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骨折物語からその後~社会復帰をして見たもの~

#高齢者施設 #居宅支援 #訪問看護 #利用者 #医療者の使命 #アドボカシー #欲求の充足にかかる時間の短縮 #細やかな支援とは何か #高齢者になっても支えられて生きる喜びを感じられる社会にしたい


【骨折手術後の現状】

☆術後3か月を迎えて困難なこと靴が履けない☆

12月に骨折をした左足関節(外果・内果・後果骨折)は、手術を受け、今は松葉杖もなく二速歩行をしている。いまだに不可能な事は、全力で走ること、重いものを持つこと、階段の下で交互に左右の足を階段におろしながら降りること、などがある。

そして手術をしたときになかなか再生しなかった手術創の皮膚、再生後の上皮の薄さゆえ、外くるぶしに触れる靴が履けず、ハイヒールや、スニーカーも外くるぶしまでの高さがあるのが通常であるので、履くことができない。それ故、困るのは、ストラップやバックルで足に沿うようにデザインされた、サンダルを履き歩く事は可能だが、足全体を覆う、シューズを履くことが困難であった。歩行を安定して行うには、シューズを選択したいところだったが、外くるぶしが痛くて履いていられず、致し方なくサンダルで歩いていた。散歩もサンダルで行っていたが、足が安定しないがゆえに、歩行時に指で踏ん張る必要がありかなりの疲れと腫れが生じることとなった。

 

 

☆シークレットインソール有難き存在☆

サンダルでの歩行は、私の生活が天候に大きく左右されると言うことを示している。考えた結果、行きついたのが、シークレットインソールの存在だった。

アマゾンさん。ありがとう。

靴のかかとに、シークレットインソールを挿入すると、私の身長は約1センチ高くなると同時に外くるぶしの位置が、靴のかかとから1センチほど高くなり、靴に直接触れることなく、スニーカーを履くことができるようになった。気をつけなくてはならないのは、靴で足を包み込む面積は少なくなるので、足が靴から抜けないように、気をつけて歩く必要性があると言うことである。

ポンペイ展 モザイク画

 

 

【仕事の復帰と内容について】

☆高齢者の居宅施設内看護☆

これまで述べたように、歩行を安全にする策を立て、3月中旬から仕事に復帰した。

2021年5月に、看護系大学の教員を退職し、これまで私は看護学校の非常勤の契約があったので、派遣で高齢者施設内の訪問看護の仕事に週一回入っていた。

3月に時点では、看護学校の非常勤の仕事の契約内容を終得たので、週20時間以内の高齢者施設内の訪問介看護の仕事を、骨折後の体調が回復したのを見計らい、契約した。

病院内の看護業務は実践経験があるが、居宅施設での看護の仕事は、初めての経験である。

 

☆なぜ、施設内看護を視野に収めたか☆

私がなぜ高齢者の居宅施設を、選んだのかと言う話を書き留めたい。

この施設は高齢者の看取りまでを行っていると言う事だったので、在宅で命を全うした父の看護体験からの学びを現場で提供したいと思った。父の看取りに際しては訪問診療の医師や訪問看護師さんに大変お世話になったと言う思いがある。と同時に、高齢者の方々には終の棲家として選んだ施設で、少しでも楽しく互いに語り合い、共に過ごす時間を楽しんでいただけるかかわりがしたいと思っていた。

 

☆高齢者施設の入居者☆

実際に高齢者施設に入っている人たちを皆さんはイメージできるだろうか。

私が今、看護を実践している施設には約50名の方が入居している。その方々の中には、認知力が低下したため独居が不可能となり入居している方。あるいは身体的な機能麻痺が生じ、家族の希望もあって入居しているかた。また、精神的な疾患を抱えているため、独居は不可能であると言うことと、誰かの見守りによって安全が確保されると言うことを目的として入っている方もいる。

ポンペイ展 モザイク画

 

