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#12 シェフの迷言集

銀座編も最後となります。
今回は私が今でもおぼえているシェフの迷言をいくつかご紹介します。

「ちゃんと寝ろよ!」



仕込みが終わらないとかは普通ありえないのですが、普通にやっていると絶対に終わる量ではありませんでした。
なのでちょっとしたイレギュラーなことがあると終わりません。
終わってないことが判明すると、反社みたいな感じで凄まれます。
そしてゼロ距離で「寝る暇があるなら仕込み終わらせろよ。寝てんじゃねえよ」と言われます。
我々には睡眠の権利はなかったのです。
なので徹夜して終わらせることになるのですが、肝心の体力がつきます。
なので夜の8時頃になると眠くて仕方がありません。
ただでさえ一日5時間ほどの睡眠で、17時間ほど働きづめのところに徹夜ですから余裕で立ったまま寝ることができます。
そして、うとうとしているところを見つかるとこのセリフがでます。
「ちゃんと寝ろよ!」
寝るなと言われ働いた結果、寝ろと言われます。
なんですかね?とんちですか?

「誰が一番強いか教えてやるよ」



もう少年ジャンプのバトル漫画のようなセリフです。
喧嘩が強いと自負しているので、普段からとても威嚇してくるのですが、あまりにも怒ると自分の立場が上だからという理由で圧力をかけるのではなく、喧嘩が強いから俺の言うことを聞けと言い出します。
「表にでて教えてやんよ。」
現実で聞いたのは後にも先にもここだけでした。

「お兄ちゃん」


普段は一応名前でよんでいただけるのですが、いわゆる村八分状態になってしまうと名前で呼んでもらえません。
奴隷なので番号でよばれそうなものですが、我々は「お兄ちゃん」とよばれます。かつて若貴兄弟の若乃花関が親しみを込められて「お兄ちゃん」とよばれておりましたが、ここでの「お兄ちゃん」は地獄に落ちた証拠となり、
ひたすら無視と差別をうけます。

「ここでは日本の法律は関係ない」


いやあるでしょ。

「一生懸命やった上でミスをしたら俺は許す」


初めて聞いたときは、こいつも良いところあるもんだなと思いました。
そもそも仕事ができないから修行しているわけですし、人間ミスもするし。
営業中に手が滑ってフライパンをソースの鍋に引っかけてしまい、
ソースが少しこぼしてしまいました。ソースが2割ほどこぼれてしまい、
シェフに「すいません!」とすぐに謝罪したのですが、
食い気味に「てめぇ何してんだ!ぶち殺すぞ!」
盛大なフリだったみたいです。
ソースは我々の命よりも重い

「調理場にバックはないんだよ!」


逆切れシリーズです。
シェフの後ろを通ろうとしたら、急にシェフが動いてぶつかってしまいました。当然後ろを通るときは声をかけないといけないことになっています。
熱湯や包丁を持っていると大事故になるので、「後ろをとおります」と一声かけるのが常識です。何も持っていなかったので、サッと後ろを通過しようとしたら、シェフが振り返ってきてぶつかってしまいました。もちろんこちらが悪いわけで、無茶苦茶怒られます。
「だまって通るなよ!」当然です。
しかし翌日シェフが黙って私の後ろを通り、
それに気づかずぶつかってしまいました。このケースはシェフが悪いわけですが、一応上司なのですいませんと謝罪するわけですが、
そしたらシェフが 
「調理場にバックはないんだよ!」
聞いたことがありません。
昨日あんたバックしてましたけど?
そもそもバックって、車じゃあるまいし。

「誰がオーブン蹴ったの?」

マッチポンプシリーズです。
オーブンが壊れてしまい、新しいオーブンが導入されたときに、シェフが
オーブンの開け閉めは手でやるべきだと。
それまでは調理場の狭さもあり、足を使って閉めておりました。
それはよくないことだと。
たしかに足でオーブンを閉めることは悪いことだと思います。
なので新しいオーブンは足で閉めるのは禁止となります。
とある営業中、シェフがキレてサイヤ人大猿モードになりオーブンを蹴りまくておりました。足で閉めるなと言っておきながら、自分は蹴りまくってます。 安全靴を履いているので、オーブンはボコボコに。
そして翌日、オーブンの扉がボコボコなのに気づいて真顔で
「誰がオーブン蹴ったんだ?」とキレてました。
大猿に変身すると悟空も記憶なくなってましたもんね。

「1個足りない!」

自分でエスカルゴ用の器を買いに行ってとても気にいっていたようで、
毎日営業後に自分で片づけていました。
ある日サービスの人が間違えてエスカルゴのオーダーをキッチンに通してしまい、出来上がったエスカルゴはオーダーミスだったことがありました。なのでエスカルゴはいらないということになったのですが、シェフがぶちぎれてエスカルゴを器ごと投げつけました。
壁に当たり粉々になり、ちょうどごみ箱の上の壁だったこともあり、きれいにごみ箱の中に全部落ちました。
翌日エスカルゴの器を数えたら、一つ足りないと騒ぎます。
ボケをかましていると思ったのですが、マジでキレ始めて大変でした。

こんな無茶苦茶な職場でしたが、まあ今となっては良い思い出です。
次回は銀座編最終回、悲しみの銀座の夜です。

いつも読んでいただいている方ありがとうございます。


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