もが口外せずとも心に「永遠の17歳」を秘めればいいと思うぐらい、このポリシーに助けられてきた。

自分を「永遠の17歳」と信じていたからこそ、社会人から声優の学校に通うこともへっちゃらだったし、学生に混じって河原で楽しく語り合ったりしても「年相応じゃないな」と思うこともなく生きてこられた。

最近、「もう17歳はやめちゃったんですか?」と聞かれることが増えた。

というのも、今回発売した書籍のプロフィールに「永遠の17歳」の記述がどこにもないからだ。大人の事情というやつである。

そして、書籍発売に伴って、「いしかわゆき=ゆぴ」を一致させるためにSNSの名前から17の表記を消した。

でも、書籍のプロフィールに「永遠の17歳」と書けないことも、SNSに(17)と書けないことも、わたしにとっては大した問題じゃなかった。

というのも、この「永遠の17歳」は、そもそも前面に押し出すようなものじゃなかったからだ。

ずっと心には抱いていたし、友人や家族にも当たり前のように「今年も誕生日ケーキのロウソクは17本でよろしく!」とは言っていたが、SNSなどは至って普通にやっていた。

それを前面に押し出そうと思ったのは、自分が1番大切にしていたもので、覚えやすかったからに他ならない。

ごまんといるライターのなかで、覚えてもらうにはどうしたらいいんだろうと考えたときに、自分のいちばん大切にしている価値観をつけてみた。

すると、何だかいろいろ言われるようになった。

家族や友人が受け入れてくれていたことで、感覚が麻痺していたが、一般的には「永遠の17歳」は「不思議ちゃん」なのだろう。痛々しく思われたのかもしれない。

わたしもまた胸が痛んだ。しかし、それもそのはずだと思い、なんとか自分の思いを伝えるためにことある場面で「17歳」を言いつづけた。どうして自分が17歳と名乗っているのか。その背景にはどんな思いがあるのか。SNSやブログで書きつらねた。

そしていつしか、それがわたしの代名詞となっていった。

書籍の編集担当の方から、「ゆぴさんごめんなさい、プロフィールに永遠の17歳は載せられないんです…」と謝られたとき、正直大してショックを受けていない自分がいた。

それは、永遠の17歳であろうがなかろうが読者にとっては大きな影響はないのだと思えたこともあるし、これまで積み重ねてきたことで自信がついて肩書きに意味を感じなくなったのもある。

最近、田村ゆかりさんがライブで「田村ゆかり、45歳です!」と言うようになった。

相変わらず縦横無尽にステージを飛びまわり、笑顔で手を振る彼女の姿は「永遠の17歳」のように溌剌としていて愛らしい。

でも、もう「永遠の17歳」にこだわりはない。だって彼女は本物になれたのだから。

わたしは以前は、誰かに認めてもらわなければ、誰かに受け入れてもらわなければ、「永遠の17歳」になれないと思っていた。

でも、まっすぐに言いつづけて、やりつづけていくうちに、そんなことも気にならなくなっていった。

きっとわたしはもう、わざわざ「永遠の17歳」と謳わなくても、中学生のときに抱いていた「年齢を気にせずにチャレンジできる大人」になれているのだろう。

ちゃんと願いが叶ったのだ。

今の私は「永遠の17歳なんです」と言わなくても、実年齢を公表したとしても、まごうことなき永遠の17歳だ。

これからも17歳の気持ちのまま、いろんなことに挑戦していきたい。

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