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ろうそくの話

“ろうそく”ってご存知ですか?

火をつけて、灯りを灯す あれのことです。

オーソドックスな乳白色、鮮やかな色がついたもの、香りがついたもの。

マルやサンカク、太い柱、小瓶に詰められたもの。

今、あなたの頭の中を多種多様な“ろうそく”が ぐるぐると回ったことでしょう。


わたし、ろうそくが好きなんです。

バニラの甘い香りがする、ピンク色のろうそくも好きだけれど

乳白色の太めの円柱、100円で買える ごく普通のろうそくがお気に入り。


ろうそくは溶けてゆきます。

ろうそくがどのように溶けていくか、ご存知ですか?

真ん中からゆっくりと溶けてゆきます。

真ん中が ポッカリと溝になって、深い谷を作るのです。

周りの塀は そのままで、溶けてきた蝋を受け止める役割を務めます。


わたしは それが嫌いです。

真ん中に蝋が溜まって、透明の溶岩地獄になりゆくのが嫌いです。

だから わたしは、火で少し柔くなった塀を人差し指で

えいえい、と内側へと押し込んで蝋を平らにします。

うまくいく日もあれば、失敗する日もあります。


失敗する日のルーティンはこうです。

内側へ蝋の塀を押しやっていると、時たま、真ん中に溜まった蝋が少し溢れて

人差し指に張り付くのです。

瞬間的な熱さに驚いて指を引っ込めると、人差し指の先にあるのは

少しだけ固まった、ふにゃりとした蝋の子。

親指の腹も交えて こねたりいじったりしていると

次第に固まってきて、パラパラと指をすり抜けてゆくのです。


わたしは、失敗した日のほうが好きだったりします。








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