☆経済的基盤☆

また経済的な基盤で言えば、生活保護を受けて入居している方と言うのも半数近くいらっしゃることも付け加えておきたい。

現在、生活保護を受けている方が、これまで、定職を持っていなかったわけではない。地方出身者の農家の次男三男そして女性たち。農家の長男ではないので、地方から都市部にやってきて、季節労働者として働いていた方が多いと見受ける。この生活保護を受けていらっしゃる方々が、正規社員として社会保障を受けられる立場であったら、今現在、生活保護を受ける必要性が生じていなかったであろうと思う方はいらっしゃる。

 

【人間の尊厳とは何か】

☆生活保護受給者にとっての物品確保☆

生活保護を受けており、しかも身内による支援がない方々にとっては、施設内入居中に物品1つを手にするにも大変なことである。

ある方の場合の話をしてみたい。

皆さんにとってはスマートフォンが手元にあって、いつでも他者と連絡が取れ、情報を入手することが可能であり、必要時には時計代わりとなって時間を知ることとなっていると思う。こういった事は高齢者施設に入っていてスマートフォンを持っている人にとっても同じである。ところがこんなことが起きた。

スマートフォンの充電ケーブルが壊れてしまった入居者さんがいた。

その方は、半身麻痺と下肢麻痺があり、自らの足で歩行困難であるし、車椅子に乗車することも自分自身の力だけでは不可能である。右手は使えるけれども、左手は使えない。この方にとってのスマートフォンは、入居施設の中における音楽を聴いたり時間を知り、社会の状況を知る1つのツールであった。部屋の中に、テレビは置いていない。居宅扱いの高齢者施設においては、テレビがあるか否かは、その人自身が自分で準備しない限り、配置されていない。

スマートフォンの充電ケーブルが壊れて、これを購入するには、施設の事務から、高齢者の入居者の後見人に連絡を取ると言うことが必要になる。何のために何が必要だと入居者が言っていると言うことを伝えた上で、後見人が購入を認めた場合、物品が入居者に届くと言うことになる。

東京国立博物館 庭園 2022年3月30日

 

☆不自由なく歩ける人にとっての物品確保☆

皆さんだったら、スマートフォンのケーブルが必要だな。壊れたなぁ。と言った時、コンビニ行き、物品があり、支払いをすれば、手に入る。ところがこの入居者さんの場合、手元に届くまでに3週間かかっていた。

なぜ生活保護を受けていること。後見人がいること。自分の意思はものが必要だと感じていても、多くの人の了承がない限り自分の欲求を成し遂げることができないと言う人が存在してしまうのか。この1つの現象を知り、まだまだ日本社会において高齢者に対しての対策、あるいは生活保護を受けている方々への支援は進んでいないと感じたりしないだろうか。

 

☆他人ごとではない介護の現実☆

これは現時点では、自分には起こり得ないと思っている若い世代。あるいは正規雇用者として企業に勤めている人も自らの身に起ころうとは思いもしていないであろう。

自分は将来的に施設介護を受ける事はありえないと考えている人も、ある日突然、病気や事故に見舞われた結果、自分自身の生活が一変する可能性があると言うことを忘れてはいけないと思う。

東京国立博物館 庭園 2022年3月30日

 

 

☆看護師の使命ってなにか☆

看護師になった時、我々の使命は何なのかと言うことをひたすら考えていた。そしてその1つにアドボカシーと言うものがあることを知り、自分自身が見たこと、そして不合理な状況にありながら、ものを言えない人、もの言うすべを持たない人、こういった人の声なき声を私たち看護師は社会に発することができる唯一無二の存在であると言うことを自分の使命だと感じていた。

そう思うと、今私自身が派遣と言う立場で仕事をしているとは言え、見えたこと、感じたこと、この私の感覚で解釈したことを、困っている人がいるのであれば、大きな声にしていかなければいけないであろうと感じ、このようなことを問題提議してみることとしたい。

東京 上野 国立西洋美術館前 2022年3月30日

 


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