014_獣の皮

弱い自分を隠すために、獣の皮を被って生きていこう。
強いとされる獣の皮を被っていれば、皆が勘違いしてくれる。

そうだ、獣として生きていこう。

獣として生きてきて、少し経った。
同じ獣が寄ってきて、いざ知った。
強いとされる獣が、実は大したことがないと。
強いとされる獣が、実は人に支配されてたと。
慌てて群れを抜けようとしても、獣たちは許してくれない。

―――なんとか、獣の群れから逃げ出した

人の群れをようやく見つけた。
これでもう獣になろうなんて考えはやめよう。
これからは人として誇りを持って生きていこう。

だがいざ皮を取ろうとしてもつなぎ目がない。
人であるはずなのに人だと言えない焦り。
ならばと皮を剥いでも剥いでも人が見えない。
人であるはずなのに人だと言えない恐怖。

自分の願いはやっと叶えられたのだ。

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